エンパワーメントとは?簡単&わかりやすく解説
エンパワーメントとは、個人や組織が自分の力を発揮し、自立して行動できるように支援することです。ここでは、エンパワーメントの意味や活用事例などの、基本情報を解説します。
- エンパワーメントの意味と語源
- ビジネスや教育現場での活用事例
- エンパワーメントとエンパワメントの違い
エンパワーメントの意味と語源
エンパワーメント(empowerment)の語源は、英語の「empower」という動詞です。
「empower」は「力を与える」「権限を付与する」という意味を持ち、日本語では「自立を促す」「自己決定力を高める」といった意味で使われています。
「empowerment」は「empower」の名詞形であり、つまり、人が自分の力で物事を決めて行動できるようにすることを指しています。
ビジネスや教育現場での活用事例
エンパワーメントの概念をより深く理解するには、実際にビジネスや教育の現場でどのように活用されているかを知ることが有効です。以下に代表的な事例を紹介します。
例えばビジネスの現場では、社員に決定権を委譲し、現場レベルでの改善提案や問題解決を促す取り組みがエンパワーメントにあたります。
具体的には、製造現場でスタッフ自身が生産プロセスの改善案を考え、実行できる環境を整えるケースや、営業チームがお客様の状況に応じて柔軟な対応をおこなえるよう権限を与えるケースなどが挙げられます。
教育現場においては、生徒が自ら学習目標を設定し、学習方法や進度を決めて学ぶスタイルがエンパワーメントの実践例です。教師が一方的に教えるのではなく、生徒が探究テーマや調査方法、発表形式などを主体的に決めていく「学習者中心の授業」が注目されています。
このように、エンパワーメントを取り入れた現場では、当事者の主体性や自発性が引き出され、組織や個人のパフォーマンス向上にもつながっています。
エンパワーメントとエンパワメントの違い
エンパワーメントとエンパワメントは、同じ意味を表す言葉です。単に表記の違いによるもので、どちらを使っても間違いではありません。
どちらの表記を見かけても、同じ概念を指していることを理解しておきましょう。
エンパワーメントが注目される理由とメリットとは
エンパワーメントが注目される背景には、以下のように、組織運営におけるさまざまな課題への対応が求められていることがあります。
- ビジネスでは迅速な判断が求められるため
- 社員個人の主体性を向上させるため
- リーダーシップを育成する必要があるため
- 社員のエンゲージメントを向上させるため
組織運営の課題に対し、エンパワーメントを導入することでどのような効果が期待できるのか、順番に解説していきます。
ビジネスでは迅速な判断が求められるため
エンパワーメントが注目される理由のひとつに、ビジネス現場で迅速な意思決定が求められることが挙げられます。
従来のピラミッド型組織では、現場で発生した問題に対応する際に上層部の承認を待たなければならず、判断の遅れが発生しがちでした。
しかし、エンパワーメントによって現場に権限を委譲すれば、スタッフがその場で適切な判断を下せるため、対応スピードが大きく向上します。
現場での判断を迅速におこなえる体制を整えることは、判断や対応の遅れによる機会損失を防ぐだけでなく、顧客満足度の向上や企業の競争力強化も期待できます。
社員個人の主体性を向上させるため
社員一人ひとりの主体性を引き出せることも、エンパワーメントを活用する大きなメリットです。
マイクロマネジメントのように細かく指示を出す管理方法では、社員は指示待ちの状態になりがちで、自ら考えて行動する機会が少なくなります。
一方で、エンパワーメントを取り入れて業務に対する裁量を与えると、社員は自主的に判断して行動するようになります。例えば、プロジェクトの進め方を自分で決められる、改善案を自由に出せるといった環境が整えば、仕事に対する責任感や達成感が高まっていくでしょう。
その結果、「自分の判断が成果につながった」という成功体験が積み重なり、やりがいやモチベーションが大きく向上します。
リーダーシップを育成する必要があるため
将来の組織運営を担う人材育成においても、エンパワーメントは欠かせない要素です。
若手や中堅社員がマネージャー候補として成長していくには、裁量を持って意思決定する経験が不可欠です。実際に自ら判断を下し、その結果に責任を持つことで、判断力や当事者意識が培われます。
このようなスキルは一朝一夕では身につかないため、小さな権限から段階的に委譲し、徐々にリーダーシップを養う仕組みが必要です。
早い段階からエンパワーメントの環境で経験を積んでもらうことで、将来的に組織を支える人材を計画的に育成できます。
社員のエンゲージメントを向上させるため
エンパワーメントは社員のエンゲージメント向上にも大きく貢献します。
常に上司の指示を待つような働き方や、「やらされている」と感じながら仕事をする環境では、社員の働きがいや達成感が得られにくくなります。その結果、組織への愛着が薄れ、モチベーションの低下や離職の増加といった悪循環を招きかねません。
一方で、自分の裁量で業務を進められる環境では、「自分がこの仕事を動かしている」という意識が芽生え、仕事への主体性や責任感が高まります。
こうした当事者意識がエンゲージメントの向上につながり、人材の定着や組織全体の活性化にも良い影響をもたらします。
エンパワーメントを高める注意点とデメリット
エンパワーメントを職場で活用する際には、いくつかの注意すべきポイントやデメリットも存在します。
- 施策が浸透しているか職場環境を逐一確認する
- 現場に任せきりにせず社員のフォローを実施する
- 従業員の権限委譲における向き不向きからポジションを決める
これらの注意点を意識し、適切な運用を目指しましょう。
施策が浸透しているか職場環境を逐一確認する
エンパワーメントの施策は、導入して終わりではなく、現場にしっかりと根付いているかどうかを継続的に確認することが大切です。
トップダウンで制度だけ整えても、実際の現場で活用されていなければ意味がありません。社員が日々の業務のなかでどのように感じているか、権限を活かして行動できているかなどを丁寧にヒアリングし、施策の実効性を定期的に確認しましょう。
形だけのエンパワーメントに陥らないよう、現場の声を重視した運用や改善が必要です。
現場に任せきりにせず社員のフォローを実施する
エンパワーメントは「任せること」であり、「放置すること」ではありません。そのため、社員に権限を委譲したあとも状況を見守り、必要に応じて支援できる体制を整える必要があります。
マネージャーやリーダーがサポート役となり、社員の声を聞きながら的確なフィードバックやフォローをおこないましょう。
特に、新しい権限を与えられた社員は、判断に迷ったり不安を感じたりすることが多くあります。社員が安心して自律的に行動できるよう、フォロー体制を整えることが、エンパワーメントを機能させるために欠かせません。
従業員の権限委譲における向き不向きからポジションを決める
エンパワーメントを導入する際は、社員一人ひとりのスキルレベルや経験年数、正確的な特性などを総合的に判断し、適切な役割分担をおこなうことが重要です。すべての社員に同等の権限を与えることが、必ずしも最適とは限りません。
例えば、経験豊富で判断力がある社員には大きな裁量を与え、新人や慎重な性格の社員には、付与する権限の範囲を段階的に広げていく対応を取るとよいでしょう。
画一的な運用ではなく、個々の適性に応じて柔軟に権限を委譲していくことで、無理のない形でエンパワーメントを進められます。
エンパワーメントを高めるには?効果的な進め方
エンパワーメントを高めるには、以下のような具体的な取り組みが効果的です。
- 自己肯定感を育てる習慣づくり
- コミュニケーション環境の改善
- 権限委譲と裁量のある環境づくり
- モチベーション維持を目的としたフィードバック方法
- 実施するゴールや目標の明確化・全体共有
これらの施策をバランスよく実践することで、社員の主体性や意欲が高まり、組織全体のパフォーマンス向上につながります。順番に見ていきましょう。
1.自己肯定感を育てる習慣づくり
自分の能力や存在意義に自信が持てない状態では、たとえ権限を与えられても、積極的に行動するのは難しくなります。
自己肯定感を高めるには、例えば「できたこと日記」をつけて小さな成功体験を積み重ねたり、チーム内でお互いの良い点や成長を認め合ったりするなど、日常的に実践しやすい習慣づくりが効果的です。
さらに、マインドフルネスや瞑想などを取り入れて、自分と静かに向き合う時間を持つことも、心の安定と自己理解を深めるうえで役立ちます。
2.コミュニケーション環境の改善
自由に発言しにくい職場では、エンパワーメントはうまく機能しません。もし職場のコミュニケーションに課題を感じている場合は、立場や職種に関係なく、誰もが意見を出しやすい環境や仕組みを整えることが必要です。
例えば、定期的な1on1ミーティングで社員の声を丁寧に拾ったり、誰でも参加できるオープンチャネルを活用して、情報共有しやすい環境を整えたりすると効果的です。
また、上司と部下の関係では、命令ではなく対話を重視することで、エンパワーメントの考え方が自然と組織全体に広がっていきます。
3.権限委譲と裁量のある環境づくり
コミュニケーション環境が整ったら、次のステップとして、権限委譲を通じて現場に裁量を持たせていきましょう。
権限を与えられることで社員は信頼されていると感じ、また、上層部に承認を得ずに現場で判断できるため、意思決定のスピードも向上します。
ただし、権限委譲は放任とは異なります。適切なサポート体制を整えるとともに、責任の所在を明確にすることが重要です。具体的には、役職やスキルレベルに応じて段階的に裁量を拡大し、小さな権限からはじめて徐々に範囲を広げていくとよいでしょう。
4.モチベーション維持を目的としたフィードバック方法
エンパワーメントでは、社員の行動や判断へのフィードバックも欠かせません。この際のフィードバックは、評価よりも成長支援を目的としておこなうことが大切です。
良い点と改善点をセットで伝える方法や、GROWモデル(Goal-Reality-Options-Will)を活用した質問形式のフィードバックが効果的です。
また、SBIモデル(Situation-Behavior-Impact)を使って具体的な状況と行動、その影響を明確に伝えることで、建設的な改善につなげられます。
改善点を指摘する際は、個人の人格ではなく行動に注目し、「自分はやればできる」という自己効力感を損なわないよう配慮することが大切です。
5.実施するゴールや目標の明確化・全体共有
エンパワーメントを効果的に機能させるには、チームとして目指すゴールや目標を明確にし、全員で共有することが重要です。目標がはっきりすると、社員一人ひとりが自分の役割を理解し、自律的に行動できるようになります。
OKR(Objectives and Key Results)やSMARTゴール(Specific-Measurable-Achievable-Relevant-Time-bound)などのフレームワークを活用すれば、具体的で測定可能な目標設定が可能です。
設定した目標は、社内報やチームミーティング、チャットツールなどで全体に共有し、進捗を見える化することで、メンバー全員が同じ方向を向いて取り組める環境が整います。
エンパワーメントの4つの種類と具体例
エンパワーメントには大きく分けて4つの種類があります。
- 個人のエンパワーメント(自己効力感)
- 組織・チームのエンパワーメント
- 福祉・看護介護業界のエンパワーメント
- 教育エンパワーメント
それぞれ適用される場面や目的が異なるため、違いや特徴を理解しておくことが重要です。詳しく説明していきます。
個人のエンパワーメント(自己効力感)
個人のエンパワーメントとは、「自分はやればできる」という自己効力感を高めることです。
自己効力感(self-efficacy)は、困難な状況に直面しても「自分ならできる」と信じる気持ちを指します。この感覚が高まると、誰かに頼らず自ら積極的に行動できるようになります。
例えば、知識やスキルを身につけるための研修に参加したり、自信をより高めるための自己啓発をおこなったりすることがこれにあたります。
組織・チームのエンパワーメント
組織やチームにおけるエンパワーメントとは、チーム全体が力を発揮できる状態をつくることです。
ポイントは、メンバー全員が「自分もチームに貢献している」という実感を持ちながら働ける環境を整えることです。自分の役割を理解し、自律的に行動できるチームは、自然と高い成果を生み出しやすくなります。
例えば、プロジェクトチームにおいて、各メンバーの専門性を活かした役割分担をおこない、定期的に情報を共有しながら進めるスタイルがこれにあたります。
福祉・看護介護業界のエンパワーメント
福祉・看護介護業界におけるエンパワーメントとは、社会的に少数派や弱い立場にある人々が、自らの力を発揮できるよう、制度や仕組みを通じて支援する取り組みを指します。
例えば、女性の職場復帰を支援するスキルアップ研修や、障がい者の自立を促す就労支援施設での訓練プログラムが該当します。また、高齢者が地域で安心して暮らすための介護予防教室の開催や見守りネットワークの整備などもよい例です。
こうした活動を通じて、支援を受ける側が受け身になるのではなく、自分らしく社会に関わる力を取り戻していくことが期待されています。
教育エンパワーメント
教育エンパワーメントとは、知識を一方的に教えるのではなく、学習者が自ら学ぶ力を育てることを重視する教育のあり方です。
従来のように「教師が教え、生徒が覚える」といった受け身の学習ではなく、生徒自身が主体的に学び、考え、課題を解決する力を育てることが目的とされています。
代表的な手法として、探究学習やアクティブラーニングが挙げられます。これらは、学習者が自ら問いを立て、対話や調査を通じて理解を深めていくアプローチであり、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験などの育成に重点を置いています。
知識の習得だけでなく、学ぶ過程そのものに主体性を持たせる点で、教育エンパワーメントの理念に沿った取り組みといえるでしょう。
エンパワーメントに関するよくある質問
エンパワーメントについて、よく寄せられる質問をまとめました。実際の導入や実践を検討する際の参考にしてください。
エンパワーメントとモチベーションの違いは?
エンパワーメントとモチベーションは、どちらも人の行動を促す要素ですが、その意味や働き方は異なります。
モチベーションは「やる気」や「意欲」を指し、主に報酬や評価など外部からの刺激によって高まる感情です。
それに対してエンパワーメントは、「自ら行動する力」を意味し、個人が本来持っている能力や意志を引き出して、内側から主体的に動けるようにすることを指します。
つまり、モチベーションは外からのきっかけ、エンパワーメントは内からの力によって行動を後押しするものです。
日本企業のエンパワーメントに関する課題は?
日本企業でエンパワーメントを進めるうえでの課題は、上下関係が強く、年功序列が根づいた組織文化です。意思決定が上層部に集中しており、現場の社員が自分で判断して動く機会が限られています。
さらに、失敗を許さない風土も障壁となっています。失敗を避けることが優先されるため、社員が主体的に行動したり、新しいことに挑戦したりしにくい状況です。
個人の裁量が大きく、失敗を成長のチャンスと捉える文化を持つ外資系企業やスタートアップなどと比べると、日本企業ではエンパワーメントが浸透しにくい体質が残っているといえるでしょう。
企業のリーダーが意識すべきポイントを教えてください
エンパワーメントを成功させるために、企業のリーダーが特に意識すべきポイントは以下の5つです。
- 部下との信頼関係を築く
- 適切な権限移譲をおこない、判断の機会を与える
- 定期的なフィードバックを通じて成長を支援する
- 失敗を学習機会として活かせる環境を整える
- 役割や目標を明確にし、チームで全体像を共有する
なにより大切なのは、リーダー自身が率先して変化を示す姿勢です。部下を管理するのではなく支援する役割として行動することが、エンパワーメントの文化を根付かせることにつながります。
まとめ
エンパワーメントとは、個人や組織が本来持っている力を引き出し、自律的に行動できる状態をつくることです。
本記事では、エンパワーメントの意味をはじめ、活用事例や注意点、効果的な進め方を解説してきました。現代のビジネス環境では、これまで以上に迅速な判断力や主体性が求められており、エンパワーメントの重要性も高まっています。
Cultiveでは全社総会や表彰式などの社内イベントや、エンゲージメント向上につながる文化施策を幅広くサポートしております。
目には見えづらい会社の“らしさ”をカタチに変えて、メンバーと分かち合えるようなストーリーを持たせて企画をご提案。
施策やイベント開催に不可欠なデザインや映像などのクリエイティブ制作から当日運営までフルサポートいたします!
会社の“らしさ”が心に宿り、行動に変わり、成長を支える“強み”に変わるまで…。
Cultiveは企業の文化醸成パートナーとして伴走いたします。
「会社や仲間を誇りに思えるようになってほしい」「理念を体現行動につなげたい」
そのような課題感を抱えている方はぜひお気軽にご相談ください。