インバウンドに特化した旅行予約プラットフォームの運営や、地域の観光コンテンツの販売整備・販売強化やリサーチなどインバウンド関連事業を展開するWAmazing株式会社。「日本を楽しみ尽くす、Amazingな人生に。」というビジョンを掲げ、日本の新たな魅力を見つけ、再興し提供しています。
従業員数の約4割が外国籍のメンバーで構成され、さらに積極的な地方採用で原則フルリモート体制を取っているなかでも、風通しの良さとフラットさを失わずに維持しています。
今回は、コロナ禍を経て事業を拡大する同社の文化づくりへの取り組みや、今後の展望について、代表取締役CEOの加藤史子さん、ブランドマネジメントグループマネージャーの横山隼人さんからお話を伺いました。
WAmazing株式会社:https://corp.wamazing.com/
事業拡大で迎えた第二創業期での変革とは
――まずは、WAmazingのミッション・バリュー・カルチャーが策定された背景を教えてください。
加藤:共同創業メンバーの5人の中では、事業内容と社名、ロゴは早くから決まっていました。そのときからビジョンも不動のものとしてすでにあったのですが、ミッションやバリューはまだ曖昧な状態でした。1年ぐらい経ってから、現在のミッションの基となる「可能性がある産業や文化を掘り起こし、魅力を磨いて、価値を再構築します。」や「様々なきっかけを作り出し、「驚き」と「感動」に満ちた出会いを提供することで、 ヒトとコト、ヒトとヒトを繋ぎます。」というミッションが決まりました。「「驚き」と「感動」に満ちた出会いを提知らない日本との出会いを通じて感動の提供を」は、行政OTA事業を行う部門のオンライントラベルエージェントにリンクしたミッションです。
加藤:2020年にコロナ禍に突入し、「可能性がある産業や文化を掘り起こし地域の魅力を再構築」の通り、地域、自治体支援を行うという構想を現実に動かしました。その後、コロナ禍中に、新規事業の拡大などもあり、創業当時から構想していた「地域」「個人事業主や中小企業」「大手企業」そして日本に訪れる「旅行者」という日本のインバウンドに関わる全てに貢献することをより加速させるため、ビジョン、ミッション、バリューの見直しが行いました。それが現在のミッションの「地方経済・日本経済の再興をインバウンド実現する」旅行者向けには「知らない日本との出会いを通じて感動の提供を」地域や事業者向けの使命は「地域の魅力を再構築」となりました。まさに、ミッションの構築が完了するころ、2022年10月11日にコロナ禍が明け、インバウンドが再開しました。そのタイミングでWAmazingのデータベースを持って、大企業のインバウンドプロモーションを手伝う、訪日マーケティングパートナー事業を開始し、創業当初から掲げる全方位でのインバウンドでの日本への貢献を実現することができました。
――ミッションなど会社のアイデンティティに関わる部分を決める部署はあるんですか?
横山:カルチャーを作っていく部署としては、ブランドマネジメントグループがあります。僕は、その部署でマネージャーを務めています。他にも、訪日マーケティングパートナー事業の事業責任者と広報業務のマネージャーを務めています。ブランドマネジメントグループは、有志で集まっていて、メンバーとしては僕とCTO、リードデザイナー、台湾出身でプラットフォーム事業のメディア編集長の4人で協議をして進めています。
――プラットフォームのOTA事業から始まり、コロナ禍に新たに地域観光DX事業とコロナ禍後には、訪日マーケティングパートナー事業の2つの事業を立ち上げていますが、事業が拡大したことで、社内に変化はあったのでしょうか。
加藤:コロナ禍の直撃を受けた2020年春からコストダウン目的も含めて東京のオフィスは退去してしまいました。そして、せっかくフルリモートで働くならということで日本全国から地方採用をガンガン進めた結果、現時点で全社員の半分近くは1都3県以外に住んでいます。北海道から沖縄の離島まで社員が住んでいます。どこでも働けるフレックスプレイス制、でも、給与水準は全国一律(東京水準)というのは、地方で優秀な人材を採用する競争力になっています。
ただ原則フルリモートワークのマイナス面としては、普段仕事で直接かかわる方々とはオンライン会議などで話しますが、別の事業部の人とは全く話さないという状況に、放っておくとなってしまうんです。やはりリアルでの交流はコミュニケーションの円滑化やカルチャー形成には必要なので、コロナ禍中も含めて任意参加ですが年2回は全国から全社員が集まって交流しています。
横山: コロナ前で言うとひとつの事業しかなかったので、価値の近い人が多く入ってきていたと思います。会社として第二創業期みたいなところがコロナ禍中にあり、部署が新しく立ち上がっていく中で採用もどんどん進んでいき、多様な価値観が集合していることへの難しさを感じるようになりました。私は事業をまたいで仕事をする機会が多いので、より思うところがあったのかもしれません。例えば、「お客様」の定義が部署によって明確に違うことに気づき、みんなでひとつの山を登っていないという気がしていました。そうした中で自然と、中長期的な目線で会社として優先すべき事柄などをブランドマネジメントグループで話すようになりました。
風通しの良さとフラットさを生む、社内コミュニケーション
――事業や従業員が増え、組織が拡大して変化しているところかと思いますが、その一方で引き継がれているようなWAmazingらしい文化はありますか?
加藤:フラットな組織というのはWAmazingらしい特色かなと思います。風通しがいいというか、全員役職ではなくニックネームで呼び合っていますね。
横山: それこそ、「カロさん」って呼ばないと怒るんですよ。「社長って呼ばないで」って(笑)COOもアニキと呼ばれています。
加藤:たとえばメンバーが管理職になった場合も、昇格という感じではなく、役割の違いであり、優劣はないと思っていて、単に“上司”や“マネージャー”というロールを全うしているだけだと考えています。だから私は社長ではあるものの、私に反対意見を言うのに遠慮する必要はありません。社員が自分の頭で考えて行動することが大事です。「私の意見や考えが違うと思ったら遠慮なく言ってください」と、都度、伝えています。その結果、Slack上で「カロさん、これ違いますね」「間違ってますね」と、日々、バンバン言われていますね(笑)周りの従業員も、Slackでそのやり取りを見ていることで「社長の考えとは違う意見を述べても全然おこられないんだな、むしろ喜ばれるんだな」と感じてもらえたらなと思います。そういうものの、積み重ねがカルチャーを作るのではないかと思います。
横山: もちろん人にもよりますが、メンバー同士の距離感も近いと感じています。新橋にオフィスがあったときは、パブリックスペースで、冷凍餃子をホットプレートで焼いてみんなで食べているのが普通だったので。
加藤:餃子はみんなも好きだろうと思っていたんですが、中華圏では餃子といえば水餃子らしいんですよ。油をひかずに焼ける冷凍焼き餃子を見て中国籍のメンバーは「こんなの見たことないし、本場の中国にも売っていない」と言ってました。
横山: 他にも外国籍のメンバーが多いので、恵方巻きや酉の市、花見など、日本の文化に触れるイベントは頻繁に開催していましたね。
加藤:うちの会社の場合は、従業員のバックボーンも年齢もさまざまですし、ワーキングマザー、ワーキングファザーも非常に多いです。その人の能力だったり、性格だったり、ポテンシャルが最大限に活かされることが、会社の発展にとってもベストだと考えています。個性を最大限生かし、活躍していただけるようなカルチャーにしていきたいですね。
共感を広げるための新たなカルチャー醸成
――これまでのWAmazingらしい文化を維持しながら、バリューやカルチャーまで刷新されたとのことですが、インプレッションを向上していくための施策は計画されてますか?
横山:バリューやカルチャーについては提案資料や会社の概要資料などに記載していこうかと考えています。他にも、メンバーが使用するバーチャル背景に理念を入れたり、ミッションを名刺に載せることになりました。そういった施策についてはプロジェクトチームを立てて動き始めていますね。
例えば会社の説明資料には沿革とかが載っているのが普通ですよね。でも、それで会社の熱意や良いところって表現できないと思うんですよ。それなら会社が大事にしている理念を表記した方が届くものも多いだろうし、メンバーもそれを都度説明することによって、理解度も深めていけるんじゃないかと考えています。
――確かにその効果は期待できそうですね! 逆に、社内への浸透施策はいかがですか?
横山:基本的にリモートワークなこともあって事業部単位で会話してしまうと、どうしても業務優先のコミュニケーションに収まってしまいます。例えば新入社員同士であったり、価値観の近いコミュニティを組んで、その中でカルチャーに関する会話が生まれるような仕組みを考えられたらいいなと思っています。
また、多様性を育むというのも大切なカルチャーだと感じています。WAmazingには子どもを抱えたメンバーも多いので、親の働いている様子を見せられるようなファミリーデーの開催も個人的にはできたらいいなと思っています。一日を通してご家族に会社のことも知っていただけたらいいなと。これは国内だけでなく、外国籍のメンバーのご家族を招待することももちろんしたいですね。
他にも、四半期に全体会をやっているので、そこに照らし合わせたコンテンツを検討しています。感動を提供しているのか?を実際の旅行者の声を集めたり、理念に基づいたアクションを表彰したり・・・。今後は評価基準を整備して、そういった表彰制度も作り上げていきたいと思っています。
――このような施策は、ロードマップのように体系化された上で設計をされているのか、または現状に合わせて必要な施策を打っているのか、どちらでしょうか?
横山: それで言うとハイブリッドかもしれません。今できることは何かと考えた上で取捨選択はしていますね。やりたいことは、できれば全部実施したいですが、時間や人員的なコストも限られてはいます。目指すべき理想図は常に描きつつ、現状を見ながらベストな施策を常に試しているという感じです。
上場に向けて取り組む、価値観の共有
――社外・社内に対してカルチャーの醸成に取り組んでいる姿勢が伝わってきました。現在はIPOに向けて準備を行っているとのことですが、今後の展望を伺えますか?
横山:今はまさに“上場”というひとつの目標達成のためにみんなで進んでいる最中です。今まで1つだった事業が3つになり、組織的にも大きな変化があり、社内を整えている段階でもあります。その中で、WAmazingらしさとは何か、うちの良いところは何かということについても思考を深め、集約しています。入社者への価値観の共有も積極的にできていますし、その内容も誇れるものになっていると感じます。既存メンバーに対しては、表彰や評価制度の整備を通して今まで以上にやりがいを感じられる会社にしていきたいですね。
これから、会社もますます成長していくと思います。今後入社してくれる人たちにとってはどんどん楽しい会社になっていくと思います。
加藤:ビジョン浸透や組織作りの面でも、今後はフルパワーで挑んでいきたいと考えています。オフィスという空間づくりにおいても新しい発想を取り入れていきたいですね。コロナ禍を経て、リアルである必要性やオンラインでも対応可能なものへシフトは当社に限らずに一気に進んだと思います。極端な話ですが、仕事をするだけの場所であるオフィスは必要性が下がっているのかもしれません。そんな時代のオフィスの役割とは、コミュニケーションやチームワークを育み、ビジョンやカルチャーを共有する場所として機能することにこそ価値があると思います。我々はオンライントラベルエージェントなので、リアルの旅行会社と違い、お客様のお顔を直接拝見する機会は少ないです。しかし、旅行で得られる楽しみ、例えば美しい景色を見るとか美味しいご当地の食事とお酒を楽しむというのはリアルな世界に在ります。なので、アフターコロナのオフィスでは、メンバーのやりがいやカルチャーを育むようなリアルな空間づくりを通じて、そこに、お客様であるインバウンド旅行者もふらりと遊びにきて、気軽にカスタマーインタビューができるような、そんなオフィスにしていきたいと考えています。
――本日はありがとうございました。
WAmazing 株式会社
代表取締役CEO / 加藤 史子(かとう ふみこ)さん
慶應 SFC 卒業後、リクルートにてインターネットでの新規事業立ち上げに携わった後、観光産業と地域活性の R&D 部門じゃらんリサーチセンターに異動。主席研究員として調査研究・事業開発に携わる。
2016 年 7 月、訪日外国人旅行者による消費を地方にもいきわたらせ、地域の活性化に資するプラットフォ-ムを立ち上げるべく WAmazing 株式会社を創業。
ブランドマネジメントグループ マネージャー / 横山 隼人(よこやま はやと)さん
アライドアーキテクツ、ディーエヌエーで、ソーシャルメディア、動画領域のマーケティング、コンサルティングを経験。
2017年WAmazingに入社。OTA事業の台湾/香港向けのToCマーケティング責任者を経て、2022年11月より、国内企業向けのインバウンドマーケティング支援事業の立ち上げに従事。社内の広報、社内外ブランディングを行うブランドマネジメントグループも兼任。
Cultive
Cultiveは幸せに働ける良質な企業文化を醸成することで、企業成長をサポートするために生まれたサービスです。経営者の想いを表した理念策定、理念を込めたグッズ制作、表彰イベントの設計などを行い、企業文化の醸成をサポートしています。
この記事を書いた人
小名木 直子
Producer
オリジナルウェディングのプロデューサーとして多くのイベント企画に携わる。小人数〜200人規模のイベントを得意とする。職場の中でどれだけ心が動く瞬間があるかで人生の幸福度が変わることを実感し、多くの人にCultiveのサービスが届くようWEBサイトの監修も担う。
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