新製品開発と同時に確信した自分たちのフィロソフィー
ー アイエント様のサポートは半年ほど前(2025年4月現在)に理念と文化を一新したいというご依頼から始まりましたが、当時の課題感はどういったものでしたか?
中田さん:それまではトップダウンでやってきたんですね。うちは技術屋集団なので、その技術や知識の伝承というのが大きなテーマになります。私のこだわりや会社として大事にしたい想いなどを伝えていこうとすると、どうしてもトップダウンの図式になってしまっていました。
アイエントらしさ、アイエントの強み。そしてメンバー個々人の知識や技術。こういったものがもっと有機的に循環するようになって、メンバー一人ひとりが自分の言葉でお客様に語れるような世界をつくれたら、会社ももっと強くなるんじゃないかという考えを持ってました。
谷本:それで、新しい理念や文化をつくろうと思いついたんですね。
中田さん:ちょうどそのときに新しい製品を開発できたというのもきっかけのひとつですね。一般的に流通しているCAD CAMをより改良した形のものなのですが、お取引企業それぞれの専門性に合わせてカスタマイズできるものになります。圧倒的にリードタイム短縮やコスト削減になるだけでなく、マネジメントでの選択肢も増やせるような製品になります。
これを開発しているときにあらためて、我々は「まだこの世の中にないもの」をつくる会社なんだと実感しました。そこで得た気づきなどを注ぎ込んだ新しい理念と共に、今後の成長を目指していこうと思ったわけです。そのためには、どの側面から切り取ってみても同じことを語っているような、会社としての一貫性が重要だと感じました。
谷本:ブランドに一貫性を持たせるために理念は欠かせませんからね。理念策定のときにはCultiveのサーベイを使って全メンバーのヒアリングと企業文化の現状把握から始めましたが、いかがでしたか?
中田さん:正直不安はありましたね。メンバー全員の率直な会社への想いが可視化されるので、自分がこれまで伝えてきたつもりのことがちゃんと届いていたのかという結果を知るわけですし。単純に、みんなが会社についてどう感じているのかという不安もありました。自分の通信簿を出されるような感じですよね(笑)。
相応の覚悟を持ってお願いしましたが、やってよかったと思います。もちろんネガティブな点も出てきましたが、納得できるポイントだったし、思った以上に自分の想いは伝わっていたんだという嬉しい発見もありました。
谷本:メンバーのレイヤーごとに感じ方や捉え方が違うという大きな特徴が出ましたね。
中田さん:それも、以前から感じていた課題を可視化できたと思います。歴の長いハイレイヤーは技術や知識も、会社に対する解像度も当然高い。新しいメンバーは当然そこまでの知識も解像度もないわけですが、その橋渡し役となるミドルレイヤーがうちにはいないんですね。そのせいで両者の距離を縮められていないという課題がよく見えました。
理念策定はコアメンバーを組んで行ったんですが、納得いくまで話し合って決められたと思います。サーベイや途中のワークショップを通して全員の意見を回収して、メンバーで話し合えたことで、自分たちらしい言葉に落ち着いた気がしますね。
個人的には、コアメンバーの話し合いを通して、自分が伝えてきたことがきちんと伝播していると実感できたのも嬉しかったですね。途中からは信頼して任せられました。
文化づくりは一歩ずつ。着実に変化し始めた社内
ー 現在は谷本と一緒に文化醸成を進めていらっしゃいますね。
中田さん:文化醸成は3人のチームが中心となって進めてくれています。理念策定に関わったコアメンバーから若手が2人。それと、総務で採用された入社して間もない若い女性メンバーですね。積極的に活動してくれています。
谷本:すごくパワフルですよね。いつも笑顔でいて、他のメンバーを巻き込む力があると思います。理念策定中のワークショップのときはまだご遠慮されている印象もありましたが、今は、非常に能動的に会社に関わっていらっしゃる気がします。
中田さん:そうですね。若い人の感性を持ち込みたいと決めた人選でしたが、この女性に関しては他の技術職のメンバーとの距離を縮める意味でも効果的だったなと感じます。本人の中でも視野が変わったんじゃないかと思います。
谷本:文化をつくる上で欠かせないのが日頃のコミュニケーションなんですが、これを改善していくためには賞賛や受容の習慣を取り入れて、社内の心理的安全性を高めないといけません。そのために互いに感謝を伝える「サンクスタイム」や、バリューを体現した行動を紹介する「バリューチップス」を実施しているんですが、こういうのって最初は気恥ずかしさがあるんですよね。彼女が率先して年長のメンバーの背中を押しているおかげで、みんなのハードルが下がっていると感じます。
中田さん:文化チームの他2人は技術職なんですけど、他の業務がある中でも彼女とよく連携してくれています。いいチームだと思いますね。
他にも、若手がベテランに気兼ねなく質問できるように始めた「フリーディスカッション」があります。週に一度、なんでも話せる時間を設けているんですが、この雰囲気も変わってきましたね。当初はお互いに何を喋っていいかわからない様子だったのが、かなり和やかになりました。最近では、「業務に関することは仕事中に聞けるから、生活や人生について話し合おう」という意見も出てます。
これは、若手が気後れして業務に関する質問もできない、というサーベイ結果が出ていた当時から考えると本当に大きな変化です。
谷本:雰囲気が変わってきましたよね。この間も皆さんでお花見をして、レイヤー関係なく混ざり合うような素敵な場でした。理念を掲示できるようなグッズや、バリューを表したスタンプなども今後取り入れていけばもっと染み込んでいくと思います。お取引先企業に出向しているメンバーが理念を身近に感じられるようなグッズも考えていきましょう!
文化づくりを繰り返して、未来へと繋げていく
谷本:個人的には文化醸成を通して教育プロセスも強化していきたいと思っています。今回のリブランディングで見つかったアイエント様らしさや強み、ベテランメンバーの知識とかを体系的に伝えていけるような仕組みを設計していけたらと思います。
中田さん:文化づくりに取り組んでみてわかったのは、終わりがないことですね。一貫性を持たせるためには日々のミーティングや教育、業務の全てに理念を散りばめなくてはいけない。アイエントが求める基準を社内に周知するのも当然ですが、社会と照らし合わせて会社の基準が的確なのかも見返さなくてはいけません。その繰り返しが成果や利益に繋がっていくものだと思うと、これは果てしない作業です。でも、だからこそ今回定めたような理念が支えとなってくれていると思います。まさに、「こういうものが欲しかった」という理念になったと思います。
谷本:日々の業務の中でどこまで理念に則してこだわるか、となると現実的なハードルも出てきますよね。でも、それぞれの基準を何度もすり合わせることで会社のボーダーラインが新しくなっていく。新しく生まれたその基準を次の世代に伝播していくことが大切ですね。
中田さん:この果てしない作業は自分たちだけではなかなかやり切れないものがあると思います。そういう意味で、谷本さんに関わっていただいている意味は大きいと感じています。スペサンさんのメンバーはエネルギッシュな印象がありますが、今は伴走で入っていただいている谷本さんの姿がメンバーの良いモデルになっている気がします。うちは控えめな人が多いので、「これくらい感情を表に出してもいいんだ」というお手本になっていると思います(笑)。
谷本:そう言っていただけて安心しました(笑)。
中田さん:今年でアイエントは25周年を迎えます。メンバー一人ひとりがアイエントの想いを代弁し、それぞれのアイデアが社内で循環しながら新しい発明を生み出せるように成長していけたらと思います。
掲げた理念は理想が高いものですが、これが逆に自分たちにとっては良いハードルになっていますね。お客様に対して自分たちは何を全うすべきかを説いているわけですから、これを達成できるようになったときに会社は成長しているだろうなと。その日が来るまで文化づくりを継続することに意味があると強く感じています。
谷本:今後もいっそうお手伝いさせていただけたらと思います!
株式会社アイエント
代表取締役 中田 茂夫さん