クレドとは?求められている背景
「クレド(Credo)」はラテン語で「志・信条・約束」などを意味し、企業においては全社員が共有する行動の指針を指します。クレドでは、経営理念や企業理念が具体化され、従業員の行動や判断の基準として機能します。
創業時から変わることのない経営理念とは異なり、クレドは、企業の成長や時代の変化によって柔軟に変えていくことができます。
クレドが注目されるようになった背景には、2000年代に入ってから海外で頻発した、大手企業の不祥事が挙げられます。日本でも金融不祥事や食品偽装が問題となり、2006年には「金融商品取引法」「公益通報者保護法」が施行されました。
こうした背景から、企業倫理とモラルの向上を目的としたクレドの導入が求められるようになったのです。
クレドを設定する3つのメリット
ここでは、クレド設置がもたらす以下の3つのメリットをご紹介します。
- 経営理念やミッションが浸透する
- 従業員の行動指針が明確になる
- 企業のブランディングに寄与する
それぞれのメリットは、コンプライアンスの遵守や主体的な人材の育成、他企業との差別化など、企業のさまざまなベネフィットに繋がります。
経営理念やミッションが浸透する
クレドを設置する1つ目のメリットは、経営理念やミッションが社内に浸透することです。
日々の業務の中で、自社の商品やサービスの特徴、競合との違いは自然と把握できるようになります。しかし、創業者の想いや企業の社会的責任といった抽象的な理念は、意識的に共有しなければ伝わりづらいものです。
クレドは、抽象的な経営理念やミッションを具体的な行動指針として言語化する役割を担います。クレドを導入すれば、経営理念をより簡単に漏れなく従業員に伝えることができるのです。
さらに、従業員一人ひとりが「何を大切にして行動すべきか」を理解できるようになることで、判断や対応に一貫性が生まれ、コンプライアンスの遵守にもつながります。
従業員の行動指針が明確になる
クレドには、従業員の行動指針が明確になるというメリットもあります。抽象的な経営理念が、具体的なゴールや行動としてクレドに落とし込まれているからです。
さらに、クレドによって行動の基準や価値観が明確になると、従業員に「自ら判断し行動する力」が育まれます。個人の判断が求められる場面でも、クレドに従って、従業員が自分で考えて行動できるからです。行動指針が明確であれば、従業員の判断が企業理念から大きく外れることはありません。
このように、クレドを導入すれば、トップダウンに頼らず主体的に動ける組織へと変わっていきます。人材育成や業務の効率化にも繋がるでしょう。
企業のブランディングに寄与する
クレドを設置する3つ目のメリットは、企業のブランディングに寄与することです。
企業のブランドイメージは、所属する従業員の行動規範によって形成されます。従業員一人ひとりが会社の代表としての意識をもって行動することが、企業のブランディングや信頼に繋がるのです。
クレドによって統一された行動と価値観は、営業・広報・採用など、あらゆる場面で、企業の「らしさ」を支えます。ブランディングされた「その企業らしさ」は、競合他社との差別化に貢献するでしょう。
クレドを会社に導入するための4つの手順
クレド導入を成功させるためには、手順にそった計画的な行動が必要です。ここでは、クレドを会社に導入する流れを4つのステップで解説します。
- 手順1:クレドを定める理由と目的を共有
- 手順2:従業員にヒアリング
- 手順3:管理職以上の経営層と内容を把握
- 手順4:クレドカードなどのツールを配布
手順1:クレドを定める理由と目的を共有
クレドの導入にあたり、まずはクレドを定める理由と目的を明確にして、企業全体に共有する必要があります。クレドは、企業の顔として働く従業員一人ひとりが納得し、共感できる内容でなくてはならないからです。
まずは、企業としてなぜクレドを導入するのか、目的と期待される効果を明確にしましょう。
また、具体的な作成方法やスケジュールを決めておくことも重要です。スケジュールや運用計画を立てずにプロジェクトを始めると、導入までに時間がかかるだけでなく、形骸化や迷走のリスクがあるからです。
手順2:従業員にヒアリング
クレドを導入する目的と導入スケジュールが決まったら、従業員へのヒアリングに移ります。
「働くうえで大切にしている価値観」や「具体的な行動指針」をヒアリングすることで、実効性のあるクレドが生まれます。具体的なエピソードを集めれば、現場の生きた声がクレドに反映され、従業員のモチベーションも上がるでしょう。
企業の規模が大きく従業員の数が多い場合は、各部署や支店ごとにクレド作成プロジェクトの担当を設置し、従業員の声を集めていく方法が効果的です。
手順3:管理職以上の経営者層と内容を把握
収集した現場の声をもとに、クレドの大枠が決まります。
管理職以上の役職に就く社員は、大枠が決まったクレドの内容が、経営理念とマッチングしているかどうかを再度確認します。クレドの中に、企業の在り方や、将来のビジョンが落とし込まれているかしっかりと確認しましょう。
手順4:クレドカードなどのツールを配布
クレドが決定したらクレドカードを作成し、従業員一人ひとりに配布しましょう。クレドカードとは、クレドの内容が簡潔にまとめられたカードサイズのグッズです。
一部の企業では、クレドカードを常に身につける取り組みが行われています。クレドカードは従業員が業務中に携帯しやすいよう、コンパクトなつくりにするのがおすすめです。
クレドを効果的に導入した企業の事例
ここでは、クレドを効果的に導入した事例として、次の3つの企業をご紹介します。
- ザ・リッツ・カールトン
- 鳥貴族
- ジョンソン・エンド・ジョンソン
ザ・リッツ・カールトン
1つ目にご紹介するのは、高品質なサービスとおもてなしで有名な、大手高級ホテルチェーンの「ザ・リッツ・カールトン」です。
当ホテルには、【ゴールド・スタンダード】と呼ばれる企業理念と、その中核をなすクレドがあります。ゴールドスタンダードの中には、「紳士淑女をおもてなしする私たちもまた紳士淑女です」というモットーがあり、均一かつ上質なサービスが提供できるよう設計されています。
毎日の朝礼では、クレドの一文についてのディスカッションが行われます。これにより、従業員はクレドを深く理解し、具体的な行動に移せるようになるのです。
ザ・リッツ・カールトンが、多くの人を感動させる世界基準のサービスを提供できるのは、クレドの導入にあると言っても過言ではありません。
鳥貴族
2つ目にご紹介するのは、大阪・東京・名古屋を中心に展開する焼鳥屋チェーン「鳥貴族」です。鳥貴族は1985年の創業以来、「焼鳥屋で世の中を明るくしたい」「鳥貴族のうぬぼれ」を「永遠の理念」とし、「外食産業の社会的地位向上」を「永遠の使命」に掲げています。
鳥貴族には、これらの企業理念を詰め込んだ【鳥辞苑】と呼ばれる冊子が存在します。鳥辞苑には、経営理念の他に「鳥貴族の5大接客」「徹底的にこだわる理由とは?」などが書かれています。
鳥辞苑は、正社員からアルバイトまで鳥貴族で働く全ての人に配られ、理念の浸透に役立っています。
ジョンソン・エンド・ジョンソン
「バンドエイド」や「ベビーローション」で有名な「ジョンソン・エンド・ジョンソン」も、クレドの導入に成功している企業の1つです。
ジョンソン・エンド・ジョンソンには、1943年に三代目のロバート・ウッド・ジョンソンjrによって唱えられた【わが信条Our Credo】があります。以来、企業理念・倫理規定として、世界中に広がるグループ各社や社員一人ひとりに受け継がれています。
さらに、ジョンソン・エンド・ジョンソンでは、企業がクレドの責任を果たしているかどうかを、従業員が毎年評価することになっています。評価は管理職にフィードバックされ、必要に応じて何度も改訂を重ねつつ、創業当初の理念を継承しているのです。
クレドを導入する際の注意点
クレドの効果を最大限発揮させるためには、気をつけなくてはならないポイントがあります。ここでは、クレドを導入する際の注意点を3つお伝えします。
- 目的や意義を社員に共有する
- 行動に移しやすい指針にする
- 作って終わりにしない
目的や意義を社員に共有する
クレドを導入する際に気をつけたい1つ目のポイントは、クレドの目的や意義を社員に共有することです。
クレドの目的は、企業理念の共有と、それに沿った行動を従業員に促すことです。そのため、経営層からの一方的な押し付けにならないよう、従業員と考え方を一致させる必要があるのです。
共通の土台をもとに、クレドに沿った意思決定と行動が何よりも重要であることを、従業員に周知する必要があります。
行動に移しやすい指針にする
2つ目の注意点は、クレドを従業員が行動しやすい指針にすることです。ポイントは、「クレドがあるから仕事で●●を実践する」といった内容になるように作ることです。
仕事への取り組みや営業成績の事例など、実際にクレドに基づいた行動の事例があるとわかりやすくなります。
また、クレドが経営層の理想になりすぎていないかもチェックしましょう。従業員が「やってみたい」と思うような実践的な行動指針にすることが大切です。
作って終わりにしない
クレドはスローガンだからこそ、形骸化しやすいという注意点もあります。そのため、クレドカードを作成したり、定期的に社員研修でクレドを掲げて、意識付けを継続させる取り組みが必要です。
また、クレドに沿った行動で得た成果を企業全体で共有することや、定期的に従業員からフィードバックをもらう機会をつくることも重要です。
クレドを企業内に浸透させる方法
ここでは、クレドを企業に浸透させるための、次の3つの方法をご紹介します。
- 社員研修やワークショップを通じて学ぶ機会をつくる
- 社内報や企業SNSなどで定期的に紹介する
- クレドカードをはじめとしたツールを作成する
従業員がクレドに触れる機会を増やすための仕組みづくりがポイントです。
社員研修やワークショップを通じて学ぶ機会をつくる
クレドを浸透させる1つ目の方法は、社員研修やワークショップを通じて、経営理念やクレドについて学ぶ機会をつくることです。
クレドは経営理念や社訓、社是に通じるものであるため、新入社員研修はもちろん、管理者層に対する定期的なミーティングや研修で周知を徹底する必要があります。
クレドを深く理解するために、参加型のワークショップも効果的です。クレドの背景を経営陣が説明した後、少人数のグループに分かれて、クレドを日々の業務にどう生かせるかを話し合います。
社内報や企業SNSなどで定期的に紹介する
クレドを企業内に浸透させる方法として、社内報や企業のSNSなどで紹介する方法も効果的です。実際に従業員がクレドに取り組んだ実績があるとイメージしやすく、伝搬もしやすいのでおすすめです。
アナウンスは定期的に繰り返し行い、従業員がクレドに触れる回数を増やしましょう。
クレドカードをはじめとしたツールを作成する
クレド導入の手順でもお伝えしましたが、クレドを浸透させるには、クレドカードが効果的です。従業員が携帯できて、常にクレドを確認できるツールを作成し配布しましょう。
カードの素材やデザインにもこだわり、従業員が「大切にしたい」と思えるようなクレドカードにすることもできます。また、経営陣が従業員に直接手渡しすれば、経営層のメッセージと共に、クレドの重要性を伝えることもできるでしょう。
カードとは別に掲示用のクレドも用意し、オフィスのエントランスや会議室、食堂に掲示することもできます。外部の人の目に触れる場所に掲示すれば、クレドに対する意識の高さを企業外にもアピールできます。
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クレドは、企業の経営理念を具体化し、従業員一人ひとりの行動指針になるものです。クレドを導入することによって、企業の経営理念が浸透し、企業のブランディングにも繋がります。
また、クレドを浸透させるためには、定期的な発信やクレドカードの活用が欠かせません。
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