組織活性化とは
組織活性化とは、メンバー一人ひとりが自律的に動き、創造性を発揮できる状態を目指すことです。個人のやる気を高めるだけでなく、メンバーの能力や意見が組織全体で活かされるよう、仕組みや環境を整える取り組みを指します。
具体的には、上司からの指示だけでなく現場から自発的に提案が上がるような企業風土の醸成や、部署間のスムーズな連携を促す体制づくりが挙げられます。メンバーが安心して行動し、自由に意見を出し合える雰囲気をつくることも非常に重要です。
単なるモチベーション向上に留まらず、組織全体の力を最大限に引き出すベースを築くことが、組織活性化につながります。
組織活性化が必要とされている理由
組織活性化は、企業の成長のために必要なものです。活性化されていない企業では、さまざまな課題が表面化します。
例えば、活性化されていない企業ではメンバーのモチベーションが上がりづらく、新しい挑戦やアイデアが生まれにくくなってしまいます。結果として離職率が上がったり、組織全体の成長が鈍化したりするでしょう。
特に、変化の激しい現代においてトップダウン式だけでは限界があります。上層部だけですべての情報を把握し、スピーディーな意思決定をすることは難しいからです。多様な働き方や価値観を持つ、メンバーの強みを活かしきることができません。
実際、厚生労働省はエンゲージメントと個人の労働生産性の向上は関係している可能性があるという調査結果を出しています。
企業が課題を解決し成長し続けるためには、組織の仕組みや風土を見直す「組織活性化」が重要です。
組織活性化に成功している企業の特徴
実際に、どのような企業が組織活性化に成功しているのでしょうか。3つの視点から特徴を解説していきます。
- メンバーに経営理念が浸透している
- 事業目標に向けてメンバーが主体的に行動している
- メンバー同士のコミュニケーションが円滑である
メンバーに経営理念が浸透している
経営理念がメンバーに浸透している企業は、組織活性化ができているといえます。理念を共有するとメンバーの行動や意思決定に一貫性が生まれ、組織全体が同じ方向を向いて動けるからです。
経営理念は単なるスローガンではなく「何のために働き、どこへ向かうのか」を理解する大切な指針になります。これにより、働く意義や目的を見出しやすくなり、モチベーションやエンゲージメントの向上にもつながるでしょう。
例えば、京セラでは経営理念である「京セラフィロソフィ」がメンバーに深く浸透しています。その結果、京セラは一人ひとりが同じ価値観で自律的に行動できる強い企業文化を持っています。
経営理念の浸透は組織活性化の基盤として非常に重要です。ビジョンを掲げるだけでなく、働き方や制度と結びつけ、メンバーの主体性や一体感を引き出しましょう。
事業目標に向けてメンバーが主体的に行動している
組織活性化には、メンバーの主体的な行動が欠かせません。主体的な行動は組織の柔軟性や創造性を高め、成果につながるからです。指示を待つだけでなく、自ら課題を見つけて動くメンバーが多いほど、企業はスピーディーに対応できるでしょう。
挑戦を歓迎する文化があり、失敗を責めない心理的に安全な職場環境が整っている組織は、活性化しやすくなります。例えば、メンバーの提案を新しい事業につなげる社内ベンチャー制度や、前向きな行動を評価する表彰制度などは、主体性を促す仕組みです。
メンバーが自ら考え行動できる組織では、活性化の好循環が生まれやすいでしょう。単に指示を出すのではなく、メンバーの声を活かし行動を支える風土や制度づくりが重要です。
メンバー同士のコミュニケーションが円滑である
活性化している組織では、メンバー同士のコミュニケーションがスムーズです。チームや部門を越えた「横のつながり」が深まると、情報共有が円滑になり業務の無駄が減るからです。コミュニケーション不足はミスや孤立を生むことがありますが、連携が取れると協力して目標に向かえます。
例えば、定期的な雑談ミーティングや部署横断プロジェクトは、自然に横のつながりをつくるでしょう。また、オンラインでの交流を促すバーチャルランチ会や社内SNSの活用も、関係性を深めるのに有効です。
日常的に気軽に話せる関係があれば、仕事も人間関係も前向きに進んでいくでしょう!
組織活性化の効果と期待できる成果
組織活性化が組織にもたらす効果と、期待できる成果を4つ紹介します。
- メンバーのモチベーション向上
- 生産性と業績の改善
- メンバーのエンゲージメントの向上
- 採用と教育におけるコスト削減
メンバーのモチベーション向上
組織活性化は、メンバーのモチベーションを向上させます。活性化された組織では社内コミュニケーションが活発になるからです。
情報や想いが部署間でスムーズに共有され、上司や同僚からの承認やフィードバックが増えると、信頼関係が深まります。このような環境では、メンバーは自分の意見を安心して伝えられ、自ら行動する姿勢が育まれるでしょう。
組織活性化に取り組む企業では、モチベーション・目標達成率の向上や離職率の低下などの成果も報告されています。
生産性と業績の改善
組織活性化は、業務効率と生産性を向上させ、最終的に業績アップへと直結します。
組織が活性化されると、社内のコミュニケーションがスムーズになり、情報共有のスピードと質が上がります。これにより、意思決定がスピーディーになり業務の重複や無駄が減るでしょう。部門間の連携も強まり、チーム全体で目標に向かって効率的に動ける体制が整います。
これらの変化は、業務エラーの削減やコストの最適化にもつながり、売り上げの増加にも貢献します。
組織活性化は「情報共有・連携強化 → 業務効率化 → 生産性向上 → 業績アップ」という流れで、ビジネス成果をもたらす有効な手段です。
メンバーのエンゲージメントの向上
組織活性化は、メンバーの「会社やチームへ貢献したい」という気持ちを高めます。これは、組織内のコミュニケーションが活発になり、意見が尊重される環境が整うためです。このような環境はメンバーのエンゲージメントを強化します。
エンゲージメントの向上は、メンバーの定着率アップにつながります。メンバーが積極的に意見を提案し、社内でのイノベーションが促進される効果も期待できるでしょう。
エンゲージメントは、会社との深い結びつきを意味し、一時的な意欲であるモチベーションとは異なるものです。
組織活性化はメンバーのエンゲージメントを高め、新しいアイデアや改善案が次々と生まれることで組織の進化を後押しします。
採用と教育におけるコスト削減
組織が活性化すると、採用や新入社員の研修コストを大幅に削減できます。メンバーの定着率が上がり、離職率が下がるため、求人広告費や面接にかかる負担を抑えられるでしょう。
さらに、活性化した組織はOJTの質を高め、教育効率を向上させます。メンバーが主体的に学び合い、互いの成長を支え合う文化が育つからです。結果として、長期的な視点での人材育成が進み、企業の競争力も高まります。
組織活性化は離職率を改善し、採用・教育コストを抑えながら、質の高い人材を育てられます。これは、企業の人的資本経営を支えるでしょう。
組織活性化に役立つフレームワーク
組織活性化に役立つ3つのフレームワークを紹介します。自社のタイプにどの考え方が役立つか、ぜひ参考にしてください。
- ミッション・ビジョン・バリュー
- パーパス
- OKR
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)
MVVは、組織の方向性を定める羅針盤です。ミッションは企業の使命や目的、ビジョンは目指す未来像、バリューは日々の行動指針として、メンバーが大切にすべき価値観や働き方を示します。これら3つが明確に定義されることで組織内に共通の言語と価値観が生まれ、全員が同じ方向を向いて進めます。
MVVは判断基準を明確にするため、現場での意思決定がスムーズに進み業務の停滞を防ぎます。また、一人ひとりが自分の役割や会社の目標を理解しやすくなるため、主体的な行動が促されるでしょう。結果として、チームの一体感が高まりコミュニケーションが活発化することで、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
実際に、サイボウズやリクルートはMVVを軸にメンバーの自発性や多様な働き方を重視した組織づくりが、企業成長の一因となっています。
MVVは組織の方向性を明確にし、メンバーの一体感や主体性を高めたい企業にとって、非常に効果的だといえるでしょう。
パーパス
パーパスとは、企業の社会における存在意義を明確に示すものです。MVVが社内向けの指針である一方、パーパスは社会に向けた企業メッセージの役割を担っています。
企業がパーパスを設定し社内で共有すると、メンバーは自分の仕事に「社会的な意義」を見出しやすくなります。働く意義が強く感じられ、主体的な行動へとつながるでしょう。パーパスが明確であるほど、メンバーは言われたことをこなすだけでなく、組織目標の達成に向けて進んで貢献するようになります。
例えば、ユニリーバは「サステナブルな暮らしを、すべての人に」というパーパスを掲げています。これは、環境への配慮や社会への貢献を事業の中心にするという意味です。新商品開発から宣伝活動においてパーパスがメンバーの行動指針となり、持続可能性を追求する企業文化を育んでいます。
このようにパーパス経営は組織全体の活性化につながり、メンバーのエンゲージメントやイノベーションを高めるのに役立ちます。
OKR(Objective Key Results)
OKRとは組織やチームの「目標」と、その目標の「主な成果指標」を決めて、進捗を管理するフレームワークです。導入すると目標が明確かつ具体的になるので、何を目指せばいいかを共有できるようになります。
OKRを取り入れると目標が見える化されて、部署やチームを越えた連携が強まります。これは組織全体の活性化につながるでしょう。例えば、バラバラだった部門目標も会社全体の目標と個々の役割が結びつき、メンバーの主体性や協力意識が高まることがあります。
従来のKPIが結果の数字を重視するのに対し、OKRは挑戦的な目標設定とそのプロセスも大切にする点が特徴です。
OKRをただの目標管理で終わらせないためには、トップが積極的に関わり実践する姿勢を見せることが大切です。経営層と現場が密にコミュニケーションを取りながら、継続的に改善していきましょう。
組織活性化を進めるポイント
組織活性化は以下のポイントを抑えると、効果的に進められます。それぞれ見ていきましょう!
- 上層部の理解を得て取り組みへの参加を仰ぐ
- 聞き取り調査で現場のリアルな声を反映させる
- 上司との定期的な面談を実施する
- 長期的な目標と短期的な小目標の両方を設定する
- メンバーの担当業務をマルチに割り当てる
上層部の理解を得て取り組みへの参加を仰ぐ
会社全体を活性化させるには、経営層の理解と協力が不可欠です。組織活性化は人事部だけの取り組みにとどまらず、会社全体の文化や働き方を変える大きなチャレンジだからです。上層部が積極的に関われば、施策に勢いがつき信頼感も高まります。
経営層からリーダー層へ組織活性化の取り組みや役割を伝え、現場との橋渡し役になってもらいましょう。リーダー層が自分事として動ける環境を整えることで、現場の抵抗を減らし、変化への理解と協力を得やすくなります。
上層部が関わることで、予算やルール作り、評価制度の見直しなどもスムーズに進み、施策がより効果的になります。組織活性化は上層部とともに、リーダーシップを持って進めましょう。
聞き取り調査で現場のリアルな声を反映させる
組織活性化の施策は、現場のリアルな声を反映させることが欠かせません。経営層や人事部門だけで施策を決めてしまうと、実情に合わず形骸化しやすくなります。現場の実感値やニーズを取り入れると課題に合った対策が立てられるため、メンバーの納得感や参加意欲が高まるでしょう。
方法としてはアンケート調査や1on1ミーティングが効果的です。組み合わせると統計的な傾向と個別の悩みの両方をとらえたアイデアが生まれやすくなります。
変革の当事者は現場で働くメンバーです。上からの押し付けではなくボトムアップで進めると、取り組みへの参加率や継続性が向上します。調査結果を上層部と共有し、改善点を明確化したうえで段階的に実践していきましょう。
上司との定期的な面談を実施する
上司との定期的な面談は、組織を活性化するうえで非常に有効です。定期的な面談は早期の問題の把握や、上司と部下の信頼関係の構築ができます。目標の再確認や調整もスムーズに行えるでしょう。
形式的な面談では部下の本音や課題は見えてきません。面談を報告ではなく、双方向のフィードバックの場にすることが重要です。上司が一方的に話すのではなく、部下からの意見や質問を促し、雑談も交えながらリラックスした雰囲気で進めましょう。
定期的な面談は、組織活性化のためのコミュニケーションを強化し、早期課題発見や目標共有を促します。ぜひ取り入れてみてください。
長期的な目標と短期的な小目標の両方を設定する
組織を活性化するには、長期的なビジョンと短期的な目標を組み合わせるのが効果的です。
長期的なビジョンは組織全体の方向性や働く意義を明確にし、メンバーのエンゲージメントを高めます。しかし、目標達成までが遠いためメンバーのモチベーションが低下するかもしれません。
一方、小目標は達成感を頻繁に得られるため、モチベーション維持・向上に役立ちます。成功体験の積み重ねが個人の自信やチームの一体感を高め、組織全体を活性化するでしょう。
チームでは四半期ごとのKPIを設定し、個人レベルでは週単位や月単位でタスク目標を設定するとよいでしょう。KPTやOKRなどのフレームワークを活用した定期的な振り返りをすると、目標の可視化と進捗管理がしやすくなり、達成に向けた行動を促せます。
長期的なビジョンと短期的な目標を現場に適した形で導入し、定期的に振り返ることがポイントです。
メンバーの担当業務をマルチに割り当てる
メンバーに複数の業務を割り当てるマルチタスク化は、組織活性化を促します。多様な業務経験はメンバーの視野を広げ、スキルアップやチーム連携の強化につながるからです。
導入するときは、まずは現状の業務内容とメンバーのスキルを把握しましょう。そのうえで、ジョブローテーションやプロジェクトへの参加を段階的に組み込んでいくのが効果的です。経験した業務を振り返る時間を設け、学びや課題を共有するとより高い活性化が期待できます。
ただし、業務の多様化はメンバーの過度な負担にならないよう注意が必要です。負荷が偏りすぎると、かえって活性化を妨げてしまいます。業務量や難易度のバランスを管理し、定期的な面談をしながら調整しましょう。
成功事例から学ぶ組織活性化
実際どのような企業がどのような戦略で組織活性化を実現してきたのでしょうか。
以下の2社の課題に対する戦略から、自社に取り入れられそうなヒントはないか、事例を見ていきましょう!
- トヨタの組織活性化における戦略
- サイボウズの組織活性化における戦略
トヨタの組織活性化における戦略
大企業の組織活性化において、トヨタの「カイゼン活動」は非常に参考になります。
トヨタは、意思決定の遅れや現場からの意見が届きにくい課題に直面していました。そこで、生産性や品質向上のため現場の声を尊重し、一人ひとりが業務改善に主体的に取り組むカイゼン活動を推進しました。この活動では、メンバーが日々の業務プロセスを見直し、作業効率の向上策を自ら提案し実行します。
結果として、トヨタは問題発見から解決までのスピードを上げ、生産効率と品質を高め競争力を強化しました。これは、メンバーが自ら考え行動できる環境を整えることの重要性を示しています。
トヨタの事例からは、トップダウンだけでなく現場からのボトムアップを重視し、メンバーの自主性と現場力を高める仕組みが企業の成長につながると学べます。日々の業務で小さな改善を積み重ねる文化を醸成し、現場の声を経営に反映させる仕組みをつくるとよいでしょう。
サイボウズの組織活性化における戦略
サイボウズは「100人100通りのマッチング」と透明性の高い情報共有、心理的安全性の重視を柱に、メンバーの多様性を最大限に引き出す仕組みを構築しました。
サイボウズは「100人100通り」の個性を重視し、個々のライフスタイルに合わせた柔軟な制度を導入しています。勤務時間や場所の選択肢を増やし、メンバーが自律的に能力を発揮できる環境を整備しました。
また、社内情報を共有しチーム間の信頼と連携を強化しました。さらに問題意識を共有する「もやもや共有メソッド」を導入し、心理的安全性の確保にも努めています。
これらの取り組みは、メンバーの満足度向上、離職率低下、パフォーマンス向上につながりました。柔軟な働き方はストレス軽減と業務効率改善をもたらし、変化に強い組織文化を育んでいます。
サイボウズの事例は、多様な働き方を許容する柔軟な制度設計や情報共有、心理的安全性の確保が企業の持続的な成長に不可欠であることを示唆しています。働き方の多様化に悩む企業にとって、貴重なヒントとなるでしょう。
まとめ
組織活性化とはメンバーが意欲的に働き、組織全体のパフォーマンスを高める取り組みのことです。
活性化ができている企業ではメンバーのモチベーションやエンゲージメントが向上するため、企業の生産性や業績へもよい影響を与えるでしょう。
個人のモチベーションだけに頼るのではなく、仕組みとして制度を構築することが重要です。
この記事で紹介したフレームワークや推進ポイントを参考に、ぜひ自社の課題やニーズに合わせた組織活性化を進めてみてください。
私たちCultive(カルティブ)は「人と企業を幸せにする文化づくり」をテーマに、それぞれの会社に合ったイベントの企画や運営をお手伝いしています。
組織活性化に向けた取り組みについて、具体的な施策の導入から継続的な改善まで、お客様のニーズに合わせたサポートをご提案します。会社の文化や“らしさ”を抽出し、目に見え、手に取れるようなカタチをクリエイティブの力で与えて、心震えるストーリーを社員の皆様に届けます。
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