社会形態の変化に合わせて、働き方に対する価値観も多様化しています。労働人口の減少と働き方の多様化に伴って、前時代のような、企業が労働者を選ぶという構図は逆転し、働く側が企業を選ぶという時代になりました。SDGsによってサステナビリティが唱えられるようになり、社会や自然環境に対してだけでなく、労働環境に対する幸福度や持続性を求める声も高まっています。会社が発揮すべき社会的価値もさることながら、自社内の文化をいかに形成し、社員の幸福度を守るかということも、企業に求められる重大な使命と言えます。
このような状況の中で、文化醸成や人材定着に効果的な施策としてピアボーナスが注目を集めています。
この記事では、ピアボーナスの基礎的な知識から導入にあたってのポイントをご紹介いたします。自社内の文化形成や、メンバーの幸福度向上のための施策をご検討中の方はぜひお読みください。
なお、ピアボーナスに代表されるインナーブランディングの重要性はこちらの記事で詳しくご紹介しています。
エンゲージメント経営を実現できるTHANKS GIFT
近年、エンゲージメント対策のひとつとして、社員同士で「ありがとう」を贈り合う文化施策に取り組む企業が増えています。お互いを “褒め合う” コミュニケーションに特化した社内SNSツールなども展開され、導入例も数多くあります。
人は褒められることで良い行動変化が生まれるという研究結果も報告されており、賞賛コミュニケーションが社員の自主的な行動に繋がるという効果が期待されています。
また、お互いを尊重し、感謝や賞賛が溢れるチームは生産性や定着率が向上するという特徴もあり、その効果も期待されています。
目次
ピアボーナスとは?
社員同士の賞賛コミュニケーションのひとつとして、ピアボーナスへの注目も高まっています。これは、英語の「peer(仲間)」と「bonus(報酬)」を組み合わせて生まれた言葉で、会社からではなく社員同士で報酬を贈り合える制度となっています。アプリやシステム上で感謝とポイントを贈り合い、貯まったポイントが会社の用意した商品やインセンティブ制度として支払われるようになっています。
ピアボーナスが注目される理由・背景
ピアボーナスは海外企業では以前から導入されており、人事評価制度の一環として注目されていました。また、Google社が社員の評価制度として導入したことでも広く知られるようになりました。
それ以外にも、ピアボーナスが注目される背景には様々な社会的背景が関わっています。
リモート環境下でのコミュニケーションの問題を解消する
新型コロナ流行の影響もあり、働き方はさらに多様化しています。リモートワーク・在宅ワークが当たり前となり、ともすればコミュニケーションも希薄になりがちです。そんな中で、チームワークや帰属意識を高めるための施策のひとつとしてピアボーナス制度は再注目されています。お互いを賞賛し合い、ポイントを贈り合うというコミュニケーションを通して、自然と連携力も増し、交流が活発になることが期待されます。
成果では測れない社員の言動にスポットを当てられる
近年、若い世代が「働き方」に求めるものも変化しつつあります。「自分の成長に繋げたい」という上昇志向は減少傾向にあり、代わりに、「やりがいのある仕事に楽しく取り組みたい」という意識が高まっています。これは新型コロナなどによる社会的意識の変化も関わっていると考えられますが、自分の仕事が社会や組織の中で意義を発揮しているという実感を若い世代は求めています。こうした価値観変容の中で、数字的成果だけではなく、行動やマインドに対して感謝と賞賛が贈られるピアボーナスの効果も再注目されています。自身の体現したマインドに対して賞賛が贈られることで、さらなる自発的な行動を生み出すモチベーションへと繋がりやすくなるでしょう。
社員や組織に良い影響を及ぼすことが事例や研究で分かってきた
賞賛コミュニケーションが生み出す効果は、以前から心理学などの分野で研究されてきました。同じ単純作業をいくつかのグループに与え、褒めるグループと褒めないグループで分けてみた結果、褒められたグループの方が、作業量が増したという報告も出ています。このことからも分かるように、人は、自分の起こした行動に対してポジティブな反応を得ることで、その意義を実感しやすくなり、周囲の期待にもっと応えようという思いを持って行動しやすくなります。互いに賞賛し合うコミュニケーションはメンバーの行動改善にも繋がり、組織の心理的安全性も高めてくれると考えられています。
ピアボーナスの5つの導入メリット・効果
ピアボーナス導入によって期待できるメリット・効果にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的なものをいくつかご紹介いたします。
社内の組織力向上
組織力は社員一人ひとりの行動によって高まります。個人の行動やマインドを賞賛するピアボーナスを導入することで、各自の行動の質が高まり、チームワークが強化され、結果として成果が伸びるという効果が期待されています。
社内コミュニケーションが活性化する
ピアボーナスで評価されるのは数字的成果だけではなく、「難しいプロジェクトを先導してくれた」「人手が足りないときに率先して手伝ってくれた」などの、誰かを助ける行動です。お互いの行動を賞賛し合う機会を用意することで、メンバー同士の思いやりが高まり、ポジティブなコミュニケーションが生まれることが期待できます。
モチベーションの向上
数字的成果だけを求められると、会社の利益のためだけに働いているような気持ちに陥り、結果として日常業務へのモチベーションも下がってしまいます。「思いやり」や「人知れない努力」に焦点を当て、可視化と賞賛の機会となるピアボーナスによって、普段は意義を見失いがちな業務への新たなモチベーションとなることが期待できます。
人材の定着、離職防止
若い世代に限らず、人はやりがいを感じられる職場環境を求めています。そして、やりがいは1人で感じられるものでなく、お互いに賞賛し合えるチーム・組織と共にいることで実感できます。ポジティブなチーム関係のきっかけとなるピアボーナスによって、人材定着や離職防止の効果を生みやすくなります。
簡単に手軽に導入できる
導入にあたってのハードルが低いというのも、ピアボーナスの大きなメリットのひとつです。ピアボーナスに特化したサービスは多数存在しており、それらを利用することで比較的簡単に施策をスタートさせることができます。制度自体もシンプルなものなので、導入にあたっての社員への心理的ハードルも低くて済むというのも、メリットの一つでしょう。
ピアボーナスの4つの導入デメリット
続いて、ピアボーナスを導入するにあたって注意しておくべきポイントやデメリットをご紹介いたします。
効果が見えるまで時間がかかる
これは全ての文化施策に言えることですが、導入から効果を実感できるまでは時間がかかります。ピアボーナスが促進していくのは個人の行動やマインドの改善、チームワークの強化や社内文化の醸成です。こういった効果が目に見えて発揮されるようになるまでは、ある程度の期間が必要ですし、その期間内で繰り返し施策が行われることや、ときには社内の様子に合わせたチューンアップも必要となります。こうした施策は継続してこそ意味があるもので、目に見える成果を早計に求めてしまうとかえって逆効果にもなりかねません。
長期的な施策であるという認識を持つことが大切なポイントになります。
導入コストがかかる
ピアボーナスに特化したサービスの存在を前述しましたが、手軽に導入できる反面で初期費用や利用料のコストが発生します。既存の外部サービスを利用する際は、その料金体系を確認し、効果が期待できるまでの期間にかかるコストなども算出しておく方が安全でしょう。また、ピアボーナスで贈り合ったポイントを現金として社員に支給する場合は、そのための財源を確保する必要もあります。
導入によってどのような変化を期待し、そのためにかけられるコストはどの程度なのか。事前に明確なイメージを持ってから進めましょう。
運用が形骸化してしまう可能性がある
経営陣がピアボーナスに消極的であったり、上司が部下に求めるものが数字的成果に集中しすぎていると、こういった文化施策は形骸化していきます。前述したとおり、効果が現れるまでに一定の期間が必要となることも理解して、その他の文化施策と並走させていける運用体制を組みましょう。ピアボーナスだけでなく、コミュニケーションを活性化させるための社内イベントや、経営理念を体現したメンバーを表彰する表彰制度など、企業の文化醸成とメンバーの幸福度向上を実現するためには多角的なアプローチが必須です。持久力の必要な運用となることを理解しておかないと、社員の参加意欲も上がらずに、形骸化してしまうという結果になりかねません。
褒められることが目的の言動ばかりが増える可能性がある
社員の良い行動やマインドに対して報酬を与えるピアボーナスは、モチベーションや意識の向上に繋がるとされています。しかし一方で、利益や賞賛ばかりを求める社員が生まれてしまうという可能性もあります。「褒められるために手伝おう」「ポイントが欲しいから頑張ろう」という、短絡的なモチベーションにすり替わってしまうという危険性です。こうした即物的かつ個人的なモチベーションに繋がってしまっては、導入にあたって期待していた効果からかけ離れてしまいます。ピアボーナスを導入する本質的な意義を社員に共有し、みんなが正しく利用してくれるようなコミュニケーションも大切なポイントとなります。
ピアボーナスサービス導入でよくある失敗
様々な効果が期待されるピアボーナスですが、導入に失敗した例もあります。
前述の通り、ピアボーナス導入で注意すべき点として「褒賞の財源確保」があります。ある会社では、この対策としてピアボーナスの褒賞を社員同士が自腹で支払うようにしました。その結果、社員の不満が高まり、制度自体が中止となってしまいました。
また、ピアボーナスを導入したところ、自分と他人を比較する社員が増えてしまい、結果として社員のモチベーションが低下してしまったという例もあります。
このように、会社の財政状況や社内の雰囲気を加味せずに導入してしまうと、かえって逆効果となってしまうこともあります。ピアボーナスが自社にとってフィットする手法であるかは、チーム内でもよく検討しておく必要があるでしょう。
ピアボーナスの導入の失敗を防止する方法
それでは、ピアボーナスの導入に失敗しないためにはどういった点に注意すればいいのでしょうか。導入前に気をつけておくべきポイントをご紹介いたします。
導入目的や自社に必要な機能を明確にする
まず明確にするべきなのは導入する目的です。組織の現状課題を洗い出し、その対抗措置としてピアボーナスが有効であるかを判断しましょう。前述したように、自社の雰囲気に合うかどうかも議論し、ピアボーナスが活発に運用されているイメージが湧くかどうかも含めて検討してみましょう。また、目的に沿った効果が現れるまでに予想される所要期間や、その期間の継続的運用が可能かも確認しておくことが大切です。
さらに、自社内で定着しやすい運用イメージを固めて、ピアボーナスに必要な機能もリストアップしておくと、外部サービス選定などの際にスムーズになります。
社員に導入目的や利用イメージを伝える
導入時に、その目的や利用イメージを社員に伝えることも、施策を成功に導くための大切なポイントです。ここのコミュニケーションが不十分だと、前述のような形骸化や失敗に繋がりかねません。「お金が貰える制度らしい」「人に親切にすればお金が稼げる」などの誤ったイメージを持たれないように、丁寧な説明を心がけ、どのような想いで導入するかを伝えられるようにしましょう。
ピアボーナス運用のためのチームを設ける
ピアボーナスの効果が出るまでにはある程度の期間が必要です。また、他の文化施策とも並走させながら、総合的に社内の状況を判断していくことも必要です。制度が形骸化していかないためにも、運用チームを作って定期的な観測ができるようにしましょう。社内文化や社員の幸福度について思考し続けるチームができることで、施策のチューンアップもしやすくなり、ノウハウが蓄積されていきます。
ピアボーナスの基礎的な知識と導入に関するポイントをご紹介いたしました。いかがでしたでしょうか?
組織文化を改善していくためには、複数の施策を試し続けることと、会社から社員へのコミュニケーションが重要となります。それぞれの施策の意義を明確にしながら、社員の幸福度を高め、エンゲージメントと創造性に溢れた会社を目指して挑戦してみてください。
なお、Cultive(カルティブ)では企業文化を醸成するための伴走方サービスを提供しています。経営者の想いや会社の理念に寄り添い、社員へのヒアリング調査を踏まえて、現状課題にアプローチできるような文化施策をご提案・サポートいたします。お困りの方はぜひご相談ください。
この記事を書いた人
小名木 直子
Producer
オリジナルウェディングのプロデューサーとして多くのイベント企画に携わる。小人数〜200人規模のイベントを得意とする。職場の中でどれだけ心が動く瞬間があるかで人生の幸福度が変わることを実感し、多くの人にCultiveのサービスが届くようWEBサイトの監修も担う。
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