中途採用で1日で辞めるケースが増えている!その背景とは……
中途採用者の早期退職は、決して珍しい現象ではなくなっています。その背景には、社会情勢の変化や転職市場の拡大といった要因があります。
主な背景として、以下の3点が挙げられます。
- 転職が当たり前の社会情勢で早期退職は増えている
- プラットフォームが増えすぎたことでのミスマッチも増加傾向
- 採用したメンバーが1日で辞めることに違法性はない場合が多い
それぞれの内容について、具体的に見ていきましょう。
転職が当たり前の社会情勢で早期退職は増えている
近年、転職はキャリア形成の一環として広く受け入れられるようになりました。一つの会社で定年まで働くという従来の価値観は薄れ、より良い条件やキャリアアップを求めて転職することが一般的になっています。
転職市場の活性化により、求職者の選択肢は大幅に増えました。複数の企業から内定を得ることも珍しくなく、入社後に「やはり他社の方が良かった」と気付くケースもあります。
キャリア意識の変化も重要な要因です。特に若い世代を中心に、自分に合わない環境であれば早期に見切りをつけるという判断が受け入れられています。「我慢して続ける」よりも「早めに軌道修正する」という考え方が広がっています。
転職のハードルが下がったことで、入社してみて違和感を覚えたら、すぐに次の選択肢を探すという行動パターンが生まれています。企業側から見れば困った現象ですが、求職者にとっては自分のキャリアを主体的に選択する時代になったといえるでしょう。
プラットフォームが増えすぎたことでのミスマッチも増加傾向
転職サイト、転職エージェント、SNSでの採用など、求人プラットフォームが多様化したことで、求職者と企業のマッチング機会は増えました。しかし同時に、ミスマッチの発生も増加しています。
仕事内容のミスマッチは、よくある例です。求人票では「企画業務」と記載されていたのに、実際は単純作業が中心だったという場合、求職者は期待を裏切られたと感じます。
また、労働条件のミスマッチも深刻です。「残業は月20時間程度」と聞いていたのに、実際は毎日終電まで働く環境だったとなれば、1日で辞めたくなるのも理解できます。
職場環境のミスマッチも退職につながります。「風通しのよい職場」という説明を信じて入社したものの、実際は上下関係が厳しく、意見を言える雰囲気ではなかったという状況では、長く働く意欲は失われるでしょう。
情報が溢れる現代において、企業側は自社を魅力的に見せようと情報を盛りがちです。一方、求職者側も限られた情報から企業を判断せざるを得ません。この情報の非対称性が、ミスマッチを生む大きな要因となっています。
採用したメンバーが1日で辞めることに違法性はない場合が多い
企業側が気になるのは、1日で辞められることの法的な問題です。結論からいえば、一般的には違法ではありません。
労働基準法では、雇用契約の解約について、労働者は14日前に申し出ることで退職できると定められています。ただし、試用期間中の初期段階では、より柔軟な運用がなされることもあります。
法律上、労働者には職業選択の自由があり、強制的に働かせることはできません。入社初日であっても、本人が退職を希望すれば、企業側はそれを受け入れざるを得ないのが現実です。
ただし、即日退職の場合、企業側との合意が必要となるケースもあります。原則として2週間の予告期間を設けるべきですが、入社直後の状況では、双方の合意により即日退職となるケースが多いでしょう。
企業側が抱きやすい誤解として、「採用にかけたコストを請求できるのではないか」というものがあります。しかし、通常の退職であれば、企業は損害賠償を求めることはできません。
法的には問題がないとはいえ、これは企業にとっては大きな損失です。だからこそ、1日で辞められないような採用プロセスと受け入れ体制の構築が重要です。
中途採用者が1日で辞める主な原因7選
中途採用者が入社初日で辞める原因は多岐にわたります。決して珍しくない現象であり、背景にはさまざまな要因が存在します。
主な原因として、以下の7点が挙げられます。
- 仕事内容や条件が聞いていた話とは異なる
- 教育・サポート体制が整っておらず不安がある
- 職場の雰囲気・人間関係に違和感がある
- 初日から放置され孤立してしまった
- 残業・休日などの労働条件が聞いていた内容とは違った
- 企業文化・価値観が合わなかった
- 企業の将来性に不安がある
それぞれの原因について、具体的に見ていきましょう。

仕事内容や条件が聞いていた話とは異なる
面接時の説明と実際の業務内容や待遇が異なる場合、入社者は大きな失望を感じます。これは1日で辞める最も多い理由の一つです。
求人票や面接で提示された情報と、現場の現実にギャップがあるケースは少なくありません。例えば、「マーケティング企画を担当」と聞いていたのに、実際はデータ入力や資料作成ばかりという状況です。専門スキルを活かせると期待していた人材にとって、これは大きな裏切りとなります。
給与や待遇の違いも深刻です。「基本給30万円」と聞いていたのに、実際は固定残業代込みで、残業しなければ手取りが大幅に減るという場合もあります。生活設計にも関わる重要な条件が異なれば、信頼関係は一瞬で崩れます。
また、配属先の違いも問題です。「本社勤務」と聞いていたのに、初日に「当面は支店配属」と告げられれば、通勤や生活の計画が狂います。家族の事情で転居が難しい人にとっては、致命的な条件変更です。
企業側が意図的に嘘をつくケースは稀ですが、採用担当者と現場の認識がずれていたり、状況が変わったことを伝え忘れたりすることがあります。しかし求職者から見れば、意図的かどうかは関係ありません。「騙された」と感じた瞬間、退職を決意するでしょう。
教育・サポート体制が整っておらず不安がある
初日からの研修不足や指導者不在の状況では、新入社員は強い不安を感じます。誰に何を聞けばよいのかわからず、働き続ける自信が持てなくなってしまいます。
入社初日に「まずこの資料を読んでおいて」とだけ言われ、その後放置されるケースがあります。オリエンテーションもなく、自分の役割も明確に示されなければ、「この会社で本当にやっていけるのか」という不安が募るのは当然です。
そのような状態を「誰に相談すればよいかわからない」という心理状態も深刻です。周囲のメンバーは皆忙しそうで声をかけづらく、かといって何も質問せずに進めるわけにもいきません。その結果、新入社員は孤立感を深め、「ここは自分の居場所ではない」と感じてしまうでしょう。
また、マニュアルや手順書がない職場も問題です。口頭での説明だけでは理解しきれず、あとで確認することもできません。中途採用者は即戦力として期待されることが多く、「できて当然」という扱いを受けることもあります。しかし、どれだけ経験豊富でも、新しい環境では最低限のガイダンスが必要です。
教育体制が整っていない企業は、新入社員を大切にしていないという印象を与えます。初日の対応が悪ければ、「この会社は人を育てる気がない」と判断され、退職につながります。
職場の雰囲気・人間関係に違和感がある
上司や同僚との相性、職場の文化に違和感を感じることも、初日退職の原因となります。人間関係は働くうえで非常に重要な要素だからです。
初日から上司や先輩の態度が冷たい、あるいは威圧的だと感じれば、「この人たちと長く働けるだろうか」という疑問が生まれます。挨拶しても返事がない、質問しても面倒そうな顔をされるといった対応では、歓迎されていないと感じるのは当然です。
職場の雰囲気が想像と違うケースもあります。面接では和やかな印象を受けたのに、実際のオフィスは静まり返っており、メンバー同士の会話もほとんどないという状況では、働く意欲が削がれます。
また、派閥や政治的な雰囲気を感じ取ることもあるでしょう。初日から「この人とあの人は仲が悪い」「特定のグループに属さないと不利」といった空気を察知すれば、面倒な職場だと判断します。
この会社で長く働けるかという判断を、初日の雰囲気だけで下す人は少なくありません。しかし、第一印象が悪ければ、その後の印象を覆すのは困難です。人間関係への不安は、他の条件が良くても退職を決意させる強い要因となります。
初日から放置され孤立してしまった
配属後のフォローがなく、業務が与えられず孤立するケースは、新入社員にとって非常につらい経験です。何をすべきかわからないまま時間だけが過ぎていく状況は、強い不安を生みます。
例えば、入社初日に席に案内されただけで、その後、誰も声をかけてくれないという状況があります。周囲のメンバーは皆それぞれの業務に集中しており、新入社員の存在を忘れているかのようです。自分から声をかけるべきか、待つべきか迷っているうちに、疎外感だけが募ります。
仕事を教えてもらえない不安も大きいものです。「今日は顔合わせだけ」と言われて本当に何もすることがなければ、「自分はここで必要とされているのか」という疑問が湧きます。中途採用で入社した人ほど、即戦力として活躍したいという意欲があり、放置されることへの失望は大きいでしょう。
また、パソコンのログイン情報がもらえない、デスクに何も用意されていないといった物理的な準備不足も、放置されていると感じさせます。「自分の入社を誰も準備していなかったのではないか」という印象を与え、企業への信頼を失わせます。
そのため、初日の孤立感は、その後の印象を決定づけます。放置された経験は、「この会社は人を大切にしない」という確信につながり、退職を決意させる強力な要因となってしまいます。
残業・休日などの労働条件が聞いていた内容とは違った
面接時に提示された勤務条件と実際の労働環境の差は、信頼を損なう深刻な問題です。生活に直結する条件だからこそ、違いが明らかになったときの失望は大きいものです。
例えば、残業の頻度について、「月に10時間程度」と聞いていたのに、初日から「今月は繁忙期だから毎日残業がある」と言われるケースがあります。たまたま繁忙期だとしても、入社前に説明がなければ、常態化しているのではないかと疑ってしまうでしょう。
休日出勤の有無も重要な条件です。「土日祝日は完全に休み」と聞いていたのに、初日に「月に1回程度は休日出勤がある」と告げられれば、家族との予定や自己啓発の計画が狂います。
また、休憩時間の取りにくさも問題です。形式上は1時間の休憩があっても、実際は電話対応や急ぎの作業で休めないという職場もあります。初日に昼休みもろくに取れない状況を目のあたりにすれば、「ここでは働き続けられない」と判断してもおかしくありません。
労働条件は求職者が最も重視する要素の一つです。面接での説明と現実が異なれば、企業への不信感は一気に高まります。たとえ他の条件が良くても、労働環境への不満は退職を決意させる決定的な要因となるでしょう。
企業文化・価値観が合わなかった
組織の風土や価値観が合わず、早期退職につながるケースも少なくありません。働き方や考え方の違いは、日々のストレスとなり、蓄積していきます。
企業理念や社内ルールが個人の価値観とずれている場合、違和感は初日から生じます。例えば、「お客様第一」を掲げる企業で、実際は売上至上主義でお客様対応が雑という状況では、理念と現実のギャップに幻滅します。
また、意思決定のスピードや方法に対する考え方の違いも問題です。迅速な判断を求める人にとって、すべてを会議で決める慎重すぎる企業文化は息苦しく感じます。逆に、熟考したい人にとって、トップダウンで即決する文化はストレスとなるでしょう。
評価の基準や昇進の考え方も、価値観に関わります。実力主義を期待していたのに、実際は年功序列が根強く残っているという状況では、成長意欲の高い中途採用者は将来性を感じられません。
さらに、服装や言葉遣いといった細かなルールも、価値観の違いを感じさせる要素です。自由な雰囲気を期待していたのに、厳格な上下関係や形式を重んじる文化だとわかれば、「自分には合わない」と感じます。
初日の段階で企業文化への違和感が強ければ、「ここで長く働いても幸せになれない」という結論に至り、早期退職を選択するでしょう。
企業の将来性に不安がある
会社の経営状況や事業展望に不安を感じ、初日で辞める決断に至るケースもあります。将来の安定性やキャリア継続性を懸念する心理は、特に慎重な求職者に見られます。
具体的には、初日に会社の状況を知って驚くことがあります。「業績が厳しい」「大口のお客様を失った」「リストラが検討されている」といった情報を耳にすれば、入社を後悔するかもしれません。面接ではポジティブな説明しか受けていなかったのに、現場では危機感が漂っているという状況では、騙されたと感じるでしょう。
設備や環境の古さも、将来性への不安を抱かせます。オフィスが古く、ITシステムも時代遅れで、投資がおこなわれていない様子が見て取れれば、「この会社は成長していないのではないか」と疑問を持ちます。
メンバーの表情や雰囲気からも、会社の状態を読み取れます。皆が疲れた表情で、活気がない職場では、将来性を感じられません。「この会社の未来は明るくない」と判断すれば、早めに見切りをつけようと考えるでしょう。
キャリア形成を真剣に考えている中途採用者ほど、会社の将来性を重視します。初日の印象で「ここではキャリアを積めない」と判断すれば、時間を無駄にする前に退職を決意します。
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中途採用者が1日で辞めた際の影響は大きい
入社直後に辞められた場合、企業にはさまざまな影響が生じます。採用担当者や人事担当者が抱える実務上の負担や心理的影響も無視できません。
中途採用者が1日で辞めることは珍しくないとはいえ、企業側には一定の影響があります。主な影響として、以下の4点が挙げられます。
- 採用コストが増大する
- 社会保険手続きの業務負担が増大する
- 従業員のモチベーションが低下する
- 企業のイメージが悪化する
それぞれの影響について、具体的に見ていきましょう。
採用コストが増大する
1日で退職されることによる直接的・間接的なコスト増は、企業にとって大きな痛手となります。採用活動に投じた時間と費用が、すべて無駄になるからです。
求人広告費は、採用の初期段階で必要な費用です。求人サイトへの掲載費用は、掲載期間や露出度によって数十万円に上ることもあります。人材紹介会社を利用していれば、採用決定時に年収の30%程度が手数料として発生します。年収400万円の人材なら、120万円の手数料です。
また、面接対応の時間も隠れたコストです。書類選考、一次面接、二次面接、最終面接と、各段階で人事担当者や現場メンバーの時間が費やされます。1人の採用に10時間以上かかることも珍しくなく、その間の人件費も相当な額です。
入社手続きにかかる人件費も無視できません。雇用契約書の作成、社会保険の手続き、備品の準備、システムのアカウント作成など、入社に向けた準備作業には多くの労力がかかります。
1日で辞められれば、これらのコストがすべて無駄になり、さらに再度の採用活動が必要となります。仮に1人の採用に総額150万円かかっていたとすれば、1日退職によって150万円の損失が確定し、さらに次の採用に同額が必要になるということです。
早期退職による損失を防ぐことが、いかに重要かがわかります。
社会保険手続きの業務負担が増大する
入社したメンバーがすぐ辞めた場合でも、社会保険や雇用保険の手続きは必要です。短期間のメンバーでも手続きは省略できないため、人事担当者の負担は変わりません。
社会保険の加入手続きは、入社後速やかに実施しなければなりません。健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の加入手続きをおこない、必要書類を年金事務所やハローワークに提出します。
1日で退職した場合、今度は資格喪失の手続きが必要となります。加入手続きと喪失手続きをほぼ同時におこなうことになり、事務作業が二重に発生します。
また、短期間の在籍でも給与計算は必要です。1日分の給与を計算し、源泉徴収や社会保険料の控除をおこないます。金額は小さくても、処理の手間は通常と変わりません。
さらに、離職票の作成や雇用保険被保険者証の返却など、退職にともなう手続きもおこなわなければなりません。すべての書類を正確に処理する必要があり、ミスがあればトラブルになります。
人事担当者にとって、1日退職は「手間だけかかって成果ゼロ」という最も避けたい事態です。本来なら他の業務に充てられる時間が、無駄な事務作業に費やされることになります。
企業側の対応の重要性を理解し、初日退職を防ぐ努力が求められます。
従業員のモチベーションが低下する
初日退職者が出ることで、残ったメンバーに与える心理的影響は軽視できません。採用や研修の無駄、職場の士気低下など、目に見えにくい損失が発生します。
採用活動に協力したメンバーは、時間を割いて面接に参加したり、受け入れ準備をしたりしています。それが1日で無駄になれば、「何のために頑張ったのか」という虚しさを感じるでしょう。
受け入れ準備をした現場のメンバーも、同様の失望を味わいます。デスクや備品を用意し、業務の引き継ぎ計画を立て、教育の準備をしていたのに、初日で辞められれば徒労感しか残りません。
また、「またすぐに辞められた」という事実は、「この会社に何か問題があるのではないか」という疑念を生みます。離職が続けば、残ったメンバーも「自分も転職した方がよいのか」と考え始めるかもしれません。
さらに、採用チームの評価も下がります。「せっかく採用したのに、すぐ辞められる」という結果が続けば、「採用担当は何をしているのか」という批判にさらされます。人事部門のモチベーションも下がるでしょう。
このように、初日退職は、組織全体の雰囲気を悪化させる要因となります。見えにくいコストですが、長期的には企業の生産性や定着率に影響を及ぼす深刻な問題です。
企業のイメージが悪化する
短期退職者が多い会社は、採用市場での評判や取引先・お客様の印象にも影響します。企業ブランドの毀損は、長期的な損失につながる可能性があります。
求人ページや口コミサイトでの評価は、求職者の判断材料となります。「入社してすぐ辞める人が多い」「初日で辞めた」といった情報が書き込まれれば、応募者は減少します。一度ついた悪評を覆すのは容易ではありません。
また、転職エージェントからの評価も下がります。紹介した人材がすぐ辞めるという実績が続けば、「この企業は問題がある」と判断され、優秀な人材を紹介してもらえなくなる可能性があります。
取引先なども、企業の内部状況を気にします。「あの会社は人がすぐ辞める」という噂が広まれば、「経営が不安定なのではないか」「サービスの質が下がるのではないか」と懸念が生まれるのは当然です。
社内の雰囲気が悪化すれば、それが外部にも伝わります。不満を抱えたメンバーが、知人に会社の悪口を言うこともあるでしょう。SNSに不満を投稿されれば、一気に拡散する可能性もあります。
企業イメージの悪化は、採用だけでなく、営業活動や人材定着にも影響を及ぼします。初日退職を防ぐことは、企業ブランドを守るという観点からも重要です。
採用した中途社員が1日で退職することを防ぐポイント
入社初日で辞めるリスクを減らすには、採用段階から入社後のフォローまで、一貫して取り組むことが重要です。原因と対応策を結びつけ、実務で活かせる具体的な施策を実行しましょう。
主な防止策として、以下の7点が挙げられます。
- 企業文化・価値観を適切に発信する
- 面接時にリアルな職場情報を隠さず伝える
- 採用面接に現場のメンバーも同席してもらう
- 入社初日の受け入れ体制(オンボーディング)を整える
- メンター制度やフォロー面談で安心感を作る
- 採用担当と現場の情報共有を徹底する
- 入社後1週間程度のフォローアップ体制を構築する
それぞれの施策について、具体的に見ていきましょう。

企業文化・価値観を適切に発信する
労働条件や環境だけでなく、企業のビジョンや価値観を発信することが重要です。単なる条件比較ではなく、価値観のマッチングを重視することで、定着率は大きく向上します。
労働条件だけが判断基準になってしまうと、競合他社との比較に晒されます。給与や休日といった条件は、よりよい条件を提示する企業があれば、そちらに流れてしまうこともあるでしょう。
一方、求職者の価値観とマッチすることで、「ここで働きたい」という他社とは比較できない無二のモチベーションを醸成できます。企業理念に共感し、実現したいビジョンに惹かれた人材は、多少の条件差では揺らぎません。
具体的な発信方法として、採用ページで企業の歴史や理念、社会的使命を丁寧に説明することが挙げられます。代表者のメッセージや、メンバーのインタビューを通じて、「この会社で働く意味」を伝えましょう。
面接でも、条件面だけでなく、「当社が大切にしている価値観」「求める人物像」を明確に伝えます。求職者が共感できるかどうかを確認し、双方にとってのミスマッチを防ぐことが重要です。
価値観が合致した人材は、入社後も長く働き続ける傾向があります。初日退職を防ぐだけでなく、長期的な定着にもつながる重要な施策です。
面接時にリアルな職場情報を隠さず伝える
面接で仕事内容、労働条件、職場環境を正直に伝えることは、ミスマッチを防ぐ基本です。良い面だけでなく、厳しい面も含めて伝えることで、入社後のギャップを最小限にできます。
「聞いていた話と違った」という理由で辞めるケースは、最も防ぎやすい問題です。面接の段階で正確な情報を提供していれば、求職者は納得したうえで入社を決断できます。
具体的には、業務内容を詳細に説明することです。企画業務といっても、そのなかには資料作成やデータ入力も含まれることを明示します。華やかな部分だけでなく、地道な作業もあることを伝えておけば、入社後に失望されることはありません。
労働条件についても、繁忙期の残業時間や、休日出勤の可能性を正直に話します。「通常は残業少なめですが、月末は忙しくなります」と具体的に伝えることで、求職者は現実的な判断ができます。
職場の雰囲気や人間関係についても、ありのままを伝えましょう。「若手が多く活気がある」だけでなく、「上下関係は比較的しっかりしています」といった情報も必要です。
正直に伝えることで、応募者が減るのではないかという懸念もあるでしょう。しかし、入社後すぐに辞められるよりも、初めから自社に合う人材だけを採用する方が、はるかに効率的です。
誠実な情報提供が、長期的な信頼関係の基礎となります。
採用面接に現場のメンバーも同席してもらう
現場メンバーが面接に参加することで、職場の雰囲気や具体的な業務を伝えやすくなります。人事担当者だけでは伝えきれない、現場のリアルな情報を提供できます。
実際に一緒に働くメンバーがどのような人なのか、どのような仕事をしているのかを直接聞くことで、求職者はより具体的なイメージを持てるでしょう。面接に参加する現場メンバーは、求職者にとってのロールモデルとなります。「この人と一緒に働きたい」と思えれば、入社への意欲は高まります。逆に、現場メンバーとの相性が悪いと感じれば、辞退という選択もできます。
また、業務内容についての質問にも、より詳細に答えられます。「どのようなツールを使うか」「1日のスケジュールはどうなっているか」「困ったときに誰に相談するか」といった具体的な情報は、現場メンバーでなければ答えられません。
現場メンバーの参加は、企業側にもメリットがあります。採用する人材について、現場の意見を反映できるため、入社後のミスマッチが減ります。現場が納得して受け入れた人材は、サポート体制も整いやすいでしょう。
面接の質を高めることが、初日退職を防ぐ有効な手段となります。
入社初日の受け入れ体制(オンボーディング)を整える
初日の業務や手順、担当者の配置、マニュアル準備など、具体的な受け入れ準備が不可欠です。初日から安心して業務に取り組める環境作りが目的となります。
オンボーディングとは、新入社員をスムーズに組織に迎え入れるプロセスのことです。入社初日のスケジュールを明確にし、誰が何を担当するかを決めておきます。
具体的な準備項目として、まずデスクや備品の用意があります。パソコン、電話、文房具など、初日から必要なものをすべて揃えておきます。システムのアカウントも事前に作成し、すぐに使える状態にしておくことが重要です。
オリエンテーション資料も準備します。会社の概要、組織図、就業規則、業務の流れなど、基本的な情報をまとめた資料を用意し、初日に説明します。
初日のスケジュールも具体的に計画しましょう。午前中はオリエンテーション、午後は職場見学とメンバー紹介といった具合に、時間ごとの予定を立てておけば、新入社員は安心します。
また、担当者の明確化も重要です。「何かあったらこの人に聞いてください」と、相談相手を指定しておくことで、新入社員は孤立せずに済みます。
入社初日の印象が、その後の定着を左右します。丁寧な受け入れ体制を整えることが、初日退職を防ぐ最も基本的な施策です。
メンター制度やフォロー面談で安心感を作る
新入社員に専任の相談相手であるメンターをつけることは、非常に効果的な施策です。初日や初週に不安を抱えるメンバーへのフォローの重要性は、いくら強調してもしすぎることはありません。
メンター制度とは、経験豊富なメンバーが新入社員の相談役となり、業務面だけでなく、精神面もサポートする仕組みです。直属の上司とは別に、気軽に相談できる先輩がいることで、新入社員の不安は大きく軽減されます。
メンターの役割は多岐にわたります。業務の進め方を教える、社内の人間関係をナビゲートする、困ったことがあればすぐに相談に乗るなど、新入社員が安心して働ける環境を作ります。
また、フォロー面談も重要です。入社後の数日間は、毎日短時間でも面談の機会を設け、「困っていることはないか」「わからないことはないか」を確認しましょう。早期に問題を発見し、対処することで、不満の蓄積を防げます。
初日や初週の不安は、誰もが感じるものです。しかし、適切なサポートがあれば、不安は解消され、「この会社で頑張ろう」という前向きな気持ちに変わります。
メンター制度とフォロー面談により、新入社員に「自分は歓迎されている」「サポートしてもらえる」という実感を持たせることが、初日退職を防ぐ鍵となります。
採用担当と現場の情報共有を徹底する
採用担当と現場担当の連携不足が、ミスマッチを生むリスクがあります。双方が緊密に情報を共有することで、一貫性のある採用と受け入れが実現します。
共有すべき情報として、まず業務内容の詳細があります。採用担当が求職者に説明した業務内容と、現場が実際に任せる業務が一致しているか確認します。食い違いがあれば、事前に調整が必要です。
求職者の期待や希望も共有します。面接で求職者がどのような仕事をしたいと言っていたか、どのようなキャリアを描いているかを現場に伝えることで、受け入れ側も適切な配慮ができます。
入社後の配置やスケジュールも、事前に共有しておきましょう。いつ入社し、誰が担当し、どのような研修をおこなうかを、採用担当と現場が共通認識として持つことが重要です。
メンバーの反応やフォロー状況も、定期的に共有します。入社後の様子を現場から採用担当に報告し、問題があれば早期に対応します。「最近元気がない」「質問が減った」といった小さな変化も、重要なサインです。
情報共有を徹底することで、組織として一貫した対応が可能になります。採用担当と現場が連携して新入社員をサポートする体制があれば、初日退職のリスクは大きく減少するでしょう。
入社後1週間程度のフォローアップ体制を構築する
入社直後のフォローとして、定期面談やヒアリングの重要性は非常に高いものです。1週間以内に課題や不安を把握し、早期解決することで、退職リスクを大幅に下げられます。
入社初日だけでなく、3日後、1週間後といった節目でフォロー面談を実施しましょう。「仕事に慣れてきたか」「困っていることはないか」「職場の雰囲気はどうか」といった質問を通じて、新入社員の状態を確認します。
こうしたやり取りから、小さな不満や疑問をキャッチアップし、早期に解消することが重要です。「この作業の意味がわからない」「誰に質問すればよいかわからない」といった些細な問題でも、放置すれば大きな不満に育ちます。
また、フォロー担当者を明確にしておくことも必要です。人事担当者、直属の上司、メンターなど、複数の視点から新入社員の様子を観察し、問題があれば速やかに対処します。
1週間以内に退職を考え始める人は少なくありません。この期間に丁寧なフォローをおこなうことで、「もう少し頑張ってみよう」と思ってもらえる可能性が高まります。初期段階での手厚いサポートは手間がかかるように見えますが、長期的には大きなリターンをもたらします。1週間のフォローアップ体制を構築することが、初日退職を防ぐ最後の砦となるでしょう。
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中途社員が1日で辞めることを防ぐには採用前後の誠実な対応が必要
中途採用で1日で辞める人が出る背景には、情報のミスマッチ、受け入れ体制の不備、職場環境への違和感など、さまざまな要因があります。これらの多くは、企業側の対応によって防ぐことができる問題です。
採用段階では、企業文化や価値観を正直に発信し、面接でリアルな情報を隠さず伝えることが重要です。現場メンバーを面接に同席させることで、より具体的なイメージを求職者に持ってもらえます。
入社後は、オンボーディングを丁寧におこない、メンター制度やフォロー面談で安心感を提供しましょう。採用担当と現場の情報共有を徹底し、入社後1週間のフォローアップ体制を構築することで、早期退職のリスクを大きく減らせます。
Cultiveでは、企業が目指しているビジョンや、そのために理想とする組織像、そして現在の組織環境を丁寧に紐解きながら、候補者にアプローチするメッセージを共に考えてまいります。入社後のオンボーディング施策や文化づくりにも伴走し、長期的に組織を強くしていくより良い企業文化の醸成をお手伝いいたします。
採用、組織づくりなどにお困りの方はぜひお気軽にご相談ください。



































