「インナーブランディング」の意味とは? 具体的な手法や企業事例をご紹介

2023.03.28
「インナーブランディング」の意味とは? 具体的な手法や企業事例をご紹介

「インナーブランディング」の意味とは? 人事施策につながる手法や企業事例を紹介

企業理念を掲げ、理念を中心とした独自の企業文化を構築することの重要性が注目される中、抑えておかなくてはならない概念として“インナーブランディング”があります。インナーブランディングとは、企業の理念や価値観(ビジョン、ミッション、バリューなど)を社内メンバーに浸透させていくことであり、企業文化を醸成していく上で欠かすことのできない概念です。

この記事では、そんな“インナーブランディング”に関する基礎的な考え方から、実践的な施策例、メリットや注意点について紹介していきます。

「インナーブランディング」の意味や目的

インナーブランディングとは、企業の理念(ビジョンやパーパス、ミッション、バリューなど)を社内メンバーに対して浸透させ企業文化を構築していく活動を指します。

そもそも「ブランド」とは、一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会によって以下のように定義されています。

 

“ある特定の商品やサービスが、消費者・顧客によって「識別されている」とき、その商品やサービスを「ブランド」と呼ぶ”

 引用元:https://www.brand-mgr.org/knowledge/word/

 

つまり「ブランディング」とは、「第三者からどのように見られたいか?」を定義し、「第三者からどのように見られているか」という現実とのギャップを埋めていく取り組みのことを指します。

この活動を会社の内部に対して行うこと、つまり、「会社がメンバーからどのように認識されたいか」を定義し、「会社がメンバーからどのように認識されているか」という現実とのギャップを埋めていく取り組みのことを「インナーブランディング」といいます。

それでは、インナーブランディングを行う目的とはなんなのでしょうか?

インナーブランディングの目的は企業カルチャーの醸成

インナーブランディングの目的はずばり、理想とする企業文化を醸成することです。

企業文化とは、メンバーが行う判断や行動基準に理念が反映されていて、理念が組織内に暗黙知化されているものだと定義できます。

そのため、理想とする企業文化を醸成するには、メンバーの判断や行動を規定する指標、つまり、パーパスやビジョン、ミッション、バリューといった企業理念を浸透させ、判断や行動を変えていくことが必要です。

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人事施策につながる「インナーブランディング」の手法とは

ここまで紹介してきた通り、インナーブランディングは理想の企業文化を醸成する重要な取り組みです。

詳しくはこちらの記事でご紹介していますが、代表的な例をいくつかご紹介します。

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社内掲示(ポップやポスター)の徹底

共通の概念を組織に浸透させようとする際に重要になるのは「impressionの最大化」です。

働いている中で、メンバーが理念に触れる機会をいかに作れるか。その機会創出が重要になります。

デスクポップはもちろん、ウォールステッカーで執務室の壁面に理念を掲示することで理念を目にする機会を増やすことは代表的なimpression増加の手法です。また、誰もが利用するトイレの扉や鏡を活用することもおすすめです。

最近ではリモート勤務も増えてきたので、社内チャットツール(SlackやTeamsなど)のスタンプ機能やオンラインミーティング時のバーチャル背景なども有効な掲示場所になります。

業務推進する中で、自然と触れるシチュエーションにどれだけ散りばめられるかが非常に重要なポイントです。

社内でのコミュニケーション活性化

組織の中で交わされるコミュニケーションの量も、理念浸透における重要な指標になります。

コミュニケーション量が多い組織では、組織内における心理的安全性が高くなり、居心地のいい場所となります。

日々の業務日報やミーティングはもちろんですが、他愛もない雑談や、日々の感謝を伝え合うサンクスカードなどを通して組織内コミュニケーションを活性化していきましょう。

社内報 / 社員向けウェブサイト / 社内SNS

社内報や社員向けウェブサイト、従業員専用SNSはよく活用されるツールです。企業理念が浸透し、それらを体現した事例が組織に生まれたら、それをメンバー全体に発信していくことも非常に重要なアクションです。

理念を浸透させる施策だけで終わらせず、その体現例を組織にフィードバックするサイクルを回すツールとして活用していきましょう。

動画

組織が大切にする理念を浸透させるのに最も重要なことは、社長をはじめとするリーダー層のメッセージです。「こう在りたい」「こうすべきである」というメッセージを届ける上で最も有効な施策のひとつは動画の活用です。リーダーの熱量、声、表情などを通して、テキストでは表現できないニュアンスまでしっかり伝えられるのが動画の強みです。

採用やオンボーディングといったシチュエーションでもこういった動画コンテンツは非常に有効なので、ぜひトライしてみてください。

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社内イベント / 文化活動・社会貢献活動 / サークル活動

社内のイベントと一口で言っても、アワード系イベントや周年イベント、月次や四半期ごとの全体会や懇親会などさまざまです。しかし、全てに共通するポイントがあります。それは、“参加者全員が共通の体験をすること”です。日々の業務やコミュニケーションでは実現しにくい共通体験の場を作り、組織としての繋がりを強固にしていくことはインナーブランディングにおいて欠かせない取り組みの一つです。仲間と同じ体験を共有するという点では、事業や業務と関係のない社会貢献活動やサークル活動なども有効なのでおすすめです。

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研修・セミナー / ワークショップ

企業理念を浸透させる施策として最後に紹介するのは、研修・セミナー / ワークショップです。ここまで紹介してきたインナーブランディング施策は、どちらかというと受動的なものでした。しかし、インプットだけでは理念は定着しません。人は能動的な思考でアウトプットすることで、得た情報を自分自身に定着させていきます。だからこそ、参加者が能動的に参加し、思考し、アウトプットできる研修やワークショップを定期開催することで、より強固なインナーブランディングになります。

特に、浸透させたい企業理念と、それを体現する具体的な事象とを接続するワークショップは満足度も高く、メンバー個人が自ら思考を深めるきっかけになるのでおすすめです。

「インナーブランディング」のメリットとデメリット

インナーブランディングには次のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

インナーブランディングを実施することで、どんなメリットが得られるのでしょうか?ここでは大きく3つのメリットについて取り上げたいと思います。

1. 採用効率の向上

採用活動で最も重要なこと、と言っても過言ではないのがエントリーマネジメントです。このエントリーマネジメントでいかにカルチャーマッチした人材を見極められるかが、入社後の活躍に重要になってきます。採用活動中に候補者と触れ合うメンバーが、どこまで理念を理解して伝えることができるか。この浸透度によって、候補者から見た会社の印象も大きく変わります。

また、逆の側面から見てもメンバーへの理念浸透度はとても重要です。会社が大切にしているカルチャーや風土が言語化され、浸透していれば、メンバー一人ひとりが「この採用候補者が自分達の会社にとって必要なのか?」という見極めができるようになります。

社員全員が新しい仲間に対してこのような向き合い方ができている組織は、候補者にとっても入社前後の期待値ギャップが少なく、非常に効率・生産性の高い採用が実施できています。

2.  社員エンゲージメントの向上と離職率の低減

2つ目のメリットは社内エンゲージメントです。人的資本開示の義務化も決まり、組織における働きやすさ、働きがいに対してアプローチするのが当然のこととなりました。

インナーブランディングを実践することで、会社が目指す未来像や姿(ビジョン)をメンバーに共有し、共感を生むことが期待できます。短期的、金銭的な繋がりだけではなく、考え方や価値観への共感で繋がることが、メンバーのエンゲージメントを高め、結果として離職率を低減させていくことにも繋がります。社員がどんどん辞めてしまう、働きがいを感じられていない、そういった課題にぶつかった時は、ぜひインナーブランディングの実践を検討してみてください。

3. 意思決定の迅速化と経営効率の向上

メリット3つ目は意思決定の迅速化と経営効率の向上です。インナーブランディングによって浸透された理念や価値観は、重大な経営的決定をする上での“よりどころ”と言えます。

何か意思決定する際に、何を指針とするのか?意見が割れた時に何を基準に決めるのか?

経営だけでなく、事業を推進する現場でも、日々さまざまな意思決定を求められています。その時、会社の経営理念や価値観が共有されていれば、「この選択はビジョン達成に向けて最善と言えるか?」「会社のバリューを体現しているか?」と自身に問うことで、メンバー一人ひとりがその会社にとって正しい判断をすることができます。

個々人が正しい判断をできるようになれば、意思決定を任せられる裁量領域が広がり、経営やマネージャー層に集約されがちな意思決定のためのリソースが削減されます。インナーブランディングは、現場の裁量を広げ、経営効率を向上させるのに非常に有効な一手と言えるでしょう。

デメリット

続いてはデメリットです。このデメリットがインナーブランディングを進める上で大きな阻害要因になることが多いので、デメリットだけでなく、上述したメリットと合わせて検討することをお勧めします。

1. 投資対効果の不透明さ

一つ目のデメリットは投資対効果の不透明さです。インナーブランディングは組織文化を改善するための取り組みなので、事業KPIの向上に直結することはなかなかありません。社内エンゲージメントや幸福度を調査して数値化できても、その結果と売上との関連性が見えづらいというジレンマは付きものです。そのため、売上至上主義な組織ではなかなか採択されない施策の一つになりがちです。

インナーブランディングに取り組む際は、投資対効果を追うよりも、「今期の文化醸成予算は●万円」と言った予算優先で組み立ていくのもおすすめです。

2. 効果が出るまでのリードタイムの長さ

二つ目のデメリットはリードタイムの長さです。インナーブランディングは徐々に社内に浸透させていくものであり、一朝一夕で効果が出るものではありません。スタートアップやベンチャー企業では一日単位で物事が変化していくことも多く、なかなか受け入れにくいリードタイムですが、さまざまなメリットに期待してじっくり向き合う覚悟を持ちましょう。

1年、2年という期間でさまざまな取り組みのマイルストーンを起き、施策の進捗度(消化率)を指標にすることがおすすめです。

3. 施策の優先順位が下がりがち

最後のデメリットは社内施策としての優先順位が下がりがち、という点です。

インナーブランディングはリードタイムが長いために、「重要だが緊急ではない事象」に位置付けられます。そのため、「重要かつ緊急なこと」が発生した際に、どうしても優先順位を落としてしまう、という声も少なくありません。

ここでも重要なことは、経営陣の強い意志です。会社が大切にする価値観や、ビジョンと言った企業ステートメントを浸透させ、自分達らしいカルチャーを形成することの優先順位を上げられるのは経営メンバーしかいません。圧倒的に独自のカルチャー形成ができている企業ほど、組織文化や風土に対する経営層のリテラシーが高く、強いコミットをしている傾向があると言えます。

さまざまな経営課題の中で文化醸成・インナーブランディングの優先度をどの程度に位置付けるのか、しっかりと意志を固めてからスタートさせることをオススメします。

「インナーブランディング」を進めるうえで注意すべきポイントとは

ここではインナーブランディングを進める上での注意点をいくつかお伝えします。

1. インナーブランディングの目的を整理する

インナーブランディングに限らず、社内の施策において最もおざなりになりがちなポイントが目的の言語化です。目的を整理する上でのポイントは

  • この取り組みによって解決される課題は何か?(現状の課題共有)
  • 課題が解決されるとどんな良いことが起きるのか?
  • 解決されたと判断できる指標は何か?

この辺りの問いに答えることで目的を整理していくと進めやすいので参考にしてください。

2. 組織における現状を正しく把握する

目的が整理できたら現状把握です。課題を引き起こしている原因をさまざまな角度から見て明確にします。

現状把握に必要なのは情報を集めることです。メンバーやマネージャー、経営陣に具体的なヒアリングをして、個々人の使う言葉やイメージの微妙なズレを発見しましょう。また、アンケートで情報を集めるのも有効です。メンバーのレイヤーなどで調査対象を分けながら、課題の要因となっている事象やそれぞれの認識相違点をまとめていきましょう。

3. 企業理念・ステートメントを改めて見直す

企業理念やステートメントは、その組織がありたいと願う理想像を言語化したものです。

現状を把握した上で、改めて企業理念・ステートメントを見直してみてください。

  • 現状と理想のギャップはどんなところにあるのか?
  • 現組織を見渡した時に、今の理想とする理念・ステートメントは適切なのか?
  • 理念・ステートメントのコンテキストはメンバーに理解されているのか?

などの観点で見直した上で、企業理念・ステートメント自体をアップデートするのか、それは変えずに浸透に重きを置くのか、プロジェクトとしての方針を決めましょう。

4. インナーブランディングを推進するチームを結成する

目的の整理、現状把握、インナーブランディングの方針が見えたら、実行に移していきます。

カルチャー醸成は一人でできるものではありません。各事業部やチームのカルチャーに影響しそうなキーマン、カルチャー醸成に興味の強いメンバーを集い、チームを発足しましょう。売上のように成果が見えにくいからこそ、目指すゴールに向けたロードマップを描き、チームで推進していくことが重要です。

また、プロジェクトの進捗は定期的に全社で共有することで、チーム外のメンバーの”自分ごと感”も高まり、プロジェクトを推進しやすくなります。チームを中心に、カルチャー施策への自発的な関わりを社内に広めていくこともポイントの一つです。

 

5. 定量的な指標で定点観測する

インナーブランディング施策の多くは定量的に測りづらいテーマを扱うことが多いですが、可能であれば定量指標を置くことをおすすめします。定量指標の置き方はいくつかありますが、代表的なものを例にあげておきます。

現状課題をアンケートフォームで点数化する

    • 同僚とのコミュニケーション量を10段階で何点か?
    • 所属チームにおける意思疎通のしやすさは10段階で何点か?
    • 所属部署における働きやすさは10段階で何点か?

など

既存の調査フォーマットを用いる

既存のツールを活用する

 

正解があるわけではないので、上記を参考にしつつ、自分達の課題に合わせた定量化方法を検討してみてください。

「インナーブランディング」の企業事例

スターバックス

日本全国で1,800近い店舗を展開し、顧客ファンを多く獲得しているスターバックスは、インナーブランディングの代表的な成功例と言えるでしょう。「店舗体験こそが最大のマーケティングになる」と考えている同社は、企業のミッションやバリューを明確に定義しており、店舗従業員を「パートナー」と呼ぶことで自主的な行動を促進しています。

飲食業界としては珍しい、「接客マニュアルの不在」でもよく知られています。

オリエンタルランド

東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを運営するオリエンタルランドも、インナーブランディングの成功例です。従業員の役割を「ゲストに魔法をかけること」と定め、そのためにテーマパークで働く従業員を「キャスト」と呼ぶことで自発的な行動と発想力を促進しています。

また、オリエンタルランドもマニュアルを持たないことで知られています。その一方でキャスト同士の賞賛コミュニケーションを育むような文化制度や休日申請制度が整備されており、社員の意欲向上に力を入れています。

Zappos

靴製品を始めとしたアパレル製品を扱うアメリカ企業であるZapposもインナーブランディングに力を入れています。企業の行動指針となるコアバリューを明確に定義しており、それにフィットする人材を採用するために相当の時間をかける研修制度で知られています。

また、オフィスがペット同伴可能であったり昼寝スペースが設けられていて、社員のユニークな働き方を促進しています。「社員の顧客対応こそが最大のブランディングになる」という考えの元、社員が心ゆくまで顧客対応できる環境づくりに力を入れています。その結果、Zapposのコールセンター対応には数々の逸話があり、そのサービス精神によって多くのファン獲得に成功しています。

 

インナーブランディングの手法や企業事例をご紹介いたしました。

なお、企業事例に関してはインナーブランディングが成功している企業に学ぶ成功の秘訣詳しくご紹介していますのでご参照ください。

効果的なインナーブランディングを行えば、理想の組織文化を醸成してエンゲージメントを高めることができます。社員一人ひとりの行動を高めて組織力に繋げたいとお考えの方はぜひ挑戦してみてください。

なお、Cultive(カルティブ)ではエンゲージメントに効果的な企業文化の醸成をサポートしています。企業理念から深くヒアリングし、各社に合わせた文化形成に伴走型で取り組みます。

お悩みの際はぜひご相談ください。

 

この記事を書いた人

小名木 直子
小名木 直子

Producer

オリジナルウェディングのプロデューサーとして多くのイベント企画に携わる。小人数〜200人規模のイベントを得意とする。職場の中でどれだけ心が動く瞬間があるかで人生の幸福度が変わることを実感し、多くの人にCultiveのサービスが届くようWEBサイトの監修も担う。

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