競合他社が乱立している市場において、自社の独自性を周知することは重要な経営戦略と言えます。SNSの普及などにより、比較的簡単に発信チャンネルを持てるようになった現代において、コーポレートブランディングの需要も高まっています。オリジナルなコンテンツを、自発的かつタイムリーに発信することで、自社のブランド価値の向上やユーザーファン獲得の効果も期待できます。しかし、いざ自社のブランディングを進めようとしてもどのように推進していいか分からないとお困りの方も多いのではないでしょうか。
この記事ではコーポレートブランディングの基本的な知識と代表的な成功例をご紹介いたします。
コーポレートブランディングの推進を検討中の方の参考になりますと幸いです。
なお、コーポレートブランディングと並走して行われる社内向けのインナーブランディングについてはこちらで詳しくご紹介しています。
目次
コーポレートブランディングとは?
コーポレートブランディングとは、企業のブランド価値を向上・確立するために行う取り組みのことです。他社との違いや自社の独自性、強みをアピールし、周知することを目的としています。アピールする対象としてユーザーやステークホルダーだけでなく、自社の社員や社会全体も含まれることが大きなポイントとなります。社会における自社の存在価値をアピールすることで、顧客ファン獲得を狙うだけでなく、社内における意識改革や文化改善を促す効果があります。
製品・サービスブランディングとの違い
コーポレートブランディングは、製品・サービスのブランディングとは主旨が異なります。製品やサービスを周知するプロダクトブランディングは、特定のユーザー層にマーケティングをする目的で行われるものを指します。そのゴールは製品・サービスの周知と売上促進にあり、短期間でのブランディング活動を指します。
一方で、自社のブランド価値訴求を目的としたコーポレートブランディングは長期間に渡ります。5年先、10年先の自社の未来像、ときには数十年先に自社が発揮していたい価値を思い描きながら行われます。
前述した通り、コーポレートブランディングの目的は自社のブランド価値を向上させ、社内・社外を問わずに広く周知させることです。そのため、自社が貢献したい社会課題や生み出したい未来社会を起点に考えることが重要です。「この企業を応援したい」「ここで働いて力になりたい」と思ってもらえるようなメッセージ性を内包できるように考えましょう。
Appleはこうして世界No.1の企業になった
ブランディング戦略の成功例として第一に挙げられるのはApple社ではないでしょうか。製品におけるデザイン性や機能性において、世間からも高い評価を得ており、「Apple製品だから買う」という固定ファンも少なくありません。Macシリーズ、iPhone、iPadなどの様々な製品を開発しており、各デバイス間で連携できるエコシステムを展開することで絶大なシェアを誇っています。
Apple社はどのような戦略でここまで上り詰めたのか、そのポイントをご紹介いたします。
Appleはコーポレートブランドランキング10年連続世界No.1
世界最大規模のブランディング会社であるアメリカ・インターブランド社が、2022年に発表した「世界企業ブランドランキング」でApple社が首位となりました。これは世界的ブランドの収益性・価値・カリスマ性などを総合的に分析し、企業のブランド価値を金額換算してランキングしたものです。
2000年から続けられてきたこのランキングで、Apple社は10年連続首位という驚くべき成績を残しています。
これは、世間がいかにApple社のブランドを高く評価しているかという結果であるとも言えるでしょう。
Apple のブランド戦略
Apple社はいかにしてここまで自社ブランドを高めることができたのか。そのブランディング戦略の特徴をいくつかご紹介します。
ストーリー性
ブランド戦略において「ストーリー」はもっとも重要な要素のひとつです。大衆が映画やテレビドラマを愛するように、多くの人が小説や漫画を欲するように、人は物語を求める生き物だからです。
人はモノに心ときめくことはあっても感情移入することはできません。感情移入し、継続的に応援したいと思えるのは、そのモノが持つストーリーに触れたときです。
そのことを理解していたからこそ、Apple社の創業者であったスティーブ・ジョブズは、ブランディング戦略にストーリーを組み込んでいました。
1997年に放映したCM「Think Diffrerent」では、アインシュタインなどの”クレージー”と呼ばれた偉人たちを登場させ、「世界は変えられる」というメッセージを唱えました。このとき、Apple社はマイクロソフト社との戦いに敗れ、多額な赤字決算が続いている時期でした。それでも彼は、「世界を変えられるのは、変えられると本気で信じている者だけだ」というストーリーを伝えたのです。
スティーブ・ジョブズのストーリー戦略は、最初のiPhone発表の場にも活かされています。プレゼンの名手として知られる彼の手法は、常に物語を伝えることを主眼に置いています。製品の利便性や機能性を伝える前に、その製品がこれから起こすであろう革命を説明したのです。それによって聴衆の期待と好奇心は一層高まり、大きな期待感を持って新製品を受け入れるのです。現在見られるようなiPhoneの絶大なシェア獲得の背景には、ジョブズの巧みなプレゼン構成が一助となっていると言えるでしょう。
企業活動やプロダクトにストーリーを持たせることの効果を彼はよく理解していて、誰よりも賢くそれを実践していました。そして、その手法は現在のApple社でも受け継がれているのです。世間はApple製品の利便性をただ求めているのではなく、そのストーリーや一貫性に対して好感を持っているからこそ、その製品を手にしたいと願うのです。
独自性
「Appleの製品」と聞いて、あのリンゴマークを想像する人は多いのではないでしょうか。また、製品デザインにおいても、あのボタンの少ない、もしくは全くボタンがない洗練されたデザインを思い浮かべる人も多いと思います。
今でこそ当たり前のことになりましたが、最初のiPhoneが発表された当時は、これは革命的なデザインでした。それまでの携帯と言えば、操作や機能を実現するためのボタンが何十も配置されているのが当然でした。その中で、Apple社の追求したデザインは、他社と比較したときの独自性を強調することとなりました。また、ボタンを排除した独自の製品開発は、タッチパネルによる操作という現代では当たり前になった技術革新にも繋がったのです。
このように、企業や製品の独自性を追求することは、ひいてはオリジナルな成長を遂げるきっかけにもなり、他社にはない強烈な個性と強みとなって認知されていくことになります。
UIデザイン
前述の通り、Apple社はシンプルな製品デザインを特徴としています。洗練されたその外見はユーザーを魅了するだけでなく、そのデザインそのものが「Appleの製品」という名刺代わりになるほど認知されました。しかし、それだけではApple製品はここまで支持されなかったでしょう。
洗練されたデザインの中にあるUIの高さ、つまり、操作性の高さが追求されていたからこそ、Apple製品は多くの人に受け入れられたのです。
例えば、画面の一番下までスクロールした際に、画面がゴムのように上に戻る「ラバーハンドスクロール」が例として挙げられます。これにより、画面の端まで到達していることがユーザーに直感的に分かります。また、誤って触ってしまった際にすぐに元のページに戻れる「ジェスチャーデザイン」も、ユーザーが直感的に操作することを可能にしています。
実際の操作性、使用感に至るまでデザインを追求すること。そのために必要な新技術を開発すること。こうした飽くなき探究心が込められていることも、人々がApple製品を信頼する一因となっています。
製品エコシステム
もともと「生態系」を意味するエコシステムは、ITやビジネスの分野では「業界や製品が連携し合って大きなシステムを形成すること」という意味で使われます。その代表的な例として挙げられるのがApple製品です。Mac PC、iPhone、Apple Watch、AirPodsなどのApple製品は互いに連携してシームレスな機能を形成しています。こうしてAppleは、自社製品独自のシステムを提供すると同時に、多種に渡る同社製品をユーザーが所有する意義を強めています。
実店舗の立地・内装・サポート体制
Appleの実店舗であるApple Storeは、2018年時点で世界500店舗以上に展開されました。この時点で、アメリカでの床面積あたりの売上額は、ティファニーなどを引き離して1位を獲得しています。小売業界が不振に悩む中、Apple Storeがこの快進撃を遂げられた理由にも、同社のコーポレートブランディングが大きく影響しています。
街のメインストリートに建てられた店舗はいずれも同社のデザインを反映して洗練された造りになっており、そのミニマリズムなデザインは製品イメージとも直結して企業ブランディングの効果を上げています。また、製品のUIを訴求できる体験型店舗であることで、プロダクトの独自性を伝える場としても機能しているのです。
コーポレートブランディングの基礎的知識とApple社の事例、いかがでしたでしょうか。
Apple社の例からも分かる通り、企業のブランド力とは上質な製品開発だけではなく、会社の持つストーリーの訴求から始まります。そのストーリーをメッセージとして打ち出し、製品やサービスに込めることで、企業の目指す未来像や社会的価値を訴求することができます。
コーポレートブランディングの強化を思案中の方の参考になりますと幸いです。
この記事を書いた人
小名木 直子
Producer
オリジナルウェディングのプロデューサーとして多くのイベント企画に携わる。小人数〜200人規模のイベントを得意とする。職場の中でどれだけ心が動く瞬間があるかで人生の幸福度が変わることを実感し、多くの人にCultiveのサービスが届くようWEBサイトの監修も担う。
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