企業の大切にしている価値観を表し、指針ともなる経営理念。重要な経営判断を下す際の基準軸になるだけでなく、社員の行動規範を決める上でも土台となる、とても大切なものです。企業の叶えていく未来像を示す「Vision(ビジョン)」や、企業の果たすべき社会的使命を示す「Mission(ミッション)」などの種類がありますが、最近話題となっている「Purpose(パーパス)」はご存知でしょうか?
この記事では、パーパス経営の特徴や実践事例をご紹介します。自社の理念を策定中の方や、ビジョン・ミッションがなんとなくしっくりこないから策定し直したいとお考え中の方の参考になりますと幸いです。
パーパス経営とは?
パーパス経営とは、社会の中における自社の存在意義をもっとも重要な基軸として掲げる経営理念のことです。Purposeとは英語で、「目的」「意思」「意図」などを指す言葉で、そこから「そのものが存在する理由」「存在意義」などの意味に広がりました。
ビジョンやミッションが、叶えたい未来社会や、そのために果たすべき社会的使命を指し、未来軸にフォーカスしているのに対して、パーパスは、「今、自分たちがここに存在している意義」を示しています。
従来から広く知られていたビジョン・ミッションから遅れて現れた考え方ですが、現在では多くの企業に取り入れられているものになります。社会的情勢や社会的価値観に変動が多く、従業員のみならず、企業の経営にもスピーディーな変化と成長が求められている時代的背景が、色濃く反映されている動きとも言えるかもしれません。
志本主義とは?
パーパス経営と類似が見られる考えの一つに「志本主義」というものがあります。これは、資本主義に代わる新しい考えとしても注目されており、ヒト・モノ・カネという社会のアセットのうち、カネとモノを追求する資本主義が限界を迎えるなかで、今一度ヒトに立ち返った経済が必要なのではないかと提唱するものです。これに呼応するような考えとして「人財主義」「人本主義」なども挙げられますが、いずれも、ヒトこそが経済や経営の主軸になるという考えのものです。「志本主義」とは、人の持つ想いや志により焦点を当て、ともすれば利益至上主義に陥りがちな資本主義から脱却しようとする考えになります。
企業や経営者の、内から湧き出る想いにフォーカスし、個々人のモチベーションに焦点を当てているという点で、パーパス経営とよく似ているものとされています。
パーパス経営が注目されてる時代背景
以前からパーパス経営を導入する企業はありましたが、本格的に広まり始めたのは2010年以降とされています。そのきっかけとなったことの一つとして、2015年の国連サミットにおいてSDGs(持続可能な開発目標)が採択されたことが挙げられます。
サステナビリティな社会を実現するための世界的目標を指すSDGsにより、2030年までに達成するべき目標も設定されました。これは環境・社会・経済の観点から決められており、その中には企業が取り組むべき課題も盛り込まれています。
こういった背景から、各企業もサステナビリティを重視しながら事業の持続性を向上することが求められるようになりました。
変動を繰り返す世界情勢や不安定な経済情勢などを背景に、各企業も社会に対する貢献をより求められるようになりました。その中で、自社の存在意義を明確にする重要性が企業の中で高まりました。また、一般市民の意識の中でもサステナビリティへの関心が高まり、社会的存在価値の高い企業を支持する傾向が高まったことも、パーパス経営導入が促進された背景と言えるでしょう。
パーパス経営のお手本事例
自社の存在意義であるパーパスを明確にすることで、経営上の判断や社員の行動レベルにも変化が生まれます。それらの良い変化をいかに生み出すかがパーパス経営の肝となります。パーパス経営の導入に成功している企業例をいくつかご紹介いたします。
ネスレ
世界187カ国で事業展開し、約30万人の従業員が存在するネスレは、「生活の質を高め、さらに健康な未来づくりに貢献します」をパーパスとして掲げています。
このパーパスを実現するために、ネスレは3つの領域において2030年までの長期的目標を掲げています。「個人と家族(栄養の分野)、コミュニティ(農村開発)、地球(環境)」において、本業を通じて2030年までの長期目標を設定しました。
・個人と家族のために
製品やサービスを通じて生活の質を高めることを目指しています。
・コミュニティのために
活力のあるコミュニティを育成することを目指しています。
・地球のために
未来の地球のために、資源と環境を守ることを目指しています。
これら3つの領域において、ネスレはそれぞれに中期コミットメント、数的目標を設けて、 CSV(Creating Shared Value=共同価値創造)を通じて様々な社会的課題の問題解決に取り組んでいます。
ユニリーバ
2010年にいち早くパーパス経営を導入したユニリーバは、「サステナブルな暮らしを”あたりまえ”にする」を自社のパーパスとして掲げています。地球と社会にとって「害をなさないこと」を当然のこととして、それ以上に「よいこと」をする企業であることを目指すユニリーバは、「ユニリーバ・コンパス」という事業戦略を設計しています。
その中には、
・地球の健康を改善する
気候変動へのアクション/自然の保護と再生/ごみのない世界
・人々の健康、自信、ウェルビーイングを向上させる
ポジティブな栄養/健康とウェルビーイング
・より公正で、より社会的にインクルーシブな世界に貢献する
公平、ダイバーシティ、インクルージョン/生活水準の向上/未来の仕事
という3つの柱があり、それぞれに2030年までに達成すべき目標項目が設定されています。
堀場製作所
分析・計測機器の開発、製造、販売を行っている堀場製作所は世界中に約50グループを展開しています。1978年から社是として「おもしろおかしく」というパーパスを掲げており、パーパス経営という言葉が生まれる前から自社の存在意義を経営の軸としてきた企業です。
従業員が「おもしろおかしく」働けば発想力や想像力が向上し、企業価値が高まることで、顧客や社会への還元価値も高まるという意識のもとで、数十年間変わることなく掲げられてきました。これは「Joy and Fun」と訳され、世界中のグループ会社にも共有されています。
「おもしろおかしく」を従業員が実現していくために、堀場製作所は「5つの”おもい”」を掲げて実践に取り組んでいます。
- 誰も思いつかないことをやりたい。
- 技を究めたい。
- 自分の仕事や会社を誰かに伝えたい。
- 人や地球の役に立ちたい。
- 世界を舞台に仕事をしたい。
また、創業60周年となった2005年には「HORIBA Brand Book」を作成しグループ全体の意思統一を計ったり、理念を次世代に継承させていくための「HORIBA Philosophy Project」や、従業員の意識と行動の変革を目的とした「ブラックジャックプロジェクト」など、社内における理念浸透にも積極的に取り組んでいます。
パーパス経営の特徴や実践例をご紹介しました。いかがでしたでしょうか。
変化を続ける現代社会において、年月が経っても変わらない自社の社会的存在意義を発見できるかは企業の存続にも大きく関わります。社会の中で自社が発揮する価値、社会的課題への貢献性を掲げることができれば、経営戦略上の大きな判断や社員のエンゲージメント向上にも良い影響が期待できます。
会社の特徴によってパーパスの言葉も様々ですので、ぜひ自社らしいパーパスを考えてみてください。
また、Cultive(カルティブ)では、パーパスをはじめとした企業の経営理念の策定サポートを行っております。経営者の創業当時に込めた想いから深く聞き取り、社員へのヒアリングを通して理想と現状のギャップを見極め、課題にアプローチできる理念策定と施策運営をサポートいたします。「想いを言語化した理念を掲げたい」「今の理念はいまいち社員に浸透していない気がする」など、どんなお困りごとでもご相談ください。
この記事を書いた人
小名木 直子
Producer
オリジナルウェディングのプロデューサーとして多くのイベント企画に携わる。小人数〜200人規模のイベントを得意とする。職場の中でどれだけ心が動く瞬間があるかで人生の幸福度が変わることを実感し、多くの人にCultiveのサービスが届くようWEBサイトの監修も担う。
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