頻繁に起きる紛争や世界規模のパンデミック、終わりの見えない環境問題…。さまざまな課題を前に、世界規模での連帯と解決が必要だという気運が高まっています。より良い未来のために、これまでの即物的な視野を捨て、より大きな目で物事を捉えることが重要となりました。
2020年6月に創業されたネクストミーツ株式会社が目指すのは、「代替肉」を普及し、定着させること。人々の選択肢に、代替肉が当然のように存在する世界の実現です。「地球を終わらせない。」という壮大な想いを掲げるまでにはどのようなストーリーがあったのでしょうか。代表取締役の佐々木英之さんに、ネクストミーツの現在地点と未来を伺いました。
ネクストミーツ株式会社:https://www.nextmeats.co.jp/
環境問題を考えるきっかけになれば
あえて掲げた大きな旗
――早速ですが、ネクストミーツを立ち上げる前は「食」以外の事業をされていらっしゃったんですよね?
佐々木さん:そうですね。日本の大手企業と中国のベンチャー企業をマッチングさせて新規事業を起こすような事業をしていました。事業の立ち上げに何度も携わったという経験は、ネクストミーツ創業のときにも役立ったと思います。元々、「面白そうなことなら挑戦してみる」という人間でもあったので、そういう精神で挑みましたね。
――ネクストミーツでは事業成長よりも想いを先行されている印象です。サスティナビリティなどのテーマに即して、「何をやるか」ではなく「何故やるか」を重要視していると拝見したのですが、どうでしょうか?
佐々木さん:始まりの段階ではそうですね。持続的で、かつ社会貢献できる事業のほうが継続できると思っています。ただ、いざ事業を推進していくとなると、ビジネスとのバランス感覚も大事になります。サスティナビリティを先行させすぎても、利益度外視の活動になってしまうので。想いばかりが強くても事業は成長しませんし、未来を叶えるための途中過程としてビジネス面を守ることも大事だなと感じます。現在はこの壮大な理念を掲げつつも、ネクストミーツの商品を手に取ってくれる人が増えるように、美味しいものを提供できるように日々試作を繰り返しています。
――「地球を終わらせない。」とは壮大なビジョンだと思います。スコープをもう少し限定する選択肢もあったと思いますが、大きいビジョンを掲げたのはご自身の経験談や背景があったのでしょうか?
佐々木さん:特にバックグラウンドがあったわけではないですが、皆さんが代替肉やサスティナビリティを考えるきっかけになればいいなと考えました。ビジョンが狭いとそこに当てはまらない人にとっては無関係なものになってしまうので、なるべく間口を広くしようと考えてこのビジョンにしました。
理念が壮大だと確かにハードルも高くなって現実味が薄れてしまいがちですが、「ブランドイメージと合ってる」という意見をいただくことが多いです。このワードを目にした人たちが地球の未来について想いを馳せていただければと思います。
「美味しいから食べる」を通してサステナブルな未来へ
――立ち上げ時期とパンデミックの時期がちょうど重なったわけですが、人々の意識が世界全体に向けられていたことと、こうした世界的ビジョンを掲げる事業の立ち上げと、何か影響した部分はありましたか?
佐々木さん:そうですね。新型コロナ感染症だけでなく、SDGsなどの問題意識も高まっていた時期でした。世間的にもそういう動きが強くなっているというのは感じていましたね。これまで無意識的にみんなが感じていた「このままではいけない気がする」という不安感や、自分達の手で改善すべきだという使命感が表面に現れはじめていた時期だと思います。
――そのタイミングでの立ち上げというのも何か運命的なものを感じますね。創業当時は、ベストな代替肉を作るために試行錯誤を重ねたと聞きました。
佐々木さん:本当にたくさんの方のお力を借りながら、でしたね。他の事業とも並行しながらだったので進行も思うようにはいきませんでしたが、「美味しいものを作るのに苦労は付きもの」と、割り切っていた部分もありましたね。3年かけてようやく商品化に到達できましたので、今思い返すとやはり長い時間だったな、と(笑)。
今でも常に意識しているのは、「美味しいから選ぶ」という消費者視点を忘れないことです。「環境のためにこれを食べてください」と説教くさくなりたくないなと。地球環境のために、という想いで私たちが作ったものが結果的に美味しいものだった、だからみんながそれを選んで食べてくれた。その順番を守りたいと思っています。
――「地球を終わらせない。」というテーマを叶えるために、代替肉以外の手段も考えたのでしょうか?
佐々木さん:いろいろ考えましたね。少し前まで私は中国にいたんですが、中国ではEVなどが日本よりよっぽど進んでいるんですね。ですから、そういうエネルギー分野であったり、化石燃料に代わるような電気エネルギーも視野には入れましたね。あとはゴミ問題なども視野に入れてみましたが、自分の専門分野なども考慮して絞っていった感じです。
――なるほど。多くの選択肢から代替肉に焦点を絞られたんですね。今後も多くの可能性が広がっていると思いますが、事業を広げていくイメージはどのようなものでしょう?
佐々木さん:そうですね。やはりサステナブルな食品にフォーカスして事業を広げていこうと考えています。現在も代替肉を主軸としてツナなどの生産も行なっており、以前はミルクも生産していました。
それから例えば、完成した食品だけでなく、その原料をいかにサステナブルなものにしていくかとか。生産者の方々と連携できればさらに広がりもあるかなと。
また、培養肉が生産されていくと培養技術で繊維など、いろいろなモノ作りに派生していくとも思っています。もちろん、食だけでも面白いと思いますが、食以外の分野にも広がっていく可能性がありますね。
理念を根本に、しかし縛られず
NEXT STAGEを見据えて
――御社で掲げている5つのバリューや「地球を終わらせない。」というテーマについてですが、これらの言葉を作ったのはどのタイミングですか?
佐々木さん:会社設立の前です。代替肉の開発と並行しながら、社名などと一緒に議論しました。比較的スムーズに決定した印象です。
――あらためて見ると「地球を終わらせない。」というのは非常にパワフルな言葉ですよね。
佐々木さん:そうですね。ただ、ネガティブなことを言いたいわけではなく、むしろ非常にポジティブな想いを込めた言葉だとは思っています。
――企業にとって言語化された理念というのは太い芯になると思います。理念はパーパス/ビジョン/ミッションなど区別されることもありますが、どう捉えていらっしゃいますか?
佐々木さん:それでいうと「地球を終わらせない。」というのは、その全部に当てはまる気がします。環境問題は、今日何かに取り組んで来週に変化があるようなものではありません。10年、20年、50年という長いスパンで徐々に変わっていく。それだけの長いスパンで考え続けたいという意味では、弊社のパーパスでもあり、ミッションでもあり、ビジョンでもある。ただ、自分達はそこを区別しなくていいと考えています。広い意味で、うちのスローガンですね。このテーマに共感してくれる方々が多かったので、結果的にはこの言葉にしてよかったと思います。
――5つのバリューが、メンバーとの日常業務のなかで何か判断や行動の基準になっている感覚はありますか?
佐々木さん:判断や行動基準が結果的にバリューに即していた、というのは日常的にも起きていると思いますが、あまり意識しすぎないようにしています。もちろん大事な基準ではあるけど、全てを委ねてしまうとビジネスからは遠ざかることもあるので。そこもバランスが大事なんだろうと思います。今、うちにできる最大限の「地球を終わらせない。」は何だろうと、現実的なハードルも見つめながら議論して進めています。
――大事な基準だけど縛られてはいけないということですね。そんな中で新メンバーに求める価値観などははありますか?
佐々木さん:やはり会社の根本となるテーマは個人個人でも抱いていてほしいと思います。5つのバリューを必ず体現してなきゃいけないとは思いませんが、考え方のどこかにそれらの想いを持っていると、何か選択する際の行動一つ一つに現れると思っています。ただ、具体的な想いは人それぞれでいいと感じます。その方が議論が生まれるし、偏らなくていい、と。根本にある想いが共通であれば、進む方向はブレないと思うので。
――御社が次に考えていることは何かありますでしょうか?
佐々木さん:みなさんが代替肉を食べられる機会は増やしていきたいですね。これまではスーパーなどに置いてもらっていたのですが、今後はレストランなどの飲食店との連携も考えています。お店で食べたあの味に代替肉が使われてると知ったら、「うちでも作ってみよう」とスーパーに立ち寄る機会にもなると思うんですね。
代替肉の普及にはまだまだ課題もあります。食べたことのある人もまだ少ないですし、食べてみたけどあまり美味しくなかったなんていう声も聞きます。そういうイメージを払拭するというのが目下の課題ですね。
「美味しい体験」を通して、新しい選択肢にみなさんに気づいていただけたら嬉しいです。
――本日はありがとうございました。
Next Meats Co., Ltd.
CEO / 佐々木 英之(ささき ひでゆき)さん
1980年生まれ。東京都出身。
早くから起業した経験を活かし、海外に目を向け、中国深圳にて12年間、スタートアップ企業と日本企業の仲介、研修支援などを手掛ける。ビジネスレベルの中国語を駆使する。
2017年に代替肉ビジネスの将来性を確信し、研究開発を開始。
2020年6月、ネクストミーツを設立。大企業向けのアクセラレータプログラムや、メディア運営で培った経験を生かし、全世界から注目を集め、日本を代表する代替肉ベンチャーとなる。
Cultive
Cultiveは幸せに働ける良質な企業文化を醸成することで、企業成長をサポートするために生まれたサービスです。経営者の想いを表した理念策定、理念を込めたグッズ制作、表彰イベントの設計などを行い、企業文化の醸成をサポートしています。
この記事を書いた人
小名木 直子
Producer
オリジナルウェディングのプロデューサーとして多くのイベント企画に携わる。小人数〜200人規模のイベントを得意とする。職場の中でどれだけ心が動く瞬間があるかで人生の幸福度が変わることを実感し、多くの人にCultiveのサービスが届くようWEBサイトの監修も担う。
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