「世界をエンターテインする。クリエイターと共振する。」をミッションに掲げ、ゲームやコミックを主軸に事業を展開する株式会社アカツキ。「夜明け」を意味する社名には「全ての人が笑顔で明るい社会を実現したい」という願いも込められていますが、それは社会だけでなく自分たちのチームに対しても同じです。
一人ひとりが経済成長を追いつつも、ワクワクして自分らしく働けるチーム作りを創業時から大切にしてきたアカツキには、企業の文化醸成に関する独自の哲学や具体的な施策がたくさん存在しています。そこで今回は、アカツキでカルチャー推進を専任で行うチームのCulture部のリーダーを務める小能拓己さんと、そこで数々の施策の運用を担う髙崎佑太さんにお話を伺いました。
株式会社アカツキ:https://aktsk.jp/
目次
「文化」は耕し、実るもの。企業文化を構築する重要性とは?
―先日、とある方から「企業文化ってわざわざ作るものなのでしょうか?」と質問されたんです。その方曰く、文化は自然と生まれるもので、意図的に会社のビジョン・ミッションと紐づけた文化の醸成を図る必要性をあまり感じないとのことでした。「この問いにどうお答えになりますか?」というところからインタビューを始めさせてください!
小能:すでに良い文化が自然と生まれていて、かつ成果も出ているのなら、現時点では問題ないかもしれないですね。ただ、これは私たちにも言えることですが、フェーズによっては文化醸成の必要性が高まる場合があると思っています。そのひとつが企業の成長に伴って「メンバーが増える」ことによるものです。例えば、2020年以降に入社した人がそれ以前のメンバーの2倍もいる会社では、これまでメンバーが大事にしてきた価値観が社内では瞬く間にマイノリティになる場合もあります。他にも「市場環境が絶え間なく変わる」ことも大きいです。変化に合わせて自分たちの強みを磨き続けないとあっという間に取り残される時代だからこそ、チームがどんな価値観を持っているか、どんな行動や意思決定を支援するか、健全な関係性のなかで適切に物事を進められるか、といった組織運営よって最終的に生み出されるものは大きく変わります。良い成果を出す良いチームを育みたいときに、組織文化に投資する意味が生まれると私自身は捉えていますね。
―そういった変化に伴って、企業文化を醸成することの重要性が高まるということですね。
小能:企業の「風土」や「文化」という言い方がありますよね。語源レベルまで遡ると「風土」は風であり土なので「自然にそこにあるもの」という意味合いが強いと思います。メンバーの一人ひとりが自然と大事にしていることや感じていることでしょうか。対して、「文化」を意味するカルチャーの語源は「耕す」から来ています。放っておけば農作物がならない土地でも、意図を持って耕すことで果実が実ることがありますよね。その土壌づくりが「文化」だと思っています。企業の話に戻れば、自然状態のままでは生まれない成果をチームで生み出すためには土壌を耕すことが大事で、企業文化の重要性を考える上ではそのあたりにヒントがあるような気がするんです。
組織体制や時代の変化に合わせたアップデート
ミッション・コアバリューを2階層に分けて捉える
―アカツキも創業から10年以上が経ち、従業員数も数百人規模へと拡大していますよね。そのなかでどうやって企業文化を育んできたのか、具体的な施策を教えていただきたいです。
小能:そもそも、共同創業者である塩田と香田の組織観や人間観がアカツキのルーツにあります。ビジネスとして財務上の利益を生むことだけでなく、関わる人が幸せになるような組織の空気感も大事にしたいというのが創業時の想いです。そのため、当初から短期で成果を出すこと以外の時間も大切にしていましたね。例えば、年に1回沖縄へみんなで行って未来を語り合ったり、3ヶ月に1回は全社で合宿を行って「緊急ではないが重要なこと」に向き合ってディスカッションを重ねたり。他にも、新メンバーを歓迎するマンスリーパーティーや、部署横断でチームを組んで社内貢献活動も実施してきました。数字に表れにくいものへの投資は創業当初から組織運営に組み込まれていたように思います。数年後も質の高い仕事ができるためのメンバー成長や、立場を越えて協力しあう相互理解をベースにした「つながり」などへの投資が主にされていました。
―アカツキに入社したときに驚いたことはありますか?
小能:いくつもあります(笑)。例えば、認知の範囲が広くて深い人がたくさんいることに最初はびっくりしました。前職までは「WHY」から考えなくとも「WHAT」と「HOW」の部分を考えていればだいたいの仕事が出来ていたのですが、当時のアカツキのフェーズでは「なぜやるのか?」という「WHY」から議論することばかり。自分たちが何を大事にしたいのかを深く考える機会ばかりで鍛えられました。
―アカツキでも2020年ごろにミッション・コアバリューのアップデートがありましたよね。その背景はどういったものだったのでしょうか?
小能:事業領域によってそれぞれが願う成果も、それを生み出すための企業文化の性質も異なりますし、時代に応じた変化も必要だと判断したためアップデートを行いました。ミッション・コアバリューのアップデートでは、カルチャーの捉え方を明確に2階層に分けましたね。1層目がアカツキのグループが全社共通で大事にしたい社会、組織、人の捉え方の基礎となる部分。以前は「アカツキハート」として運用していたものですが、ここは引き続き大事にするものとして、あえてミッション・コアバリューからは切り離したんです。アカツキ全体で変わらず大切にしたいことを1層目に残しつつ、2層目にはグループ各社で大切にしたい価値観を定めています。
カルチャーは伝達して終わりではなく、運用するもの
―アカツキはカルチャー醸成を推進する専任チームがありますが、専任だからこそできていると感じることはありますか?
髙崎:カルチャー作りは誰かがやらなきゃいけないと思っていても、通常業務があると着手することがなかなか難しい領域なため、専任チームの意味はそういうところでも感じます。ただ専任チームが文化を作って成果物を社内に提示するというよりは、作るのはメンバーそれぞれであって、私たちは様々な声を集めながらそれを推進する役割だと思っていますね。
小能:カルチャーを「伝達する」ものではなく「運用する」ものであると考えたときに、やるべきことが無数に増えるんですね。「大切にしたいことを言葉で定義しました」と伝達すれば数年後に願った成果を得られるかと言えばそうではありません。事業も働く人自身も変化していくなかで、そこに込められた願いが適切に成果に繋がるためにはチューニングが必要。でも運用することは兼任では難しい部分があるのではと思っています。さらに、運用したものを日常のなかで深めていく「深化」も大事です。カルチャーの領域を専門的に見て、施策の振り返りをしながら、機能するように深めていくことを考えると、専任チームの存在意義はあるのではないかと思います。
―ありがとうございます。最後に、定量的な評価がしづらい領域だと思いますが、お二人はどんなことを意識してカルチャー推進に向き合っているのか伺いたいです。
髙崎:おっしゃる通り数値面での目標は立てにくいですね。ただ、メンバー同士でチームの枠を超えた交流が生まれたり、コミュニケーションのきっかけになったりする施策ができると運営側としては嬉しさを感じます。それが全社的に広がっていくと、困った時に助け合える関係性が生まれたり、いずれ大きなプロダクトが生まれることに繋がったりもするのではないかと思っています。
小能:短期で言えば、施策の参加者一人ひとりが好意的にその場を受け止めているのかを意識して見ています。忙しいなかで確保した時間が辛いものではグループや会社との心理的な距離感はどんどん遠くなっていくんですよね。その積み重ねは無視できないものだと思っています。そして中期的な視点になると、その場で得られた気づきや人との繋がりが普段の現場の意思決定や行動、判断軸などに反映されているのかを見ています。現時点ではサーベイスコアなどで判断するのではなく、施策後にでてくる意見や、日報や雑談、各種オープンチャンネルの発言などからみえる定性的なものに着目しています。カルチャー醸成では、イベントで何かを伝えたら終わりではなく、描きたい成果に向けて組織内に引力を働かせることが大事。蒔いた種の全てが花開くと限りませんが、その先に組織としての成熟・成長があると考えています。効果は見えづらいものですが、中長期的には、アカツキで働く人たちが自身の人生にプラスの価値があると感じられる基盤がここにあると感じられるようなグループにしたいと思っています。
―「文化」を耕し、芽吹かせることの重要性をあらためて感じました。本日はありがとうございました。
株式会社アカツキ
Support Functions部 culture課 課長 / 小能 拓己(おのう たくみ)さん
神戸大学国際文化学部コミュニケーション学科卒業後、2009年大手インターネットリサーチ会社に就職。
広報・営業等の業務を経て、2014年アカツキに入社。
マーケティング、新卒採用、広報、社内コミュニケーション、組織文化推進等に従事。幸福をベースに組織文化醸成を支援する。Delivering Happiness Japan 公認コーチサルタントとしても活動。
Support Functions部 culture課 / 髙崎 佑太(たかさき ゆうた)さん
靴・眼鏡の小売・販売業において、2005年より2社を通じ、店舗経営全般、商品担当、新人育成などに従事。
2019年アカツキに入社。
全社カンファレンス、全社定例、各種コミュニケーション制度やメディアの運用担当として一貫して文化醸成業務に従事。
Cultive
Cultiveは幸せに働ける良質な企業文化を醸成することで、企業成長をサポートするために生まれたサービスです。経営者の想いを表した理念策定、理念を込めたグッズ制作、表彰イベントの設計などを行い、企業文化の醸成をサポートしています。
この記事を書いた人
小名木 直子
Producer
オリジナルウェディングのプロデューサーとして多くのイベント企画に携わる。小人数〜200人規模のイベントを得意とする。職場の中でどれだけ心が動く瞬間があるかで人生の幸福度が変わることを実感し、多くの人にCultiveのサービスが届くようWEBサイトの監修も担う。
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