タウンホールミーティングとは?意味や概要
タウンホールミーティングは、経営陣と社員が直接コミュニケーションを取るための社内イベントです。
その開催にはさまざまな目的が付随しますが、代表的なものとしては以下のような事柄を目的として開かれます。
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経営方針やビジョンの共有
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会社の現状や業績報告
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今後の戦略や重点施策の説明
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メンバーからの質問やフィードバック受付
このように、今後会社が目指していく方向性や思想をメンバーに共有し、現場からの疑問や懸念点を交換し合うことで、組織の一体感を高め、目的意識を統一して成長していくために開かれるものになります。
また実施方法も柔軟であり、以下のように開催されるケースが多いです。
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会議室やホールなどの、対面型(リアル開催)
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Web会議システムなどを活用した、オンライン型
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対面とオンラインを併用した、ハイブリッド型
企業の規模や社内文化にあわせた形式が選ばれています。
タウンミーティングとの違い
「タウンホールミーティング」と「タウンミーティング」は似た名称ですが、目的や対象者が異なります。
タウンミーティングは、主に地域社会や自治体でおこなわれ、行政と住民が地域の課題について話し合う場です。
一方で、タウンホールミーティングは企業内で開かれ、経営陣と社員が会社の方向性や課題について意見を交わす場になります。
地域コミュニティのための集会である点と、企業内のコミュニケーションやエンゲージメントを促進するための取り組みというのがこのふたつの大きな違いになります。
タウンホールミーティングを実施する3つのメリット
では、このような機会を設けることでどのようなメリットがあるのでしょうか?
以下に、その代表的な例を3つ紹介します。
- 社員に企業理念やビジョンが浸透する
- 社員のエンゲージメントが向上する
- 現場の課題を把握し、迅速な改善が可能になる
詳しく見ていきましょう。
社員に企業理念やビジョンが浸透する
タウンホールミーティングでは、経営陣が会社の方向性を直接社員に伝えられるため、社員は会社の目指す姿や意思決定の背景をより深く理解できます。
また、質疑応答を通じて疑問を解消することもできるため、理解も深まります。
このような対話が継続的におこなわれることで、経営陣と社員の認識のズレが少なくなり、組織全体の一体感が生まれます。
社員のエンゲージメントが向上する
普段の業務の中では会社の目指す方向性や方針について、社員と経営陣が話し合う機会はそう多くはありません。
このような場で経営陣の考えや価値観を知ることで、メンバーと会社の心理的距離が縮まって帰属意識が高まることが期待されます。
また、会社が目指している未来像やミッションについて深く話し合うことで、自分の業務との接続もイメージできるようになり、より「自分ごと」として取り組みやすくなることも期待できます。
現場の課題を把握し、迅速な改善が可能になる
現場の声が経営陣の耳に直接届くことで、通常の会議や報告書では伝わりにくい細かな課題や、社員の率直な意見が把握しやすくなります。
経営陣が社員の意見に耳を傾けていることが伝われば、社員も積極的に改善提案をしやすくなるでしょう。このように、経営陣と社員の相互理解が進むことで、今ある課題をみんなで共有し合うことができ、それについての解決策を話し合えたり、新しい連携フローを生み出すきっかけにもなり得ます。
タウンホールミーティングの実施方法
ここでは、タウンホールミーティングを実施する際の、事前準備と当日の進行におけるポイントを紹介します。
- 目的とゴールを明確化する
- 参加者を選定する
- 議題を決定する
- 日程と会場の調整をおこなう
- 開催を周知する
- 参加しやすい雰囲気をつくる
- 質疑応答の時間を確保する
- フィードバックを収集し、決定事項を共有する
これから開催を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
タウンホールミーティングの準備5ステップ
開催前の準備は、5つのステップに大きく分けられます。
1.目的とゴールを明確化する
まず、タウンホールミーティングの開催で達成したい目標を設定します。社員のニーズや課題に沿った目的を定めましょう。
例えば、「経営方針を浸透させてエンゲージメントを高める」や「現場の意見を経営に反映させる」などの具体的な目標を立てます。
明確な目的を設定することで企画や手順に一貫性が生まれ、期待していた成果を得られる可能性が高まります。
2.参加者を決定・選定する
次に、参加者の範囲を決定します。
ミーティングの目的や規模に応じて、全社員を対象とするか、特定の部署や役職に限定するかを検討しましょう。
希望者や対象者が多く、参加者の選定が必要な場合は、異なる部門や役職からバランスよく選ぶことで多様な視点を取り入れられます。
3.議題を決定する
主要なテーマや具体的な議題を決めます。開催の目的に合わせて、必須で伝えるべき項目やみんなで話し合うべき話題なども振り分けておきましょう。
事前に社員から意見や質問を募り、それらを踏まえて設定すると、社員が関心を持ちやすい内容になります。
4.日程と会場の調整をおこなう
開催方法を決め、それに応じた準備を進めます。
開催の目的や参加範囲に合わせて、対面やオンライン、ハイブリッドなど、状況に合わせた形式を選びましょう。
オフライン開催の場合は、会場の予約やアクセス方法の確認、当日の会場設営などが必要です。
オンライン開催の場合は、TeamsやZoomなどのツールを活用し、安定した通信環境を整えることが重要です。
5.開催を周知する
タウンホールミーティングの開催情報を社内に共有し、参加者を募ります。
社内メールやSNS、ポスターなどを活用し、日時・参加方法・目的を明確に伝えましょう。
多くの社員が積極的に参加できるよう、事前の周知を徹底することが大切です。
タウンホールミーティングの進行3ステップ
ミーティング当日には、以下の3つの点に配慮しながら進行しましょう。
6.参加しやすい雰囲気をつくる
せっかく全員で集まっても、経営陣から一方的に情報を伝える場になってしまっては組織の活性化は望めません。
アイスブレイクや司会からの挨拶で、参加者が素直な意見を出しやすいような雰囲気づくりを心がけましょう。
また、経営陣が率先して親しみやすい態度で接することで、参加者の緊張がほぐれ、活発な意見交換につながります。
7.質疑応答の時間を確保する
参加者からの質問や意見を受け付け、経営陣が回答したりみんなで考える時間は十分に確保しましょう。
また、事前に質問を募集しておくことで、より多くの意見を反映しやすくなり、進行もスムーズになります。
8.フィードバックを収集し、決定事項を共有する
会の終了後は、アンケートやインタビューを活用して参加者の意見を収集するようにしましょう。
共有された方針や会社の理念についてどう思ったか、情報共有に過不足はなかったか、全体の進行の中で気になる点はなかったか。
さまざまな意見を回収しておくことで今回の効果を測定することができ、今後の開催へのノウハウを溜めることもできます。
また、ミーティングで決定した内容を全社に共有し、その後の進捗状況も報告する体制を整えましょう。
オンラインでタウンホールミーティングを開催するポイント
もし、オンラインでの開催を検討している場合は、以下の3つのポイントに注意する必要があります。
- 双方向のコミュニケーションを意識する
- 安定した通信環境を確保する
- メリハリのある進行を意識する
それぞれ詳しく説明します。
双方向のコミュニケーションを意識する
オンラインでのこうした共有会は一方的な情報発信の場になりがちです。
しかし、一方的なコミュニケーションが長時間続いてしまうと集中力も途切れ、伝えるべき内容やメッセージも受け取られなくなってしまいます。
そのため、オンラインで開催する場合には参加者の意見を積極的に引き出す工夫が必要です。
例えば、チャット機能やリアクションボタンを活用して、参加者が気軽に意見を表明できる環境を整えましょう。
また、事前に質問を募集し、リアルタイムでも意見を取り入れることで、より活発な議論が促進されます。
さらに、投票機能を使って参加者の意見を即座に集計して共有することで、参加者の関心を高めることも期待できます。
安定した通信環境を確保する
オンラインでの集会では、通信トラブルが起こらないよう十分に配慮する必要があります。
接続が途切れたり音声や映像が乱れたりすると、参加者の集中力が切れてしまうだけでなく、満足度の低下にもつながります。
事前にリハーサルをおこない、音声や映像のチェックを徹底しましょう。より安定した通信環境を整えるために、有線接続を使用する方法もあります。
また、参加者に対しても、安定した通信環境で参加するように周知しましょう。
メリハリのある進行を意識する
オンラインでは、対面よりも参加者の集中力が続きにくいため、メリハリのある進行が求められます。
例えば、対話型の形式を取り入れ、一方的な説明が続かないようにしましょう。
また、適度に休憩を取り入れ、参加者がリフレッシュする時間も確保します。
さらに、スライドや動画を効果的に活用して視覚的な変化を加えるなど、参加者を飽きさせない工夫も大切です。
タウンホールミーティングでの質問例
タウンホールミーティングでは、社員が経営陣へ直接質問する機会が持てます。
以下に、3つのカテゴリに分けて質問例を紹介します。
- 経営方針や戦略に関する質問
- 人事や組織に関する質問
- 現場の課題感についての質問
実際の場面では、これらを参考にしつつ、自身の関心や開催目的に即した質問をしましょう。
経営方針や戦略に関する質問
経営方針や戦略に関する質問は、会社の将来像を理解するうえで役立ちます。
<質問例>
- 現在会社が直面している主な課題はなんですか?
- 競争が激化する市場環境のなかで、当社が差別化を図るためのポイントはなんですか?
- 今後の事業展開や新規プロジェクトの予定について教えてください
人事や組織に関する質問
人事や組織に関する質問は、自身のキャリア形成や働き方に直結する重要なテーマです。
<質問例>
- 社員の成長機会を増やすために、研修や支援制度を強化する予定はありますか?
- リモートワークやフレックスタイム制度の今後の方針はどうなりますか?
- 社員のキャリア育成や昇進の仕組みについて教えてください
現場の課題感についての質問
これらは、日々の業務改善につながる身近なテーマであると同時に、現場のメンバーと経営陣の認識を合致させるものでもあります。
<質問例>
- 現場での業務効率を向上させるために、新しいツールやシステムの導入予定はありますか?
- 人手不足が課題となっている部門への支援策や改善計画はありますか?
- 現場の負担軽減のために、業務プロセスの見直しや自動化の取り組みは進んでいますか?
タウンホールミーティングの失敗例と対策
最後に、よく見られる3つの失敗例と、その対策について解説します。
- 質問が出ない
- 形式的なイベントになってしまう
- 参加者の関心が低い
これらの問題を未然に防ぎ、有意義な会となるように準備をしましょう。
質問が出ない
質疑応答の時間に誰からも質問が出ないのは、よくある課題のひとつです。主な原因は、発言しにくい雰囲気や、議題に対する関心の低さです。
対策としては、事前に質問を募集し、匿名で投稿できる仕組みを用意すると効果的です。
オンラインの場合は、チャット機能やリアクションボタン、投票システムを活用して、気軽に意見を表明できる場をつくりましょう。
また、ファシリテーターを配置して進行をサポートすることで、参加者の発言を自然に引き出せます。
形式的なイベントになってしまう
会社側からの一方的な説明だけで終わり、参加者の意見が反映されないままだと「形だけのイベント」と受け止められてしまいます。
その結果、今後の参加意欲が低下するだけでなく、ひどいときには組織に対する信頼感の減少にもつながりかねません。
こうした形骸化を防ぐには、社員の声をもとに内容や進行を見直し、グループディスカッションやリアルタイム投票など、参加型の工夫を取り入れることが効果的です。
また、経営陣が社員の意見を真摯に受け止める姿勢を見せることも、会の成功、ひいては組織のエンゲージメント向上には欠かせないポイントです。
参加者の関心が低い
議題が参加者にとって身近でなかったり、以前取り上げられた課題が改善されていないと感じられたりすると、関心は徐々に薄れていきます。
この問題に対処するには、社員の不安やニーズを事前に把握し、それを踏まえて議題を設定するのが効果的です。
また、ミーティング後には決定事項の進捗状況を継続的に共有し、フォローアップを徹底することで、メンバーの関心を維持しやすくなります。
タウンホールミーティングの導入事例
組織の透明性向上や企業文化の醸成のために、多くの大手企業でも導入事例が見られます。
ここでは、日本を代表する3つの企業の取り組みとその成果を紹介します。
- 株式会社日立製作所
- 三菱電機株式会社
- 富士通株式会社
それぞれ見ていきましょう。
株式会社日立製作所
日立製作所では、「人こそが価値の源泉である」という考えのもと、社員の力を結集することで社会や顧客への価値提供を目指しています。
この考えに沿って、社員との対話が積極的におこなわれています。
2022年度には、国内外でCEOを含む幹部層が計277回のタウンホールミーティングを実施し、グローバルM&Aにより新たに加わった約10万人の従業員とのMission・Values(創業の精神)の共有を進めました。
また、こうした対話の場を起点として、従業員提案型のアイデアコンテスト「Make a Difference!」も開催されています。
タウンホールミーティングは、日立グループ全体における「One Hitachi」の文化醸成や、社員エンゲージメントの向上に向けた取り組みの中核として、重要な役割を果たしています。
参考:「日立 統合報告書2023(2023年3月期)」株式会社日立製作所
三菱電機株式会社
三菱電機では、全社的な組織風土改革に向けたプロジェクト「チーム創生」を2021年に立ち上げ、2022年度にはその中核施策としてタウンホールミーティングを推進しました。
社長や本部長が全国の拠点を訪問し、従業員と直接対話する形式で、2023年度には445回にわたって実施されています。
トップ層の考えや経営方針を現場に直接伝えることで、従業員の理解と共感を得る効果が生まれています。
さらに、役職に関わらず「さん」付けで呼び合う文化や、職位・部門を超えたワークショップの実施など、社内の壁を取り払う取り組みを通じて、風通しのよい職場環境づくりが進められています。
こうした施策を通じて、三菱電機はコミュニケーション改革による組織風土の再構築に取り組んでいます。
参考:「統合報告書2024(2024年3月期)」|三菱電機株式会社
「三菱電機グループ サステナビリティレポート2023」三菱電機株式会社
富士通株式会社
富士通では、社長の時田隆仁氏が2019年の就任以来、社員と会社の双方向的なコミュニケーションを重視し、80回以上にわたるタウンホールミーティングを開催してきました。延べ63,000人以上の社員が参加し、国内外の社員との対話を実現しています。
特に、オンライン配信や自動翻訳ツールなどのデジタル技術を活用することで、言語や距離の壁を越えた対話が生まれるように工夫されています。
タウンホールミーティング後には、社内での意見交換や自発的な行動が生まれるなど、対話を通じた活動が組織内に広がるようになりました。
参考:「タウンホールミーティングは私にとって学びの場」社長の本音が社員を動かす|富士通株式会社
組織力を強化するイベントなら、Cultiveまで!
タウンホールミーティングは、経営陣と社員の間に双方向のコミュニケーションを生み出し、企業文化の醸成に大きく貢献する取り組みです。
企業理念やビジョンの浸透、社員のエンゲージメント向上、現場課題の把握と改善などのさまざまな効果が期待できます。
ただし、成果を上げるためには、明確な目的設定と事前準備が欠かせません。参加者にとって関心の高い議題を選び、意見を交わしやすい雰囲気をつくることで、タウンホールミーティングの質が高まります。
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