中途採用市場における内定辞退率は9.3%
マイナビの『中途採用状況調査2024年版(2023年実績)』によると、中途採用における内定辞退率は全体で約9.3%となっています。つまり10人に1人が内定を辞退している計算です。
新卒採用の内定辞退率が60%を超えることを考えると、中途採用の辞退率は比較的低い水準といえるでしょう。しかし業種によっては20%を超えるケースもあり、特にIT・通信・インターネット業界や運輸・物流業界では高い傾向が見られます。
また売り手市場が続いていることを考えると、今後さらに内定辞退率が上昇する可能性も否定できません。採用コストを無駄にしないためにも、内定辞退を「起こりうるリスク」として認識し適切な対策を講じることが大切です。
※参考:マイナビ『中途採用状況調査2024年版(2023年実績)』
中途採用で内定辞退が増えている背景とは
中途採用における内定辞退は、なぜ起きているのでしょうか。その背景には、転職市場全体の構造的な変化があります。
内定辞退が増えている主な背景として、以下の3つが挙げられます。
- 中途採用市場の売り手化が進んでいる
- 候補者の転職活動における複数内定が前提になっている
- 内定から入社までの期間に気持ちの変化が起きる可能性もある
中途採用市場の売り手化が進んでいる
現在の中途採用市場は、明らかに求職者優位の「売り手市場」となっています。少子高齢化による労働人口の減少と企業の採用ニーズの高まりが重なり、多くの業界で深刻な人手不足が続いているようです。
こうした状況では、優秀な人材ほど複数の企業から声がかかり、候補者が企業を選ぶ立場になっています。特にエンジニアや専門職、マネジメント経験者など市場価値の高いスキルを持つ人材は、常に複数のオファーを受けている状態です。
そのため企業側には、待遇面だけでなく企業文化や成長機会、働きやすさなど多角的な魅力を伝える積極的なアプローチが求められます。
候補者の転職活動における複数内定が前提になっている
中途採用の転職活動では、複数企業に同時に応募し、複数の内定を持った状態で最終的な入社先を決めるスタイルが一般的です。
新卒採用と異なり明確なスケジュールが決まっていないため、候補者は自分のペースで転職活動を進めます。その結果、複数社から内定を得て比較検討する状況が当たり前になっており、優秀な候補者ほどこの傾向が顕著です。
企業側はこの「複数内定前提」の状況を理解したうえで、内定後のフォローや関係構築に力を入れることが重要です。定期的なコミュニケーションの維持、入社後のキャリアパスの明確な提示、職場見学や社員との交流機会の提供などが効果的です。
内定を出した瞬間がゴールではなく、そこからが本当の勝負といえるでしょう。候補者に「この会社を選んで良かった」と思ってもらえる継続的な働きかけが、入社決定の鍵となります。
内定から入社までの期間に気持ちの変化が起きる可能性もある
内定承諾時は前向きだった候補者の気持ちが、入社までの期間に変化することは珍しくありません。
中途採用では現職の引き継ぎや退職交渉があるため、内定から入社までに1〜3ヵ月程度の期間が空きます。この間に、現職からの好条件での引き留めや家族の反対、他社からのより魅力的なオファーなどで候補者の心境が変わる可能性があります。
こうした気持ちの変化を防ぐには、内定から入社までの間も候補者との接点を維持し、不安を解消するフォローをおこなうことが大切です。
定期的な連絡や入社前研修への招待、現場メンバーとの交流機会の提供など、具体的なフォロー施策を通じて不安を解消し、入社への期待感を高めていくことが大切です。
社内イベントのことならCultiveまで!
企画やご予算でお悩みはありませんか?まずはお気軽にご相談ください
中途採用で内定辞退が起こる主な理由
内定辞退が発生する背景を理解したところで、次は具体的な辞退理由を見ていきましょう。
中途採用における内定辞退の主な理由として、以下の4つが挙げられます。
- 待遇・年収などの条件面で他社に負けたため
- 面接時の印象や社風にギャップを感じたため
- 現職からの引き留め・家族の反対があったため
- 企業側の連絡や対応スピードが遅かったため

待遇・年収などの条件面で他社に負けたため
内定辞退の理由として最も多いのが、待遇や年収などの条件面で他社に負けてしまうケースです。
中途採用の候補者はすでに社会人としてのキャリアを積んでおり、自分の市場価値をある程度把握しています。転職サイトや転職エージェントを通じて相場感も理解しているため、提示された条件が期待に届かない場合や他社から好条件のオファーを受けた場合には、そちらを選択します。
現職と同程度かそれ以下の条件では、「リスクを冒してまで転職する必要がない」と判断されてしまいます。しかし、提示できる条件に限界がある場合でも、年収の将来的な上がり幅や明確な評価制度、具体的なキャリアパス、充実した福利厚生、柔軟な働き方など金額以外の魅力を丁寧に伝えることで差別化できるでしょう。
また、労働条件だけではなく会社と求職者の価値観の合致も重要なポイントになります。条件だけでは他社に劣ってしまっても、やりがいを求めている転職者にとっては企業のビジョンや理念も重要な判断材料になります。自社の社会的意義や使命を訴求し、共感してくれる人材と出会えるようにメッセージを打ち出してみましょう。
面接時の印象や社風にギャップを感じたため
面接官の対応や社内の雰囲気が原因で内定を辞退されるケースも少なくありません。
候補者にとって面接官は「その会社の代表」です。高圧的な態度や丁寧でない対応があると、「この会社で働きたい」という気持ちが冷めてしまいます。
また、求人情報や面接時の説明と実際の業務内容や職場環境にギャップがあると、「話と違う」という不信感につながり、入社前に辞退を決断される原因となります。
例えば、残業時間や業務の具体的な内容、組織体制、社風や文化などに認識の齟齬があると、候補者は入社後のミスマッチを懸念します。
こうしたギャップを防ぐには、面接段階から正直に情報を開示し、入社後のリアルな姿を伝えることが重要です。課題や大変な点も包み隠さず伝えることで、候補者は納得感を持って入社を決断できるでしょう。
現職からの引き留め・家族の反対があったため
退職の意思を伝えた際に現職の上司から引き留めを受けて内定を辞退するケースもあります。
現職から好条件での昇給や昇進を提示されたり、「君がいないと困る」と説得されたりすると、候補者の心が揺らぎます。また、家族から「今の会社を辞めるのは勿体ない」「転職先は本当に大丈夫なのか」と心配されると、候補者も不安になり、転職への決意が揺らいでしまいます。
こうした理由による辞退は企業側でコントロールするのが難しいですが、内定後のこまめなコミュニケーションや丁寧なフォローで信頼関係を深め、入社への期待感を高めることで、ある程度防ぐことは可能です。
企業側の連絡や対応スピードが遅かったため
選考中や内定後の連絡が遅いことが原因で、候補者が他社に流れてしまうケースも多くあります。
中途採用の候補者は複数の企業に応募しているため、レスポンスが遅い企業よりもスピーディに対応してくれる企業に魅力を感じます。面接後の合否連絡が遅かったり内定通知が遅れたりすると、「自分は優先度が低いのかもしれない」と感じてしまいます。
特に優秀な候補者ほど複数のオファーを持っているため、対応の早い企業から順に決めていく傾向が強いです。そのため、候補者とのコミュニケーションを最優先事項として扱い、迅速かつ丁寧に対応することが求められます。スピード感を持った対応が内定辞退防止の第一歩です。
中途採用者の内定辞退が企業に与える影響
内定辞退は、企業にとってさまざまな影響をもたらします。
求人広告費や人材紹介会社への手数料、面接官の時間などが無駄になるだけでなく、再度一から採用活動を始める必要があるため、大きな損失となります。
主な影響として、以下の3つが挙げられます。
- 採用コスト・工数の増大
- 採用スケジュール全体への遅れ
- 採用チームや現場のモチベーション低下
採用コスト・工数の増大
内定辞退が発生すると、それまでにかけた採用コストや工数が無駄になってしまいます。
求人広告費、転職エージェントへの手数料、面接官の人件費など、採用活動には多くのコストがかかります。特に転職エージェント経由の場合、年収の30〜35%程度の手数料が発生するため、その損失は決して小さくありません。
内定辞退が起きると再度募集をかけて一から選考をやり直す必要があり、コストと工数はさらに増大します。加えて、採用担当者の負担も大きくなり、他の業務にも影響が出る可能性があります。
内定辞退率を下げることは、採用コストの削減に直結する重要な課題です。
採用スケジュール全体への遅れ
内定辞退によって、採用計画全体が遅れてしまうことも大きな問題です。
企業は特定の時期に人員を補充することを前提に、プロジェクトの立ち上げやチーム編成を計画しています。例えば、4月の新規事業開始に合わせて3月入社を予定していた場合、内定辞退により再募集から選考、入社まで数ヵ月かかると、事業開始自体が遅れてしまいます。
内定者が入社する予定だったポジションが空いたままになると、予定していた業務が進まず既存メンバーへの負担が増えてしまいます。
さらに、採用スケジュールの遅れは事業全体に波及効果をもたらし、市場投入のタイミングを逃したり、競合他社に先を越されたりと、ビジネスチャンスを失う可能性もあります。
採用チームや現場のモチベーション低下
内定辞退は、採用担当者や現場社員の心理的な負担にもなります。
採用担当者は候補者との面談を重ね、自社の魅力を伝え、選考プロセスを丁寧に進めてきました。それにも関わらず土壇場で辞退されてしまうと、「あれだけ時間をかけたのに」、「何がいけなかったのか」という徒労感や自己否定感が生まれ、モチベーションが大きく下がってしまいます。
内定辞退が続くと採用チーム全体の士気が低下し、「どうせまた辞退されるのではないか」という諦めの気持ちが芽生え、採用活動そのものに対する意欲や熱意が失われる可能性もあります。こうした心理的影響は、今後の採用活動の質にも悪影響を与えかねません。
社内イベントのことならCultiveまで!
企画やご予算でお悩みはありませんか?まずはお気軽にご相談ください
中途採用で内定辞退を防ぐための具体的対策
内定辞退を防ぐためには、候補者との信頼関係構築と継続的なフォローが不可欠です。ここでは、効果的な5つの対策をご紹介します。
- 面接段階で「入社後のリアル」を丁寧に伝える
- 候補者との接点を途切れさせないフォロー体制を整える
- 内定通知後のスピード感ある連絡とフォローを徹底する
- 現場社員との交流・面談を用意して不安を軽減させる
- 採用管理システム(ATS)で状況を可視化する
面接段階で「入社後のリアル」を丁寧に伝える
内定辞退を防ぐには、面接段階から入社後の働き方や職場の雰囲気を正直に伝えることが大切です。
候補者が入社後に「思っていたのと違う」「聞いていた話と現実が違う」と感じないように、面接の段階から入社後の働き方や職場の雰囲気を正直に、かつ具体的に伝えることが大切です。
業務内容や1日の具体的なスケジュール、チーム構成や人員体制、求められる役割と責任範囲、使用するツールや技術スタック、残業時間や休日出勤の実態などを、できる限り詳細に説明しましょう。
よい面だけでなく課題や大変な点も包み隠さず伝えることで、候補者は納得感を持って入社を決断できます。オフィス見学や職場体験の機会を設けることで、候補者が実際の職場の雰囲気を肌で感じることもできます。
候補者との接点を途切れさせないフォロー体制を整える
内定を出してから入社までの期間、候補者との接点を維持することが内定辞退防止には欠かせません。
通常、内定〜入社までの期間は1〜3ヶ月程度空くため、この期間に候補者との関係を維持し続ける必要があります。内定後に企業から何の連絡もないと、候補者は不安になり、他社の選考に気持ちが傾いてしまう可能性があります。
週1回程度の定期的な連絡やメール、チャットツールなどを活用して候補者とコミュニケーションを取り続けることで、安心感と期待感を提供できます。具体的には、入社準備の案内、社内イベントの共有、退職交渉の相談対応などが効果的です。
採用担当者が候補者の「相談相手」として寄り添うことで、信頼関係が深まり内定辞退のリスクを大きく減らせます。
内定通知後のスピード感ある連絡とフォローを徹底する
内定通知のタイミングが遅れると、候補者が他社の選考を進めてしまい、そちらに流れてしまう可能性が高まります。中途採用の候補者は複数社に同時応募しているケースが多く、待たされている間に他社から先に内定を得れば、そちらを優先してしまう傾向があります。
選考を終えたらできるだけ早く、遅くとも2〜3営業日以内に内定通知をおこなうことが理想的です。応募から内定出しまでのリードタイムを2週間以内にしている企業が約半数を占めており、1ヵ月以内に完結している企業が約8割にのぼります。
「最初に内定をもらった企業に入社を決める」という候補者も一定数いるため、スピードを重視した選考プロセスの設計と迅速な意思決定が、内定辞退防止につながります。
現場社員との交流・面談を用意して不安を軽減させる
内定者が社風やチームへの不安を抱えている場合、現場社員との交流が効果的です。採用担当者や経営陣との面接だけでは、実際の職場の日常やリアルな働き方が見えにくく、候補者の不安は完全には解消されません。
実際に一緒に働く予定の社員と話す機会は、入社への不安を解消する大きな助けになります。ランチや懇親会、1対1のオンライン面談などを設けることで、オフィス訪問時の現場見学などを設けることで、職場の雰囲気やチームの人間関係、仕事の進め方などを事前に知ることができます。
「この人たちと一緒に働きたい」、「このチームなら自分も活躍できそうだ」と思ってもらえれば、内定辞退のリスクは大きく減ります。
採用管理システム(ATS)で状況を可視化する
採用管理システム(ATS)を導入することで、候補者の選考状況や連絡履歴を一元管理し、対応漏れを防ぐことができます。中途採用では複数の候補者が同時並行で選考プロセスを進めるため、エクセルやメールだけでの管理では情報が分散し、対応漏れや連絡遅延のリスクが高まります。
ATSでは応募者ごとのステータスをリアルタイムで可視化し、「次に誰にいつまでに何をすべきか」という次に取るべきアクションを明確にできます。これにより、面接後の合否連絡が遅れたり、内定後のフォローを忘れたりするリスクが大幅に減り、スピーディな対応が可能になります。
さらに、ATSで採用データを継続的に蓄積することで、どの段階で候補者が辞退しているか、どのような理由で辞退が発生しているかを定量的に分析できます。こうしたデータに基づいて採用プロセスの課題を特定し、継続的な改善が期待できます。
内定辞退が発生した際の正しい対応方法
万が一、内定辞退が発生してしまった場合でも、適切な対応をおこなうことで次回の採用活動に活かすことができます。辞退された事実を受け止め、冷静に対処することが重要です。
辞退理由を丁寧にヒアリングしてデータとして蓄積し、採用プロセスの課題を分析することで、次回の採用活動に活かすことができます。主なポイントは以下の3つです。
- 辞退理由を丁寧にヒアリングしてデータ化する
- 感情的な対応を避け、再応募の可能性を残す
- 社内共有・採用プロセスの改善に活かす
辞退理由を丁寧にヒアリングしてデータ化する
内定辞退の連絡を受けた際には、まず冷静に辞退理由をヒアリングしましょう。
「どのような理由で辞退を決めたのか」、「他社と比較して何が決め手になったのか」、「選考プロセスで改善してほしい点はあったか」など、候補者が答えやすい質問を投げかけることで貴重なフィードバックを得られます。
ただし、無理に理由を聞き出そうとするのは逆効果なので、候補者が話したくない場合や詳細を伏せたい場合には深く追及しないことが大切です。
ヒアリングした内容は必ずデータとして記録しましょう。辞退理由を蓄積することで、「条件面での競争力不足」、「選考スピードの遅さ」、「面接官の対応」など、自社の採用活動における具体的な課題や傾向が明確に見えてきます。
感情的な対応を避け、再応募の可能性を残す
内定を辞退されると採用担当者としてはがっかりしてしまうものですが、感情的になって候補者を責めたり、不快な態度を取ったり、辞退を引き留めようと強引に説得したりするのは絶対に避けましょう。
こうした対応は企業の評判を傷つけるだけでなく、SNSや口コミサイトでネガティブな情報として拡散されるリスクもあります。候補者も内定を辞退することに対して申し訳ない気持ちや後ろめたさを感じており、連絡するのに勇気を出しています。
「ご縁がなかったのは残念ですが、今後のご活躍を応援しています」といった温かい言葉で送り出すなど、丁寧で誠実な対応を心がけることで、将来的に再び転職を考える際や知人への紹介などで自社への応募を検討してもらえる可能性が残ります。
礼儀正しくプロフェッショナルに対応することで、企業のブランドイメージを守ることができます。
社内共有・採用プロセスの改善に活かす
内定辞退が発生したら、その情報を採用担当者だけで抱え込まず、人事部門や経営層、関係する現場マネージャーなど社内で適切に共有し、採用プロセスの改善に役立てましょう。
辞退理由を採用チームで共有することで、「面接官の対応を改善する必要がある」、「条件面での競争力を高める必要がある」など具体的な改善策が見えてきます。
特に同じ理由での辞退が複数回発生している場合は、構造的な課題が存在する可能性が高いため、優先的に対策を講じるべきです。
内定辞退は決して「失敗」や「恥ずべきこと」ではなく、自社の採用活動を客観的に見直し、より魅力的な採用プロセスへと進化させるための貴重なフィードバックと前向きにとらえることができます。
中途採用の内定辞退は関係構築で防げる
中途採用における内定辞退は、採用市場の変化や複数内定前提の転職活動によって今後も一定数発生することが予想されます。
しかし、適切な対策を講じることで内定辞退のリスクを大きく減らすことは可能です!
特に重要なのは候補者との信頼関係を丁寧に築いていくことです。面接段階から入社後のリアルな姿を伝え、内定後も定期的にコミュニケーションを取り続けることで、候補者は「この会社で働きたい」という気持ちを強めていきます。
また、多くの求職者は労働条件と共に、働く環境やそこで得られるやりがいを求めています。企業文化や理念を見直して、メンバー個々人の幸福度や価値観と合致した環境を整えることも非常に大切なポイントです。
Cultiveでは、「企業の“らしさ”は戦略になる」という考えのもと、より良い企業文化を育み、成長の一助となるサポートをしております。
経営理念の刷新から始まり、その理念がメンバーの心に宿って行動として現れるまでの過程を、「心震える瞬間」を共に体験することで育んでいきます。
理念浸透やエンゲージメント対策にお困りの方はぜひお気軽にご相談ください。


































