社内表彰で同じ人ばかり表彰される問題
社内表彰制度は本来、社員一人ひとりの努力や成果を称賛して、組織全体のやる気を引き出すための仕組みです。優れた成果を出した人を称えることで、他のメンバーにも「自分も頑張ろう」という刺激を与える効果が期待されます。
しかし現実には、いつも同じ人が表彰される状況が多くの企業で起きています。営業トップの社員や目立つプロジェクトを担当した一部のメンバーばかりが評価され、地道に会社を支える人の貢献は見過ごされがちです。
こうした偏りが続くと、表彰されない大多数の社員は制度そのものに興味を失います。表彰式は形だけのイベントになり、組織の一体感を生むどころか、かえって溝を深める結果になるでしょう。
この問題を放置すれば、優秀な人材の流出や部署間の対立を招いてしまうリスクがあります。組織全体のパフォーマンスを最大化するには、表彰制度が抱えている課題に目を向けて、早めに改善する必要があるのです。
社内表彰で同じ人ばかり選ばれる5つの原因
特定の社員ばかりが繰り返し選ばれてしまう背景には、制度設計や運用上の問題があります。主な原因を5つ見ていきましょう。
- 評価基準が数値結果のみに偏っている
- 特定の部署や職種が有利な制度設計になっている
- 選考プロセスが不透明で形式的な制度になっている
- 表彰の種類や評価軸が少ない
- 裏方業務や間接的な貢献が評価されづらい
評価基準が数値結果のみに偏っている
多くの企業では、売上高や契約件数といった数値データを評価基準にしています。営業成績や目標達成率なら客観的に測れるため、選考する側も判断しやすいからです。
ただ数値化しやすい成果だけを評価していると、営業部門やトップセールスなど特定の職種の人ばかりが表彰される構造が固まります。売上目標を150%達成した社員がいれば、その実績は明らかで異論の余地がありません。
一方で総務や経理、人事といったバックオフィス部門の仕事は数字で表しにくい性質があります。日々の業務を正確にこなして組織の基盤を支える貢献があっても、それを数値で示すのは簡単ではないのです。数値評価そのものが悪いわけではありませんが、それだけに頼ると評価対象が偏ります。
特定の部署や職種が有利な制度設計になっている
評価基準が売上貢献度や顧客獲得数に設定されていると、営業部やマーケティング部といった成果が見えやすい部署が圧倒的に有利になります。こうした部門は日常的に数字で成果を追っているため、表彰候補として名前が挙がりやすいのです。
反対に総務、経理、人事などのバックオフィス部門は、業務の性質上、直接的な売上には貢献しません。組織が円滑に回るにはこうした部署の正確で安定した仕事が欠かせないのに、制度設計の段階でその特性が考慮されていないケースが多く見られます。
MVP賞の選考基準が売上貢献度のみに設定されている企業では、構造的にバックオフィス部門の社員が表彰される機会はほぼありません。
選考プロセスが不透明で形式的な制度になっている
誰がどんなプロセスで受賞者を選んでいるのか、その仕組みが明確に示されていない企業も珍しくありません。選考基準があいまいなまま、上層部や特定の管理職の主観で決まっているように見えると、社員の間に不信感が生まれます。
選考理由が具体的に説明されないことも問題です。なぜその人が選ばれたのか、どこが評価されたのかが分からなければ、従業員は納得できないでしょう。透明性が欠けた選考では「結局いつもの人が選ばれるだけだ」という印象を与えてしまいます。
さらに厄介なのが、惰性的な運用です。前回も選ばれたから今回も、という安易な判断で同じ人を表彰し続けるケースも見受けられます。選考プロセスの透明性を高めることは、制度への信頼を築くうえで欠かせません。
表彰の種類や評価軸が少ない
年間MVP賞や営業成績優秀賞といった限られた表彰カテゴリーしか用意していない企業では、評価される人材のタイプが固定化されやすくなってしまいます。評価軸が売上や業績といった1〜2種類に限られていれば、同じタイプの社員ばかりが選ばれるのは当然です。
実際の職場では、社員はそれぞれ違う形で組織に貢献しています。営業で成果を上げる人もいれば、チームの雰囲気を盛り上げる人、新人の育成に力を入れる人、業務改善のアイデアを出す人など、貢献の仕方はさまざまです。
ところが「年間MVP賞だけ」「売上表彰のみ」といった単一の評価軸しかなければ、多様な貢献は見過ごされてしまうでしょう。
裏方業務や間接的な貢献が評価されづらい
華やかなプロジェクトの成功や大型契約の獲得といった目立つ成果は、誰の目にも分かりやすく評価されやすいものです。しかし、組織を支える仕事の多くは、日常的なサポート業務や調整業務といった地味なものです。
毎日の事務処理を正確にこなす社員、チーム内の調整役として円滑なコミュニケーションを促す社員、新人に丁寧に仕事を教える社員。こうした貢献は組織に欠かせませんが、具体的な成果として見えにくいため、表彰の選考では見落とされがちです。
問題が起きないように予防する仕事も評価されにくい傾向があります。チームの雰囲気を良くする、後輩の相談に乗る、他部署との橋渡しをするといった間接的な貢献も同じです。
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同じ人ばかり表彰されることで生じる3つのリスク
特定の社員ばかりが繰り返し表彰される状況を放置すると、組織にさまざまな悪影響が及びます。主なリスクを3つ見ていきましょう。
- 表彰されない社員のモチベーションが低下する
- チーム間の協力関係や連携が悪化する
- 優秀な人材の離職や組織への不信感が出る
表彰されない社員のモチベーションが低下する
毎回同じ人が表彰される光景を見続けると、選ばれない社員の間には「どうせ自分は評価されない」という諦めの感情が芽生えてしまいます。努力しても報われないと感じれば、仕事へのやる気は次第に失われていくでしょう。
表彰式に参加する意味すら見出せなくなり、組織の活動全般への関心が薄れていってしまうリスクや、「頑張っても無駄だ」という空気により必要最低限の仕事しかしなくなってしまうリスクがあります。
こうしたモチベーション低下は、最終的に生産性や業務品質の低下につながります。表彰制度が本来目指していた「組織の活性化」とは真逆の結果を招いてしまうのです。
チーム間の協力関係や連携が悪化する
特定の部署や人ばかりが評価される不公平感から、部署間に対立が生まれることもあります。「自分たちも頑張っているのに」という不満が、チーム間の溝を作ってしまうのです。
情報共有やノウハウの提供など、協力的な行動が減少していき、表彰を目指す個人やチームが他と競争し、本来あるべき協調性が失われていくケースも見られます。
組織全体の一体感が損なわれると、部署をまたぐプロジェクトがスムーズに進まなくなってしまいます。連携が必要な業務で非効率が生じ、結果として組織全体のパフォーマンスが低下してしまうでしょう。
表彰制度が社員同士を対立させる原因になってしまっては本末転倒です。組織の成功には部署を超えた協力が不可欠であり、その土台を崩すような制度運用は避けなければなりません。
優秀な人材の離職や組織への不信感が出る
正当に評価されないことで、優秀な人材が他社に流出するリスクが高まります。「この会社では評価されない」と判断し、転職を考える社員が増えていくのです。
特に若手や中堅社員は将来に希望を持てなくなると、早い段階でキャリアを見直しがちです。成長意欲の高い人材ほど、公平な評価を求めて環境を変える選択をするでしょう。
会社への信頼感や帰属意識が低下し、エンゲージメントが下がることも深刻な問題です。組織に対する愛着が薄れれば、仕事の質や顧客対応にも影響が出てしまいます。
さらに採用面でも「公平な評価がない会社」という評判が広がる可能性があります。優秀な人材を採用しにくくなり、組織の競争力そのものが弱まっていくリスクを抱えることになるのです。
社内表彰で同じ人が評価されることを防ぐ解決策
ここからは、特定の社員ばかりが選ばれる状況を改善するための具体的な解決策を紹介します。
- 多様な評価軸で複数の表彰カテゴリーを設ける
- 数値化しづらい貢献を評価する仕組みを導入する
- 部署ごとの表彰枠を設定して機会を均等にする
- 選考基準を明文化して透明性を高める
- ピアボーナスやサンクスカードで日常的に称賛する
- 同じ人の連続受賞に制限を設ける
- 従業員投票や推薦制度を取り入れる

多様な評価軸で複数の表彰カテゴリーを設ける
MVP賞だけでなく、複数の表彰カテゴリーを用意することが重要です。営業成績、チームワーク、業務改善、新人育成、サポート貢献など、多様な軸を設定すれば、それぞれの部署や職種で活躍できる表彰を用意でき、機会が均等になります。
具体例
- 裏方業務の貢献を評価する「ベストサポート賞」
- 効率化のアイデアを出した社員を称える「業務改善賞」
- 新しい取り組みに挑戦した姿勢を評価する「チャレンジ賞」
- 目立たないながらもチームを支えた貢献を評価する「縁の下の力持ち賞」
毎月や四半期ごとに異なるテーマで表彰する方法も有効です。評価のチャンスが増えれば、より多くの社員が自分の強みを発揮できる場面に出会えます。
数値化しづらい貢献を評価する仕組みを導入する
数字で測れない貢献をどう評価するかが、公平な制度づくりの鍵になります。上司や同僚からの推薦コメントを選考材料にするのがおすすめです。
評価方法の例
- 具体的なエピソードや行動事例を評価基準に含める
- コミュニケーション力、協調性、改善提案の質などの定性的な評価項目を設定する
- 顧客や取引先からのフィードバックを評価に含める
- 上司や同僚からの推薦コメントを選考材料にする
「新人の相談に丁寧に応じてチームに早く馴染めるよう支援した」「部署間の調整を円滑に進めてプロジェクトの遅延を防いだ」といった具体例があれば、数値化できない貢献も説得力を持って評価できます。大切なのは「どうやって評価するか」の具体的な方法を示すことです。
部署ごとの表彰枠を設定して機会を均等にする
各部署から最低1名は表彰されるような枠組みを作る方法もおすすめです。営業部、企画部、総務部、技術部などそれぞれの部署枠を設ければ、特定の部署に偏らない評価ができます。
運用のポイント
- 小規模部署には合同枠を設けるなど柔軟に対応する
- 部署の規模や業務特性に応じた評価基準を設ける
- 形式的な「ローテーション」にならないよう実績や貢献をしっかり評価する
- 公平性と実力主義のバランスを取る
部署枠があっても、その中でしっかりと実績や貢献を評価する仕組みがなければ、制度の信頼性が損なわれてしまいます。機会の均等は保ちつつ、本当に頑張った人が報われる制度設計を心がけましょう。
選考基準を明文化して透明性を高める
選考基準を文書化し、全社員への事前公開も行いましょう。「何が評価されるのか」を具体的に示すことで、社員の納得感が生まれます。
公開すべき内容
- 評価項目と配点
- 選考フロー
- 選考委員会のメンバー構成
- 表彰後の選考理由の具体的な説明
「この行動がこの評価軸に当てはまり、高く評価された」という説明があれば、選ばれなかった社員も次に向けて何をすべきか分かります。透明性がモチベーション向上につながることを忘れないでください。オープンな制度は組織への信頼を育てます。
ピアボーナスやサンクスカードで日常的に称賛する
年1回の表彰式だけでなく、日常的に称賛する仕組みを作ることが効果的です。小さな親切や協力にも感謝を伝えられるため、日々の貢献が見える化されます。
具体的な施策
- ピアボーナス制度:社員同士がポイントを送り合い、貢献を可視化する
- サンクスカード:感謝の気持ちをカードで伝え合う文化を醸成する(導入ハードルが低い)
- 月間MVP賞:頻度の高い表彰で多くの社員に機会を与える
日常的な称賛が年次表彰の選考材料にもなると、社員は普段から意識して行動するようになります。小さな積み重ねが評価される文化を作ることが、組織全体の活性化につながるのです。
同じ人の連続受賞に制限を設ける
同じ人が連続して受賞しないようルールを設定する方法もおすすめです。連続で受賞することに制限をかけることにより、より多くの社員に機会が回ります。
ルール設定の例
- 前回受賞者は次回の選考対象外とする
- 2年連続受賞は不可とする
- 永年勤続表彰の税務上の規定(5年間隔)を参考に一定期間を空ける
- 本当に突出した成果には別枠で表彰する柔軟性を持たせる
新しい受賞者が増えれば、組織全体に「自分にもチャンスがある」という前向きな空気が生まれるでしょう。ただし、ルールが硬直化しすぎると、逆に不公平感を生む可能性があるので注意するようにしましょう。
従業員投票や推薦制度を取り入れる
上層部だけでなく、従業員全体で選ぶ仕組みを導入すると透明性と納得感が高まります。普段一緒に働いている人だからこそ分かる貢献があり、推薦によって見えにくい頑張りが可視化されるのです。
具体的な方法
- 社員投票で受賞者を決める(現場の声を直接反映)
- 上司や同僚からの推薦制度で候補者を広く募る
- 360度評価を活用し、多角的な視点で評価する
- 最終選考は選考委員会が行い、人気投票にならないよう工夫する
上司だけでなく同僚や部下からの評価も含めることで、より公平な判断が可能になるでしょう。投票や推薦はあくまで候補者を絞り込む段階で活用し、最終的には明確な基準で判断する仕組みが望ましいでしょう。
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公平な社内表彰制度を運用するポイント
制度を導入した後も、継続的に運用を見直すことが大切です。ここでは運用のポイントを紹介します。
- 評価基準を事前に全社員に公開する
- 複数の評価者で選考して偏りを防ぐ
- 定期的に制度を見直して改善を続ける
- 表彰されなかった社員へのフォローも忘れない
評価基準を事前に全社員に公開する
年度初めや制度導入時に、評価基準を全社員に周知することが重要です。社内ポータルや掲示板で常に確認できる状態にしておけば、社員はいつでも目標を確認できます。
また、新入社員にも入社時に説明し、組織文化として定着させましょう。「何をすれば評価されるか」が明確だと、社員は行動しやすくなります。
基準を事前公開することで、後から不満が出にくくなります。具体的な周知方法としては、全社会議での説明、イントラネットへの掲載、部署ごとの説明会などが挙げられます。評価基準が社員の目に触れる機会を増やすことで、表彰制度が組織に根付いていくでしょう。
複数の評価者で選考して偏りを防ぐ
選考委員会を設置し、複数の視点で評価する仕組みを作りましょう。委員会メンバーはさまざまな部署や役職から選出することで、特定の視点に偏らない判断ができます。特定の上司や役員の主観だけで決まらないようにすることが大切です。
また、選考会議の記録を残し、透明性を担保することも忘れないでください。選考委員会の構成例としては、各部署の代表者、人事部門、経営層などをバランスよく含めるのがおすすめです。多様な立場からの意見を集めることで、公平な評価が実現します。
定期的に制度を見直して改善を続ける
年1回は制度の振り返りと改善を行うことが重要です。社員アンケートで制度への満足度や課題を把握し、必要な調整を加えていきましょう。表彰カテゴリーの見直しや評価基準の調整を柔軟に行うことで、組織の変化や事業環境に合わせて制度をアップデートできます。
PDCAサイクルを回し、常により良い制度を目指す姿勢が大切です。制度は一度作ったら終わりではなく、継続的な改善が必要だと認識しておきましょう。時代や組織の成長に合わせて変化していく柔軟性が、長く機能する表彰制度には欠かせません。
表彰されなかった社員へのフォローも忘れない
表彰式で選ばれなかった社員のケアも重要です。上司から個別にフィードバックや励ましの言葉をかけることで、モチベーションの低下を防げます。「次はこういう点を頑張ろう」と具体的なアドバイスを伝えることで、社員は前向きに捉えられるのです。
日常的な称賛制度であるサンクスカードなどで小さな貢献も認めることも効果的です。表彰される人だけでなく、全社員のモチベーション維持が重要だと理解しておきましょう。会社が社員一人ひとりを大切にしている姿勢を示すことが、組織全体のエンゲージメント向上につながります。
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いかがでしたでしょうか。
社内表彰制度は、優れた成果や貢献を称えるだけでなく、会社の理念をあらためて訴求し、その価値についてメンバー全員で考えるための大切な機会です。表彰部門のバリエーションや評価ポイントによってそれぞれの社風が現れ、エンゲージメントを高める一助ともなります。
Cultiveでは、表彰式や全社総会をはじめとした社内イベントや、エンゲージメントにつながる社内施策を幅広くサポートしています。言語化して共有しづらい会社の”想い”や”らしさ”を抽出し、カタチに変えて、メンバーと分かち合えるストーリーにしてご提案いたします。
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