【サイボウズ株式会社】
企業文化はゴールではなくプロセス 変化に呼応して進化を続けるマインドとは

2023.04.04
【サイボウズ株式会社】<br>企業文化はゴールではなくプロセス 変化に呼応して進化を続けるマインドとは

「チームワークあふれる社会を創る」、「100人100通りの人事制度を」。

そんな企業理念のもと、チームワークを支援するためのグループウェアを開発・提供しているサイボウズ株式会社。社員の多様性と幸福度を重視した理念と、そのミッションを叶えるための様々な施策によって、一人ひとりが自分らしく楽しく働ける会社を実現しています。育児・介護休暇制度や副業の自由化、ライフスタイルに応じて勤務時間・形態を選択制にするなど、これまでも多くの人事制度を導入してきました。

2011年には、そんな風土づくりにさらに大きく貢献するべく「人事部感動課」を設立。社員の「感動」に焦点を当てた多くの取り組みは、その企業文化の浸透に大きく寄与してきました。今回は、設立から約12年間、感動課で会社全体の幸福度アップに日々奔走する福西隆宏さんに、企業文化についての想いを伺いました。

サイボウズ株式会社:https://cybozu.co.jp/

「こうなったらいいな」を逃さない
その過程や通過点こそが文化を作る

――サイボウズさんは社員の多様性と幸福度を重視した様々な取り組みを行なっていますが、2011年に人事部に感動課が設立されたことはとりわけ革新的でした。設立から10年以上にわたり、「社員を感動させること」に尽力し、風土づくりに貢献してきた福西さんにとって「企業文化」とはどのようなものなのでしょうか?

福西:文化を伝え続けていくことの重要性を痛感しながらも、その一方で意図的に作ろうと思って作れるものではない、と感じています。というのも、企業文化というものには決まったゴールがないんですよ。会社の成長や社員の増加に伴って文化も日々変化していきますし、その中で「もっとこういう風になったらいいな」と思うことも出てくる。例えば、僕が入社した当時は今とは違う企業理念が掲げられていて、「チームワーク」という言葉は使われていませんでした。それが現在の理念に刷新されて、今はそれが示す未来に向かって進んでいる最中です。変化し続ける企業文化の中において、その途中過程ですら文化の表れとなると思っています。

――そういった変化に呼応して、文化の伝え方そのものもやはり変わっていくのでしょうか?

福西:多様な個性を尊重するとか、チーム文化を作ろうという理念は経営者が繰り返し言っている言葉なので、社員にとっては多かれ少なかれ地図のような存在だとは思います。

ただ、在籍年数の長いベテランの人と入社一年目の人を比べたときに、理念や文化の浸透力や理解の深度というのは当然ながら違ってくるものじゃないですか。

――そうですよね。濃淡がどうしても出てくるものだとは思います。

福西:そういう時には臨機応変に分かりやすいフレーズに変えたり、理念が浸透しやすいようなシンプルな伝え方を心がけたりしています。それが有り難かったという社員の反応もありましたね。企業理念そのものが簡潔な言葉で示されていることも大きいと思います。どれだけ素晴らしい言葉でも、覚えられなかったら、理念として機能しないと思うんですよね。文化というものは過程があって結果的に浸透するものであって、やみくもに浸透させるものではない。思想の押し付けのようになってはならないとも思います。小さいところで一人ひとりが意識していくことで、「そうなったらいいよね」というムードになればいい。ゴールではなく、目標。それが文化なのだと思います。

感動課は会社にとっての”漢方”
社員の増加や会社の成長に応じた備えを処方したい

――感動課が設立されたことは、サイボウズさんの企業文化にどんな影響があったと感じますか?

福西:感動課も言ってみれば、「あったらいいね」から生まれた文化の一つ。何か問題があったから設立されたのではなく、社員が増え、活動も細分化していく中で、「感動」を取り上げるような場所があったらいいのではないか、というところから生まれました。そういう意味では感動課があることだけで半分達成しているというか、プラスアルファになっているとは思いますね。なんでしょう、薬じゃなくて漢方のような(笑)。人が増えていく上の備えというか、そんな存在だとも思います。

――感動課設立時の社員数は2、300人で、現在は約1200人。会社が大きくなっていく中で、社内に向けた取り組みを専任で行う課があるというのは心強いことですよね。その一方で実現が難しいことでもあったのではないかと思うのですが…。

福西:感動課を兼任ではなく専任にしたこと、少人数のチームにしたことは続いた秘訣だと思っています。専任になると、そのことだけに特化してアンテナを張ることができるじゃないですか。例えば、営業だったら「これを売ろう」、開発だったら「こんな技術を活用しよう」、採用チームだったら「こんな人材がいる」という風に、それぞれが真っ先に気づく。それは、常にアンテナを張って、チャンスがきたら必ず網ですくってやろうと待っているからだと思うんです。それらと同じように、僕も社内でいいことが起きていたら絶対に逃したくないし、逃さないぞと常々思っています。

――300人の頃の感動課と1200人の感動課。その違いはどんなところでしょうか?

福西:言ってしまえば、真逆な気がしますね。設立当初は「とにかく感動させたろ!」って思っていましたから。例えば「働くのが辛い」という感情をどうにかして「やりがい」に変換させようとするだとか、多少なりとも力ずくな側面はあったと思います。でも、今はそういう強引なことはしなくなりました。濃い味ばかりを試していた結果、いい塩梅の出汁がとれるようになったみたいな感じ(笑)。そして、それが結果的によく作用したのは、社員に求められていることに感動課が近づいていったからだと思うんです。

――その気づきはどういうシーンで生まれたのでしょうか?

福西:何か大きなアクションをしたのではなく、少しずつ社員のリアクションが変わって次第に近づいていった感じです。ただ、人数が増えれば増えるほど匙加減は難しくなったとも思います。最近のテレビが難しいのも一緒だと思うのですが、強引に笑わせたら多くの人は笑うけれど、その笑いを嫌う人が出てきたら、今度はそこに気を遣うようになってくるじゃないですか。そういう風にいい塩梅にしていった感じです。それでも、味を濃くした方がいい局面で濃くできるチャンスがあれば、それはそれで待ってはいますけどね(笑)。

――リモートも増える中で、新入社員などの若い世代にはそんな企業文化にどんな形で触れてもらっているのでしょう?

福西:新人も文化を作っている一人だから、伝わらないことも含めて文化だとは思うんです。いつだったか、本部長が新入社員に言っていました。「一番最前線でサイボウズをやっているのは君たちだから」と。世代によってギャップがあるのは当然のことで、濃い人と薄い人が混ざった味が風土なのだと思います。リモートでもそういったスタンスはあまり変わらないです。ただ、会う機会が少なくなるから配慮する部分とか、こういった企画にお金をかけようとかのバランスはありますよね。

――営業や開発などの他の課と比べて、感動課は目に見える結果指標がないので、評価がしづらい部分もあると思います。感動課の評価は何によって決まるのでしょう?

福西:たしかに、感動課の市場価値というのは判断が難しいところではあると思います。世の中と相対的にジャッジできるものでもなければ、そもそも比較対象もないですし…。ただ、そんな中で目に見える一つの結果として感じるのは、離職率の低さでしょうか。

――感動課ができてから離職率は5%以下をキープし続けているんですよね。

福西:そうですね。ただ、母数自体も増えているので、割合はキープしていても人数自体は増えている現状もあります。僕自身は、あまり割合とか率で見たくないなっていうのもあるんですよね。それは、サイボウズの理念でもある「100人100通り」にも通じていて、それを確率で出すのはパターン化することに近しく、どこか理念との乖離を感じるんです。離職率何%と見るよりも、離職者が何人かと捉える方が理に適っているというかね。そういう小さい部分への眼差しや考え方が浸透して、それぞれが行動したら文化になるんじゃないかなと。今ある状態より、さらにここを目指そうぜというのが僕たちの旗印のような気がしています。

社内イベントは、結婚式の二次会のようなもの
楽しく、ふざけられなければ意味がない

――社員の幸福度を上げるために感動課が具体的に行なっている社内イベントはどのようなものなのでしょうか?

福西:色々ありますけど、大きいもので言ったらサイボウズオブザイヤー(※)とかでしょうか。ただ、イベントも派手にやったら盛り上がるというものではないと思っています。それよりも中身が肝心で、サイボウズオブザイヤーは10年間で投票率がめちゃくちゃ上がっているんです。最初は半分くらい投票してくれたらいいと思っていたのですが、今は社員の3/4が投票している。イベントの規模や派手さよりも、こういった社員の反応こそが重要な文化な気がしています。サイボウズオブザイヤーって、詰まるところ「ありがとう」を伝える場だと思います。「ありがとう」が溢れていないところにチームワークは溢れないので。同時にイベントを仕掛ける方も、投票率や参加者を上げることに躍起になるのは面白くない。楽しくないとイベントなんてやる意味ないじゃないですか。

※毎年行われる社内アワード。業績を表彰対象とせず、仲間からの「ありがとう」を一番集めた個人 / チームを讃えるという、「チームワークあふれる社会を創る」ことを目指す、サイボウズ精神の反映されたイベント。

――「幸福度」というキーワードに密接にリンクしたお話だと感じます。

福西:社員が楽しく働いていること。これがサイボウズの一番のカルチャーだと思うんです。外の人からも一番言われることですし、社内イベントやった時にもそういうカルチャーを強く感じますね。「楽しくする」なんていう、一見おまけみたいなことが結局一番強く体感に残るんですよね。他の大事なことは資料やら何やら調べたら大体載ってるし…(笑)。だから、イベントをやる側も常にふざけ続けていきたい。会社のイベントって、あまりにくだけすぎてもダメだし、なんとなく楽しくないってイメージがあるじゃないですか。でも、そういう枠こそ壊していくべきだし、やっている方が「楽しんでいることが許されているシーン」を見せ続けなきゃいけないとも思います。社内イベントに一番近いのは結婚式の2次会で、オブザイヤーはい1.5次会くらいのイメージでしょうか。そういうことをずっとやっている気はしていますよね。

――最後に福西さんが感じられているご自身の役割と、今後の展望をお聞かせください。

福西:僕がやっているのは、羊飼いみたいなことだなと思います。鞭で叩くことはしないけど、「あっちにいい景色あるなあ」って方向へみんなを促すようなこと。イベントにしても、無理に人数を集めようとは思わないし、人が増えていくことも減っていくことも、濃くなることも薄くなることも全部が文化だと思うんです。そんな中で、100人が参加していたイベントに10人しか来なくなったとしたら、さすがに「おかしい方向にいってる」って気づくじゃないですか。でも、100人集めることに躍起になっていたら、方向が違うことにも気づけない。その時折々の「傾向」に見合った施策をすることが重要なのだと思います。

風土や文化はそもそも目に見えないもの。明確なゴールのないところに、「目標」という現在地をピンで打ち続けることが文化の先を示す道標なのだと思います。

――目に見えないものを追いかける中で、福西さんのような羊飼いがいてくださったら、楽しみながら進めそうな気がします。今日は素敵なお話をありがとうございました!

 

サイボウズ株式会社

人事本部 感動課 / 福西 隆宏(ふくにし たかひろ)さん

2004年サイボウズ株式会社に入社。
開発部ドキュメントグループにてサイボウズ製品のマニュアル制作に携わる。
2011年、感動課設立に伴い異動。それ以降、現在に至るまで感動課としてサイボウズ社員を感動させ続けている。

Cultive

Cultiveは幸せに働ける良質な企業文化を醸成することで、企業成長をサポートするために生まれたサービスです。経営者の想いを表した理念策定、理念を込めたグッズ制作、表彰イベントの設計などを行い、企業文化の醸成をサポートしています。

この記事を書いた人

小名木 直子
小名木 直子

Producer

オリジナルウェディングのプロデューサーとして多くのイベント企画に携わる。小人数〜200人規模のイベントを得意とする。職場の中でどれだけ心が動く瞬間があるかで人生の幸福度が変わることを実感し、多くの人にCultiveのサービスが届くようWEBサイトの監修も担う。

  • プロジェクトマネジメント
  • 企画

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